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確定拠出年金プランにとって格安手数料は特効薬にあらず

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カレン・シェフラー 
アライアンス・バーンスタイン・エル・ピー
ERISA法担当シニア法律顧問
 

 

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2017年3月31日

 
 
 
年金プラン・スポンサーの間では、このところ手数料への関心が高まっている。手数料がスポンサーの受託者責任の一要素であることは確かだが、それがすべてではない。受託者責任として本質的なことは、手数料が適切であることを幅広い観点から担保することにあり、単に最も低ければ良いということではない。
 
確定拠出年金(以下、「DC」)プランのスポンサーにとって、手数料が議論の中心となっていることは疑いの余地がない。2012年に従業員退職所得保障法(ERISA)の手数料ディスクロージャー規制が定められて以降、手数料が大きな注目を集めるようになった。最近の401kを巡る訴訟や2017年4月に施行される予定の米労働省(DOL)の新たな受託者責任ルールを受け、プラン・スポンサーのみならず、多くの金融専門家が手数料に対する関心を一段と強めている。
 

手数料の細部より全体像を重視

DCプラン受託者の間では、手数料の最も低いファンドを提供することが受託者責任を全うすることになるという考え方が受け入れられがちである。しかし、プラン・スポンサーが取り組まなくてはならない数多くの受託者責任問題に対処する上で、手数料の低さは、それ自体では特効薬とはならない。もしプラン・スポンサーが手数料が最も低いという理由だけで投資対象を選んだとすれば、そのスポンサーは適切な受託責任プロセスを踏んでいないと言わざるを得ない。
 
手数料が適切な水準であることを担保するためには、専門家はより幅広い範囲におよぶ責任を負う。それは、すべてのプラン加入者にとって何が最善の投資ソリューションであるかを判断するプロセスの一部なのだ。
 

米労働省の受託者責任ロードマップ

DCプランにおける投資商品はすべての加入者や受益者にとって適切なものでなくてはならず、意思決定に際しては数多くの要因を考慮する必要がある。
 
ある特定の投資商品が適切であるかどうかを判断する上で、米労働省が定めた規則では受託者が考慮しなくてはならない要素として以下の項目を挙げている。
 
・プランのポートフォリオにおいてその投資商品が果たす役割
 
・プランの目的を追求する上でその投資商品が適切に設計されているかどうか
 
・投資商品のリスク要因およびリターン要因
 
・分散投資の観点から見たポートフォリオ構成
 
・予想されるキャッシュフローのニーズとの対比で見たポートフォリオ全体の流動性およびリターン
 
・拠出金目標との対比で見たポートフォリオ全体の期待リターン
 
・持ち分の引出しおよび他プランへの転出に関する加入者の権利の制限
 
これらに加え、プラン受託者がターゲット・デート・ファンドを重視している場合は、プラン加入者の年齢構成や、それぞれのターゲット・デート・ファンドに組み込まれている投資対象について検討を行った上で、当該ファンドが適切であるかどうかを判断しなくてはならない。
 
このように、投資商品を選ぶ際に考慮すべき要因は数多くあるため、単に手数料の低さだけに注目するのは片手落ちに見える。同様に、手数料だけを理由にインデックス型やパッシブ型ファンドに特化し、他の選択肢を除外することも近視眼的だ。
 
例えば、手数料控除後のリターンは投資の重要な基準であり、プランが投資商品メニューに何を載せるべきかということに関し全く異なる視点を提供し得る。また、退職時期が近づいた加入者にとっては、最も低コストの投資商品には隠れたリスクが含まれている可能性もある。
 

ゴールライン近くに落とし穴?

