新興国株式は、数年間にわたる不振を乗り越え、2017年は力強い回復を遂げた。この局面で出遅れてしまった投資家も、まだ手遅れではない。2018年も新興国株式への投資を拡大すべき十分な理由があると考えられるからだ。

MSCI エマージング・マーケット指数(以下、MSCI EM指数)は米ドルベースで2017年は37.3%上昇し、先進国株式市場を大幅にアウトパフォームした。マクロ経済環境が多くの面で改善したことが新興国市場や企業業績に対する投資家心理を押し上げた。市場コンセンサス予想では、2017年の新興国企業の利益は13.2%増加したと見込まれている。こうした昨年の力強いパフォーマンスを踏まえても、さらなる株価上昇が期待できると考えるのには5つの理由がある。

割安な株価バリュエーション: 新興国株式は2017年に力強く上昇したが、それでも12カ月後の業績見通しに基づく株価予想収益率は12.5倍にとどまっており、先進国株式を27%下回っている。また、この水準は2016年末の11.9倍をわずかに上回っているに過ぎない(図表)。

新興国株式:割安な株価バリュエーションと大きな業績改善余地

キャッチアップは始まったばかり: 新興国企業は数年にわたり厳しい環境が続き、収益や利益率の低迷に直面してきたほか、株価バリュエーションも落ち込んでいた。そのため、先進国の同業他社に追いつく余地はまだかなり大きい。また、過去における新興国の株価サイクルは数年間持続してきた。2002年から2007年にかけて、MSCI EM指数は平均で年間28.6%のリターンを上げている。

リターン源泉: 2017年の新興国株式のパフォーマンスを押し上げた要因は主に企業業績の拡大で、株価バリュエーションの上昇(いわゆる「リレーティング」)ではない。これは、新興国株式には依然としてリターンを創出する余地が大きいことを物語っている

回復のすそ野の広がり: 2017年は中国株とテクノロジー銘柄が回復をけん引した。企業業績の拡大が続き、投資家の信頼感が高まるのに伴い、今後はさらに多くのセクターや地域に株価上昇の裾野が広がる可能性がある。

薄れる中国リスク: 中国ではポジティブな動きが見え始めている。例えば、価格交渉力の回復を示す生産者物価指数の上昇や、資源関連会社および製造業の利益率改善などが挙げられる。こうしたトレンドは銀行システムのリスク低下につながると思われる。さらに、中国の見通し改善は新興国株式全般に対する信頼感の上昇に寄与するため、投資家はより落ち着いて個別企業のファンダメンタルズを重視した運用を行うことができるようになるだろう

投資に際して考慮すべき点

新興国株式投資には多くの異なる方法がある。しかし、ABでは、どの方法であっても一番基本となるのは、マクロ経済動向などによるトップダウン型の見解ではなく、企業のファンダメンタルズに基づく投資判断だと考えている。このことは、国別やセクター別のポジションは、ボトムアップ型の銘柄選択に基づくべきだということでもある。

ベンチマークから距離を置くことも重要である。新興国のベンチマークは極めて非効率的であるため、投資家は市場内でも相対的に魅力の乏しい分野を過剰に保有することになりかねない。ポートフォリオをベンチマークから解放すれば、期待リターンが大幅に向上する可能性がある。

新興国市場の投資家にとって、ボラティリティは当然大きな懸念材料である。企業業績が拡大しバリュエーションが魅力的であっても、個別銘柄ごとのリスクや市場の安定性に対する脅威を無視することはできない。しかし、企業のファンダメンタルズを重視して慎重に銘柄選択を積み重ねることにより、投資家は新興国市場の回復の次なるステージにおける投資機会をうまく捉え、それぞれのリスク許容度に応じて最適なアプローチを選択することができるであろう。

 

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
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