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FANG騒動で明るみに出たリスク・モデルの死角

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デビッド・ダルガス(写真) 
アライアンス・バーンスタイン・エル・ピー
グローバル・コア株式運用戦略 最高投資責任者
 
 
 
クラウス・インゲマン    
アライアンス・バーンスタイン・エル・ピー
グローバル・コア株式運用戦略 ポートフォリオ・マネジャー
 
 
トーマス・クリステンセン    
アライアンス・バーンスタイン・エル・ピー
グローバル・コア株式運用戦略 シニア・クオンツ・アナリスト
 

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2017年11月2日

 

金融市場では常に新しい造語や流行語が作り出されている。その中には、大きな問題を反映したものもある。今年は、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム、ネットフリックス、グーグルの頭文字をつないだ「FANG」(通常の語彙では「牙」の意)という頭字語に焦点が当たったことで、こうした銘柄群(クラスター)によって生じる、標準的なリスク・モデルでは把握しきれない投資リスクに対する認識が高まった。
 
株式投資家は、多様なモデルを用いてさまざまなリスクから資産を守ろうとしている。標準的なモデルは概して、スタイル、セクター、国、通貨といった「ファクター」  を、パフォーマンスに影響する要因として重視している。そうしたリスク・モデルは、投資家にポートフォリオがどのようなリスクを負っているのかを明らかにし、資産配分が特定領域に偏らないように管理すべく設計されている。
 
実は、このようなリスク・モデルは特定の明確化されたリスクのみを認識している。しかし、実際の投資にはそれだけでは認識できないリスクが数多く存在する。特に、「クラスター・リスク」に対して、投資家はもっと注意を払うべきだろう。クラスター・リスクとは、事業内容が類似しているもののリスク管理上の区分が異なる複数の銘柄が連動してしまうリスクを指す。 
 

FANGの出現

その良い例は、巨大な時価総額を持つ米国テクノロジー銘柄だ。2年ほど前から、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム、ネットフリックス、グーグルの4社は、まとめて「FANG」と呼ばれるようになった。いずれも、優れたテクノロジーを背景にメディアや消費市場の変革に圧倒的な影響力を持つ企業だ。最近はこれにアップルが加わり「FAANG」と呼ばれることもある。
 
この企業群の時価総額は合計2兆6,000億米ドルで、S&P500指数全体の約11%を占める。2017年年初から8月末までにおけるS&P500指数の上昇の4分の1以上が、この銘柄群によるものだ。このため、ハイテク株にバブルが生じ始めているのではないかという議論も盛んにおこなわれている。
 
問題はここからだ。上記の5社はいずれもテクノロジーを収益の原動力とする企業だが、リスク・モデルにおける区分は5社全てがテクノロジー銘柄というわけではない。米MSCI社の世界産業分類基準(GICS)に準拠すれば、フェイスブック、グーグル、アップルは情報技術セクターに属するが、アマゾンとネットフリックスは一般消費財・サービス・セクターになる。
 

意図せざるリスクが問題  

こうした区分の違いは、単なる形式的な問題ではない。標準的なリスク・モデルは、ポートフォリオが情報技術や一般消費財といった特定のセクターに偏り過ぎていないかの確認はしてくれるが、FANG(またはFAANG)がクラスターとして持つリスクまでは捉えてくれない。同じクラスターに属する個々の銘柄のパフォーマンスに相関関係がある場合、それらの銘柄を過度に保有するポートフォリオは意図せざるリスクを取ってしまっている可能性がある。
 
実際に、FANG(およびFAANG)銘柄のリターンは相関度をますます強めている。グーグル・トレンドによるキーワード検索の動向を見ると、過去2年間で「FANG」という単語が世の中に広く普及し検索されたことが分かる(図表1 左図)。そしてその間のFANG各社の個別銘柄リターンはますます足並を揃えたものになっている(図表1 右図)。
 
 
 
 
 
 
リターンの相関度を強めるFANG銘柄.png
 
 
 
 
さらに、特定の取引日に注目すると、この相関度の強まりがなおよく分かる。例えば、2016年3月8日を見てみよう。全てのFAANG銘柄で、標準的なリスク・モデルが重視する各ファクターの寄与分がマイナスだったにもかかわらず、個別銘柄要因のリターンは全ての銘柄でプラスだった(図表2)。これは、FAANGというクラスターが、市場全体の動向から予想されるのとは反対の、独自の動きを示しているということだ。 
 
 
 
 
FAANG銘柄の相関度がファクター分析を無効に.png
 
 
 
 
これが投資家にとって重要なのはなぜか?それは、この相関関係を認識しないリスク・モデルに従っていると、運用者は5つのFAANG銘柄を全て購入してしまうかもしれないからだ。そして、そのようなポジションは、このクラスターの急落に対して非常に脆弱になってしまう可能性があるからだ。そのようなリスク・モデルは、アップルが下落したときに、他のFAANG銘柄も一緒に下落する可能性を考慮することなく、ネットフリックスやアマゾンの追加購入を推奨するかもしれない。 
 

さまざまなクラスター・リスク:金融からヘルスケアまで   

クラスター・リスクは他のセクターでも生じる可能性がある。金融セクターにおいては、アメリカン・エキスプレス、マスターカード、ビザなどの大手クレジットカード会社は、標準的なリスク・モデルでは、金融サービス、クレジットカード、情報技術、ソフトウェア・サービスなど、複数の業種グループに属している。このため、この3銘柄を大量に保有しているポートフォリオではリスクが正しく認識されない可能性がある。
 
また、米ドラッグストア・チェーンのCVSヘルスと米薬剤給付管理(PBM)大手のエクスプレス・スクリプツ・ホールディングスは、GICSの下ではそれぞれ生活必需品とヘルスケアに区分されているが、両社とも収益の大半を薬剤給付管理サービス業務から得ている。両社の株式を保有するポートフォリオには予期しないリスクが生まれる可能性がある。
 

正しい問題意識を   

これらの例は、精巧なリスク・モデルを用いても感知しきれない隠れたリスクが存在することを示したものだ。標準的なリスク・モデルの使用を止めるよう推奨するわけではないが、より強固なリスク管理を行うためには、正しい問題意識を持ち、計量分析のプロセスにファンダメンタルズ的な論理も導入していくことが不可欠だ。
 
それを適切に行うことができれば、特定のクラスターがポートフォリオに過大なリスクを負わせていないことを確認できるだろう。ポートフォリオに何らかのクラスターが存在することが判明したときには、運用者は適宜ポジションを調整すべきだ。そのようにして意図せざるリスクを排除することで、個別銘柄選択がポートフォリオの最大のリターン源泉であることを担保できる。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。オリジナルの英語版はこちら。

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当資料は、2017年9月13日現在の情報を基にアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーが作成したものをアライアンス・バーンスタイン株式会社が翻訳した資料であり、いかなる場合も当資料に記載されている情報は、投資助言としてみなされません。当資料は信用できると判断した情報をもとに作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。また当資料の記載内容、データ等は作成時点のものであり、今後予告なしに変更することがあります。当資料で使用している指数等に係る著作権等の知的財産権、その他一切の権利は、当該指数等の開発元または公表元に帰属します。当資料中の個別の銘柄・企業については、あくまで説明のための例示であり、いかなる個別銘柄の売買等を推奨するものではありません。アライアンス・バーンスタインおよびABはアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーとその傘下の関連会社を含みます。アライアンス・バーンスタイン株式会社は、ABの日本拠点です。
 
 
 
 

 

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