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著者
村上尚己Naoki Murakami
マーケット・ストラテジスト
外資系および国内系証券会社や日本経済研究センターなどシンクタンクにてエコノミストを歴任。経済予測分析や金融政策の分析に精通し、日経ヴェリタスやインスティテュショナル・インベスター誌のアナリスト・ランキングにおいて、エコノミスト部門にランキングされた経験を持つ。著書に「インフレ貧乏にならない資産防衛術」(東洋経済新報社)、「日本人はなぜ貧乏になったか?」(中経出版)、「円安大転換後の日本経済」(光文社)などがある。

Vol.45 貿易戦争への不確実性が市場心理を圧迫

2018年07月11日

貿易戦争で経済の風向きは変わるのか?

①米国株 vs 米国長期金利_201807.png

6月半ばから、再び世界の株式市場が停滞している。米国政府が、中国からの輸入関税について2000億ドル規模で課すことをUSTRに指示したことなどをきっかけに、米中間の通商・経済摩擦への懸念が再び高まった。

 

関税引上げ以外にも、企業に対する投資制限を強化するなどの動きが、企業活動に対する悪影響を及ぼすとの懸念を高め、市場心理を悪化させている。

 

米国の通商・投資制限などの他国への態度は強硬でこれらの懸念が、市場場心理を冷やす状況が長期化。通商交渉への不確実性が高まっていることが、米国を含めた世界経済全体に悪影響をもたらす、との懸念も浮上している。 

 

村上コメント

米国政府の関税引上げ対象を広げる姿勢が続き、これに対する不確実性が市場心理を圧迫する状況は、目先続く可能性があります。
ただ、中間選挙を控えた政治的な交渉の側面があり、現実的な政策への軌道修正が行われる中で、2019年までの米国を中心に世界景気回復の長期化をABは引き続き予想しています。
目先は、欧州との自動車関税協議の行方が注目されます。

米国の減税効果vs関税引上げによる負担

②米消費者心理指数_201807.png

米国の中国などへの関税引上げ政策などで、世界経済の風向きが変わるとの懸念が高まっている。

 

米国の長期金利は3%付近で頭打ちとなり、緩やかに低下。世界の中では底堅い米国株式市場も、7月に入ってもほぼ年初の水準にとどまっている。

 

関税引上げが続くことが、これまでの世界経済の回復を失速させるとの懸念が、リスク資産の上値を抑え、米国国債への選好をやや強める一因になっている。関税や投資制限措置が、グローバルで事業を展開する企業活動を抑制するため、個々の企業のビジネスには影響が及ぶ。

 

一方で、関税引上げなどが経済全体に、どの程度ネガティブな影響をもたらすかについて見方は様々である。

村上コメント

仮に、中国からの2000億ドルの規模の輸入の関税引上げが実現するリスクシナリオが実現した場合、鉄鋼などを合わせて米国における関税規模は435億ドル。家計や企業負担になる。
他方、2018~19年で年間当たり800億ドル規模の家計への減税で可処分所得が上乗せ。家計部門では減税の下支えが大きく、米国の個人消費の拡大が、世界経済全体を支える構図は崩れないとみています。

動揺が長引く新興国市場

③新興国債券スプレッド vs 新興国通貨_201807.png

米FRBによる利上げ期待の高まりなどがきっかけとなり、春先から顕著になった新興国市場の動揺が長引いている。

 

5月まではアルゼンチン、トルコなど特に脆弱な一部の新興国への通貨売りが目立った。その後、ブラジルのストライキなどを経て中南米の他国などへ波及。2018年にファンダメンタルズや政治状況が比較的安定してきた南アフリカなども通貨安に見舞われた。

 

6月中旬には、米国による関税引上げへの姿勢で、貿易への依存度が高い新興国経済にブレーキをかけるとの懸念が高まり、アジア地域でもリスク資産下落、通貨安が進んだ。

 

外貨建てソブリン債券のスプレッドは、2016年末と同水準まで拡大している。 

 

村上コメント

新興国からの資金流出が予想外に続く中で、通貨安が続いています。
一方、新興国売りが長引いた2015年とは異なり資源価格は底堅く、また対外収支バランスの状況など新興国経済のファンダメンタルズを踏まえると、割安領域まで下落した資産が増えているとみられます。
米国の強硬な通商政策の姿勢が和らぐことが、新興国資産の投資機会になるとみています。

 

経済のお天気予報

Vol44-Global-Map.png

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出所:アライアンス・バーンスタイン株式会社

 

         

 

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