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新興国市場: 投資家不安の再燃は妥当か

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ロラン・サルティエル(写真)
アライアンス・バーンスタイン・エル・ピー
エマージング・マーケット・グロース株式運用 最高投資責任者
 
 
セルゲイ・ダバルチェンコ(写真)                                                                            davalchenko_sergey_WA2.jpg
アライアンス・バーンスタイン・エル・ピー
エマージング・マーケット・グロース株式運用 ポートフォリオ・マネジャー
 
 
ナヴィーン・ジャヤスンダラム    
アライアンス・バーンスタイン・エル・ピー
エマージング・マーケット・グロース株式運用 リサーチ・アナリスト
 
 
 
 
 
 

2018年7月4日

 
 
足元の新興国株式市場では、国内・国際政治やマクロ経済に関するリスクへの懸念から過去2年間続いてきた上昇相場が勢いを失っている。だが、そうした懸念は行き過ぎている可能性がある。新興国市場の長期的なリスク特性は引き続き改善しているからだ。
 
このところ、メディアでは新興国市場のリスク拡大が大きなテーマになっている。確かに、トルコの通貨危機や米国の金利上昇観測、米ドルの上昇などは新興国市場に大きな影を投げかけている。米国と中国の通商摩擦も不安に拍車をかけている。MSCIエマージング・マーケット指数は、米ドルベースで2016年と2017年の2年間で52.6%上昇した後、2018年は6月13日までに1.2%下落した。モーニングスターのデータによると、5月は米国籍の新興国株式投資信託から27億米ドルの資金が流出し、それまで17カ月続いてきた流入超の流れが途絶えた。
 
だが、パニックに陥るのは早すぎる。長期的な視点で見れば、マクロ経済や市場のファンダメンタルズは、新興国企業が着実に収益を上げて投資家がリターンを得る上で好適な状態にある。
 

新興国市場のボラティリティは低下  

新興国のリスクに関するメディアの報道は不安をかきたてているが、実は新興国株式市場のボラティリティは低下している。以前は、新興国株式はリスクがより高いと投資家からみなされていたため、先進国株式よりも不安定だった。だが2018年は米国市場のボラティリティが跳ね上がっているにもかかわらず、新興国市場のボラティリティは比較的落ち着いている(図表1)。
 
 
新興国市場のボラティリティは足元では低め.png
 
 
なぜこうした変化が生じたのだろうか? ベンチマーク指数の構成を考えてみればいい。過去10年間で、MSCIエマージング・マーケット指数におけるエネルギーや素材などの景気敏感セクターのウェイトは著しく低下した(図表2)。一方、構造的な成長の恩恵を受ける銘柄の多いテクノロジー・セクターは最も大きなウェイトを占めるようになった。こうした変化は、新興国株式の景気循環に対する感応度やリスクを引き下げている。
 
 
新興国市場ではテクノロジー銘柄の比重が増え、資源関連が減少.png
 
 
にもかかわらず、MSCIエマージング・マーケット指数の株価収益率(PER)は11.6倍と、先進国株式と比べ25%低い水準にある。このことは、新興国株式が依然として投資家からよりリスクの高い資産とみなされていることを物語っている。
 

対外収支や債務は大きく改善  

そうした認識は、今や時代遅れになりつつある経験に根差している。以前は米国の金利上昇や米ドル高は新興国資産にとって悪材料だったが、現在の新興国市場は外的ショックに対する脆弱性が薄れていると言えるのだ。
 
インフレ率は多くの国で抑制されており、国内金利の低下をもたらしている。また、新興国通貨は競争力が高まり、対外収支も海外からの投資拡大や米ドル建て債務の減少を受けてはるかに健全になった(図表3)。その結果、新興国の経済や企業は、以前ほど米国の金利上昇や米ドル高の影響を受けにくくなっている(『Can Emerging Markets Defy a Stronger Dollar?』(英語。日本語版準備中)ご参照)。
 
 
 
新興国は外的ショックに対する脆弱性が低下.png
 
米国と中国の間で先鋭化している通商問題はどうだろうか? 米国が500億米ドル相当の中国製品に対して課そうとしている関税は、中国の国内総生産(GDP)を約0.1%押し下げるとABでは推定している。鉄鋼や資本財関連など、一部の輸出主導型企業は影響を被るかもしれないが、巨大な規模を持つ中国経済全体に与える影響は軽微なものにとどまりそうだ。
 

中国の銀行を巡る懸念も後退   

中国の銀行システムは長い間、火薬庫のようなものとみなされてきた。だが、ここでもリスクは低下しているようだ。中国の規制当局は過去2年にわたり、シャドーバンキングの伸びを抑制し、信用伸び率を名目GDP成長率と同程度に抑えてきた。こうしたレバレッジの抑制と共に、政府主導による鉄鋼などのオールド・エコノミー産業の過剰生産能力削減や環境対策の強化は、銀行債権の質の改善に寄与すると考えられる。
 
さらに、銀行が収益性の高いリテール・バンキングを重視する姿勢を強めれば、銀行の株主資本利益率(ROE)をさらに押し上げる効果も期待できる。これは、これまで長年にわたり経済を不安定化させかねないとみられてきた銀行セクターを強化する要因となる。
 

政治リスク: トルコだけに目を奪われてはいけない   

環境問題の重視は、安定した長期的成長を実現する政策の大きな柱として経済・社会の「サステナビリティ(持続可能性)」を追求する中国政府の決意を反映している。こうした変化をもたらした一因には、権力基盤を固めている習近平国家主席が世論を背景に共産党内の反対勢力を封じ込めようとしていることが挙げられる。これは、世界第2位の経済規模を持つ中国における政治リスクが低下していることを示している。
 
中国以外でも、インドやインドネシアなどの主要新興国で政治的リスクが低下している。4年前にインド首相に就任したナレンドラ・モディ氏は、反汚職キャンペーンから海外投資規制に至るまで複雑な改革に取り組み、投資家の信頼を高めた。インドネシアでも改革志向の政府が海外から投資を呼び寄せてインフラ開発を進める一方、市場の新たな問題に対処するため目先の政策を調整する柔軟性を維持している。
 
一方、トルコ、ブラジル、アルゼンチンにおける政治的混乱は投資家の信頼感を揺るがした。これらのケースは、新興国が一様ではないことを物語っている。中国市場が年初から5月末までに2.2%上昇したのに対し、トルコ市場は22%下落している。投資家はリスクに留意し、国内政治リスクの高まりによって悪影響を受ける恐れのある新興国企業を避けるため、選別的なスタンスを取る必要がある。
 

先進国とのリスク格差が縮小し、成長力は向上   

新興国市場にはもちろん現実的なリスクがある。しかし、企業が新興国経済のダイナミクスにさらされているという事実は、必ずしもリスクが高いことを意味するわけではない。新興国は均一ではなく、リスクに直接さらされていないビジネスを手掛けているさまざまな企業に魅力的な投資機会を見出すことができる。
 
さらに、新興国と先進国市場のリスク格差は以前に比べはるかに小さくなったが、新興国市場には依然として大きな成長余地がある。高い成長力とまだ評価されていない潜在的リターン源泉を持つ銘柄を見つけ出すには、企業のファンダメンタルズに焦点を当て、雑音の一部を排除しなくてはならない。
 

 

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。オリジナルの英語版はこちら。

https://blog.alliancebernstein.com/library/emerging-markets-diminishing-risks-vs-headline-fears

 

 

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