一例を挙げると、退職を間近に控えた加入者が過度の市場リスクを取ることはとりわけ危険だ。2008-2009年の世界金融危機の際に明らかになったように、退職者や退職間近の加入者は市場が急落すれば大きな痛手を被りやすい。退職が近付いていたり、すでに退職している場合、損失は取り戻すための十分な時間がなく、かなり重大な影響をもたらす恐れがある。
 
具体的な数字を出して考えてみよう。35歳の加入者が1,000万円の25%を失えば損失額は250万円になるが、損失を取り戻すために30年あるいはそれ以上の時間がある。しかし、60歳の加入者が8,000万円の25%を失った場合、損失額は2,000万円に達し、それを取り戻すための時間もほとんどない。
 
では、プラン・スポンサーは加入者が抱えるこうしたリスクを抑えるために何ができるのだろうか?
 
適切に分散されたポートフォリオを構築すれば、加入者は投資リスクがもたらす影響を限定することができる。その手段としては、例えば、加入者が退職年齢に近づくのに伴い市場のボラティリティによる影響が緩やかかつシステマチックに縮小するように、ターゲット・デート・ファンドのグライドパス(年齢に応じた資産配分のシフト)を利用することが考えられる。また、生涯にわたりインカム収入を受け取る選択肢も確実性を高めることができるため、加入者が退職年齢に達した後も市場リスクを限定する方法になり得る。
 
パッシブ型の投資戦略に過度に依存すれば、市場の急落時に大きな影響を被りやすいほか、例えば社債投資では債券時価総額が大きくなった銘柄、つまり借入の増えた企業へのエクスポージャーが拡大するといったような、さまざまな市場リスクが増加する可能性もある。パッシブ投資を用いれば手数料を引き下げることはできるが、加入者はインデックスの動きに縛られることになる。過去数年は市場全体が上昇する局面が長く続いたため、優れた個別銘柄のパフォーマンスに頼らなくても良かったかもしれないが、今後もそれが続くとは限らない。
 

手数料の低さがプランの成功を決めるわけではない

プランの加入者やスポンサーにとって、手数料は考慮すべき要因であることは間違いない。しかし、実際のところ、スポンサーはプランを成功に導く要因として他の問題をより重視していることがABのリサーチでも明らかになっている。
 
ABが2016年に1,000以上のDCプラン・スポンサーを対象に実施した調査においては、成功を測る基準として、プランへの加入状況の改善、退職後の生活に対する従業員の自信向上、ベンチマークを上回る投資収益、プランの手数料引き下げなど、6つの項目から上位2項目を選ぶよう回答者に求めた。その結果、プランの手数料引き下げは投票数が最も少なかった。
 
プラン・スポンサーは、手数料が過剰であれば加入者から提訴される可能性を理解している。だが、「過剰」と「適正」は同じではない。プラン・スポンサーは、加入者の退職資金問題にとって何が最も重要であると考えるかという観点から、自らの受託者責任を規定することが望ましいだろう。プラン・スポンサーを対象に実施したABの調査では、加入者の側でも手数料の高さは懸念事項として7つのうち5番目に過ぎなかった。
 

多面的なアプローチ

手数料のみに焦点を絞ることには、コスト問題に取り組む一方で、退職後資金の形成に関する他の問題を見過ごしかねないというリスクがある。手数料と同程度ないしそれ以上に大きな問題は数多くあるため、プラン・スポンサーは幅広い視野を保ち、受託者責任の遂行に向けて包括的なアプローチを保つことが重要である。繰り返しになるが、手数料は重要な問題ではあるものの、プラン・スポンサーが監視すべき数多くの問題の1つに過ぎない。
 
 
 
 
 
当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。オリジナルの英語版はこちら。

https://blog.abglobal.com/post/en/2017/01/for-dc-plans-lowest-fees-are-not-a-panacea

 

 

 

 

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当資料は、2017年1月25日現在の情報を基にアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーが作成したものをアライアンス・バーンスタイン株式会社が翻訳した資料であり、いかなる場合も当資料に記載されている情報は、投資助言としてみなされません。当資料は信用できると判断した情報をもとに作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。また当資料の記載内容、データ等は作成時点のものであり、今後予告なしに変更することがあります。アライアンス・バーンスタインおよびABはアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーとその傘下の関連会社を含みます。アライアンス・バーンスタイン株式会社は、ABの日本拠点です。
 
 
 

 

 

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