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一括投資と積立投資、どちらが適切なのか?

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後藤 順一郎 
アライアンス・バーンスタイン株式会社
AB未来総研 所長
 

 

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2017年8月10日

 
 
 
2018年1月から始まる「つみたてNISA」を見据えて、積立投資の重要性を主張するさまざまな情報や啓蒙活動が、個人投資家に提供され始めている。金融庁のレポートによれば、多くの日本人が、「まとまったお金がないと投資は始められない」と勘違いしているため、少額でも始められてコツコツと継続できる積立投資の認知度を高めることは、勤労世代が教育資金や老後資金等を効率的に準備する上で必要であることは論を俟たない。特に若い世代にとっては公的年金が実質的に減少していくことが明らかになっている今、こうした動きは、将来、国民が直面するかもしれない「老後破産」への対策として望ましく、アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)も大学等の教育機関向けや、銀行や証券会社のお客様向けに、積立投資の普及のための活動を積極的に展開している。
 
一方で、積立投資が万人にとってのソリューションにならないことも認識しておく必要があるだろう。特に今、私が懸念を抱いているのは、お金があるのに投資タイミングを分散させるために、“あえて積立投資”を実践することだ。金融機関の営業現場で積立の目標が明示的に設定されるようになってから、このような形で積立投資を勧めるケースも増えていると聞く。「一括で投資をしてしまうとその時の経済環境や地政学リスクに左右されてしまう」というのがその王道のトークで、聞いた瞬間は「なるほど、そうかもしれない」と思ってしまう人も多いだろう。だが、“あえて積立投資”は本当に正しいのだろうか?
 
私は、一括で投資をする気になっている人に対して、“あえて積立投資”を勧めることには消極的だ。理由は3つある。ここで120万円を10年間、株式に投資したい人が、最初の一年間毎月10万円ずつ投資を行い、一年間かけて120万円全額を投資する場合を考えてみよう。この人の最初の一月の状況は、10万円だけ株式市場に投資されているが、残りの110万円は預貯金に残っていることになる。ご存知のように、預貯金の金利がほぼゼロである今、投資しないことによる機会損失は相当程度大きいだろう。これが1つ目の理由だ。
 
2つ目の理由は、一括投資を希望している人は、投資した状態が自分にとってベストな状態だと(暗に)考えていると思われる。個人投資家で、企業年金のように長期で維持すべき資産配分(いわゆる、政策アセットミックス)を策定している人は多くないと思われるが、それでも自分が考えるベストな状態から乖離した状態がしばらくの間続くことは、決して望ましい状態とは言えないだろう。
 
 
 
 
”一括投資”と”あえて積立投資”の資産額分布.png

 
 
 
3つ目は、過去においては一括投資したほうが報われていた事実があるからだ。上のグラフを見て欲しい。これは過去30年間を対象期間とし、グローバル株式(MSCI ワールド指数)への投資開始月を1カ月ずつずらして、10年間運用した場合の分布だ。左が当初に120万円を一括投資した時の分布(“一括投資”)で、右が毎月10万円ずつ、1年かけて120万円を投資し、残りの9年間、運用し続けた場合(“あえて積立投資”)の分布だ。分析期間は1987年7月-2017年6月の30年間である。まず中央値は“一括投資”が240万円となっている一方、“あえて積立投資”は231万円と少し下回っている。結果の分布を見ても、最大値、上位25%、下位25%、最小値のすべてで“一括投資”が上回っていることが確認できる。勝率で見ても、62%の確率で“あえて積立投資”よりも“一括投資”したほうが最終的な資産額が大きくなっているのだ。
 
ちなみに、日本株式(TOPIX)を対象に同様の分析をしたところ、グローバル株式の結果と異なり、“あえて積立投資”の勝率が高くなった(“一括投資”の勝率は45%)。理由は、日本株式は約30年にわたって不振が続いているからだろう。過去の日本株式のように不振が続くと考えている資産に投資するのであれば、“あえて積立投資”を実践するのもありかもしれないが、そのような資産にはそもそも投資すべきではないと思われる。リスク対比で相応のリターンが見込めると考えているのであれば、“あえて積立投資”にしないほうが適切な投資行動と言える。
 
一括ですべて投資をしてしまうとその時の経済環境や地政学リスクに左右されてしまうというアドバイスは、非常に心地よく、一見すると合理的に聞こえるが、すでに資産を有しており、投資するつもりがあるのであれば、“あえて積立投資”とすることのデメリットのほうが大きい場合もあるのだ。積立投資は勤労世代が長期で資産形成する際には非常に有効なツールであるのは間違いないが、どのような目的の人にも有効なわけではない。顧客本位であるならば、誰にでも積立投資を勧めるのではなく、顧客のニーズを踏まえた上で、一括投資や積立投資の提案をしていくべきではないだろうか。 
 
 
 
 

 

当資料は、2017年8月2日現在の情報を基にアライアンス・バーンスタイン株式会社が作成した資料であり、いかなる場合も当資料に記載されている情報は、投資助言としてみなされません。当資料は信用できると判断した情報をもとに作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。また当資料の記載内容、データ等は作成時点のものであり、今後予告なしに変更することがあります。当資料中の個別の銘柄・企業については、あくまで説明のための例示であり、いかなる個別銘柄の売買等を推奨するものではありません。アライアンス・バーンスタインおよびABはアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーとその傘下の関連会社を含みます。アライアンス・バーンスタイン株式会社は、ABの日本拠点です。
 
 
 
 
 

 

 

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