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著者
村上尚己Naoki Murakami
マーケット・ストラテジスト
外資系および国内系証券会社や日本経済研究センターなどシンクタンクにてエコノミストを歴任。経済予測分析や金融政策の分析に精通し、日経ヴェリタスやインスティテュショナル・インベスター誌のアナリスト・ランキングにおいて、エコノミスト部門にランキングされた経験を持つ。著書に「インフレ貧乏にならない資産防衛術」(東洋経済新報社)、「日本人はなぜ貧乏になったか?」(中経出版)、「円安大転換後の日本経済」(光文社)などがある。

Vol.34 トランプリスクとインフレ率停滞の行方

2017年08月18日

トランプリスクが3度市場を揺るがす

①米国株 vs 米国長期金利_201708.png

8月上旬までは米債券市場で金利の低位安定が続く中で、米株市場では株価は最高値を更新していたが、8月8日の午後から北朝鮮と米国との軍事的緊張関係が浮上し米株高は止まった。

 

米10年国債金利が2.2%割れまで低下し、ドル円も一時108円台まで下落した。4月の北朝鮮リスク浮上、5月のロシアゲート懸念、で米株市場が一時下落する局面があった。

 

これらも米国の政治情勢や政治判断がもたらす意味で、広義の「トランプリスク」とすれば、4月、5月に続き、8月にもトランプリスクで再び市場心理が揺れ動いたと位置づけることができる。

 

 

村上コメント

北朝鮮情勢を予想するのは極めて困難ですが、慎重に事態を見るべきでしょう。

トランプリスクをどうみるかが2017年の金融市場のパフォーマンスを左右するでしょうが、政権の大きな公約だった拡張的な財政政策が実現しないことが、最大のリスク要因になると考えています。

米国でインフレ率が高まらないのはなぜか?

②米コア消費者物価_201708.png

FRBによる、バランスシート縮小開始、利上げ継続の姿勢が揺るがない中で、米国ではCPIなどインフレ指標の下振れが続いている。

 

3月から5か月連続でコアCPIは前月比+0.1%以下の低い伸びとなり、前年比でみても2%超から+1.7%まで低下している。このインフレ率鈍化が、米国の金利上昇を抑制する大きな要因になっている。

 

CPIの鈍化には、通信サービス、帰属家賃など一部の品目の下振れが影響している。労働市場では、失業率低下が続いているため、FRBはインフレ指標の下振れは一過性の動きであるという認識を示している。

村上コメント

米国で失業率が順調に低下する中で、CPIの伸びが鈍化するパズルをどう解釈するべきか悩ましいところです。

米国を含めた世界経済全体で需給ギャップが存在しており、それが世界的なディスインフレ圧力となっていることが、米国のインフレ率の弱さに影響していると筆者は考えています。

新興国への資金流入が新興国通貨高を後押し

③新興国通貨の推移_201708.png

対米ドルでの新興国通貨の上昇が続いている。米金利低位安定によるドル安に加えて、多くの新興国の経済復調が続いていることが通貨高の背景。原油価格は3月高値のピークからやや下げているが、原油価格と新興国通貨との連動性が低下し、新興国通貨インデックスは年初から約7%上昇。

 

8月に入り北朝鮮の軍事リスクが浮上し、一部のアジア通貨が売られる場面があったが、中南米など他の地域の通貨上昇は続き、地政学リスクが新興国全般に波及するには至っていない。

 

投資信託を経由した新興国債券に対する資金フローも、7月上旬に小幅に資金流出に転じた時期が2週間あったが、7月後半からは、6月までと同規模の資金流入金額に回帰している。  

 

 

 

 

村上コメント

米国をはじめ世界的なインフレ抑制が続き、FRBの利上げ継続が難しいとの見方がドル安要因となり、ドル円の上値を抑えています。

一方、この環境であれば金融緩和政策を続けることができる多くの新興国の通貨高をもたらすため、日本の投資家からみて、新興国の債券・株式についてはドル円でみた円高が相殺される構図が続いています。

 

経済のお天気予報

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出所:アライアンス・バーンスタイン株式会社

 

         

 

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