アクティブ運用とパッシブ運用を巡る議論は長年続いている。どちらのアプローチにも利点があるが、これは見掛け以上に重要な問題をはらんでいる。パッシブ運用一辺倒になり、アクティブ運用を十分に活用していない投資家は、大きなリスクに直面する可能性がある。

パッシブ運用が多くの投資家のポートフォリオにとって重要な役割を果たしていることに異論を唱える人はいない。特に過去10年はそう言える。パッシブ戦略は低コストで市場にアクセスする方法を提供している。しかし、パッシブ運用の近年の爆発的な伸びは、かつてアクティブ運用がその絶頂時に直面したのと同様の構造的な歪みを引き起こしている(以前の記事『アクティブ運用はなぜ失敗したか…そして失敗しなかったか』ご参照)。

特に近年パッシブ運用の代表的な金融商品になっているのがETF(上場投資信託)である。ETFとは特定の指数に連動する金融商品で、投資信託と違い取引所に上場しているため、株式のようにリアルタイムで取引が可能だ。対応する指数も様々で、株式から債券、またバランス型の指数に連動する商品等がリリースされている。

ETFの価格、すなわち基準価額は、投資信託と同様に持っている資産の時価によって計算される。一方でETFはリアルタイムで、取引所で売買できるため、通常の投資信託とは違いリアルタイムに変動する市場価格で取引することが可能だ。ただし、実際の資産価値は基準価額と等しいため、多くの場合は基準価額に近い価格で取引されている。

一方で、個人ではアクセスしにくい市場(例えば一部の新興国市場やフロンティア市場)の指数に連動するETFの場合は、基準価額にプレミアムがついた高値の市場価格で取引される場合もある。また、取引額が小さいETFは、需給によって市場価格と基準価額にかい離が生まれてくる。この場合、ETFの市場価格は基準価額に比べて割高になるケースが多い。なお、一般的な非上場の投資信託の場合、売買は基準価額によって行われるため、このような価格が資産に比べて割高になる現象は起きない。

今日、約1,800本に上る上場投資信託(ETF)が、米国株全体の半分に満たない時価総額50億米ドル以上の主要銘柄に投資している。ETF市場の成長は鈍化する兆しを見せていないため、特定の銘柄や市場セグメントへの投資の集中に拍車がかかる見通しだ。このように、パッシブ運用に大量の資金が流入するのに伴い、市場の一部に歪みが生じ始めている。パッシブ戦略に組み入れられることの多い銘柄は株価が一段と不安定化し、お互いの相関性も高まっている。その動きはどちらも増幅されつつあるようだ。

投資家のリスクを増大させている要因は以下の4つに大別できる。

  1. 人気集中: 他の投資家に追随する投資家が多くなると、特定の銘柄やセクターへの集中が強まってしまう傾向がある。そして、次の3つの要因はこうした集中傾向を悪化させている。
  2. 脆弱性: 特定の市場セグメントや取引に特化している投資家は、特定の結果を期待しているケースが多い。期待が外れた場合は皆速やかにポジションを手仕舞おうとするので、大量の売り注文が殺到するリスクがある。
  3. 流動性: パニックに陥った群衆が出口に殺到すると、買い方が足りなくなり、流動性問題が生じる。流動性が干上がった時、出口のドアは見つかるだろうか。パッシブ投資家はドアを開けるためにどれだけの費用を支払うことになるのだろうか?
  4. 指数による束縛: ETFに投資しているパッシブ投資家は、望ましくない銘柄であっても指数に含まれていれば購入せざるを得ず、収益力などから見て割高な銘柄を保有することになる。また、ある銘柄から手を引きたいと思った場合、指数を構成する銘柄すべてを売却せざるを得ない。魅力の高い銘柄も含めて。

バブルが崩壊すると何が起きるか?

2018年2月の株式市場の調整は、あまりに多くの投資家があまりに多額の資金をパッシブ運用につぎ込んでいる中で資金の流れが逆転するとどうなるかを如実に示した。

シカゴ・オプション取引所(CBOE)のVIX指数(オプション価格から算出される、市場のボラティリティを測る代表的な指標)が最近、過去最低に近い水準まで低下した際、多くの投資家がVIX指数に対しショート・ポジションを取っていた。ボラティリティがしばらく低水準にとどまることに賭けていたのだ。しかし、株式市場が下落するとボラティリティが急騰し、VIX指数は1週間で4倍に跳ね上がった。その結果、VIX指数でショート・ポジションを取っていたパッシブ投資は大きな打撃を被ることになった。

取引が集中するのはVIX指数に対するショート・ポジションのような特殊な取引だけとは限らない。2015年には、医薬品の価格設定を巡る懸念をきっかけにヘルスケア銘柄が幅広く売り浴びせられた。その1年後には、原油およびガスの価格下落を受けてハイイールド債市場が急落した。エネルギー企業が発行した高利回り社債に群がっていた投資家はパニックに陥り、出口に殺到した、だが、逃げ出すのは至難の業で、コストも高くついた。

パッシブ運用は依然として拡大を続けている。パッシブ運用は指数の動きに連動するものであるため、指数ビジネスは活況を呈している。一部の推計では、今や指数の数は100万を超えている(図表)。その多くは株価指数で、これらの指数に連動するパッシブ・ファンドが多数設定されている。

株式指数の数が急増し、株式の銘柄数を上回るまでに.png

このパッシブ運用ブームは、まだ真の試練にさらされたことがない。これまではETFやパッシブ・ファンドからの大規模な資金流出が生じていないため、これほど多くのパッシブ運用によるエクスポージャーが重なり合うことでどれだけ危険が膨らんでいるのか、あるいはそうした資金流出によってパッシブ・ファンドに保有される株式がどのような影響を受けるのかは誰にもわからない。

わかっているのは、パッシブ運用に巨額の資金が流れ込んでおり、ありとあらゆる種類の指数やETFが存在することである。

投資家のポートフォリオにとって、アクティブ運用と同様にパッシブ運用にも大きな存在意義があることは間違いない。しかし、パッシブ運用のリスクが高まっている今、過度にパッシブ運用に傾倒し、十分なアクティブ運用を行わないことは、リスクの高い投資になりかねない。

 

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
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