為替ヘッジとは

為替ヘッジとは、為替相場の変動によって外貨資産の価値が変わる「為替変動リスク」を回避することです。外貨建資産への投資には、「株や債券の価格変動リスク」だけでなく、「為替変動リスク」もあります。株や債券に投資はしたいが、為替変動リスクは取りたくないといった場合、これを回避するために、為替ヘッジを行います。

一般に株や債券は、日本株なら日本円、米国株なら米ドルによって評価されます。ですから、10,000円で購入した日本株が10,500円になった場合、手数料などを考えなければ500円の収益となります。しかし、米国株の場合、このようなシンプルな考えはできません。

例えば、1ドル=100円の為替レートの時点で購入した100ドルの米国株が105ドルに上がれば、ドルベースでは5ドル(500円)の利益が出ています。しかし、購入した時点から為替レートが変動し、1ドル=100円から1ドル=95円になった場合は、円ベースで見た米国株の価値は10,000円から9,975円(105ドル×95円)に下がったわけで、実質25円の損失となります。

株価は上がったにもかかわらず、為替が動いた(ドルが下落した)ためにトータルで損失が出る場合があるのです。このように、外貨建資産へ投資をする投資家は、常に「株や債券の価格変動リスク」だけでなく、「為替変動リスク」にもさらされているのです。純粋に「株や債券の価格変動リスク」のみに投資したい投資家が、「為替変動リスク」を回避するための手段が為替ヘッジなのです。

為替ヘッジの方法

一般的に為替ヘッジを行うには「為替予約」という取引が用いられます。為替予約とは、将来的に為替相場が変動する影響を受けたくない投資家が、あらかじめ将来時点における為替レートと取引金額を約束して行う取引きです。この約定レートは「先物為替レート」と呼ばれます。

為替予約や先物為替レートの決定方法などについて詳しく知りたい方は、「為替予約」もご覧ください。

具体的には、1ドル=100円で10,000円分、すなわち100ドル購入した米株の為替ヘッジを1年間したい場合、米国株を購入すると同時に「1年後に100ドルを売って9,756円(取引当日から1年後の先物為替レート:1ドル=97.56円)を受け取る」という為替予約を行います。

為替予約を使った為替ヘッジのしくみ

米国株の購入と同時に為替予約を行うことが、なぜリスクヘッジになるのか具体例で見ていきましょう

手元に10,000円を持っており、1ドル=100円の為替レート時点で、10,000円分=100ドルの米国株を購入し、同時に「1年後に100ドルを売って9,756円を受け取る」という為替予約をし、その後円高、円安になった場合をそれぞれ考えてみます。

<円高になった場合>

1年間で為替が1ドル=95円に、株の価値が100ドルから105ドル(+5%)になった場合、1年後の資産状況は5ドル(米国株上昇益)+9,756円(為替予約による円受取り額)となります。このとき、1ドル=95円ですから、円ベースでの資産は合計475円+9,756円=10,231円(+2.31%)です。

なお、為替ヘッジをしなかった場合は、105ドル×95円=9,975円(-0.25%)となるので、為替ヘッジによってドル安による損失を回避することができました。

<円安になった場合>

1年間で為替が1ドル=105円に、株の価値が100ドルから105ドル(+5%)になった場合、1年後の資産状況は5ドル+9,756円となることに変わりはありません。この場合の円ベース資産は1ドル=105円ですから、525円+9,756円=10,281円(+2.81%)です。

なお、為替ヘッジをしなかった場合は105ドル×105円=11,025円(+10.25%)となります。

このように、為替予約を使って為替ヘッジを行うことで、為替変動の影響を受けるのは、値上がり益にあたる5ドルのみに限定されます。結果的には、円高ドル安の際に損失を抑え利益を確保できる代わりに、円安ドル高の際の利益はドル高による益を放棄することになります。

また、このケースでは為替ヘッジを行うには、ヘッジコストがかかっています。しかし、このヘッジコストを支払えば、仮に1ドルが為替予約した97.56円より安くなった場合でも、損失を抑えることができるのです。

為替レートの動きを予想するのは、簡単ではありません。ヘッジコストにより利益が少なくなる場合がありますが、為替相場が大きく円高ドル安に振れた場合でも損失を限定することができるのです。これにより投資家は、為替リスクを回避しつつ、株や債券のリターンを享受することが可能となるわけです。

為替ヘッジの利用方法

個人投資家向けの外国債券や外国株式の投資信託には、「為替ヘッジありタイプ」と「為替ヘッジなしタイプ」の2種類が設定されている場合があります。投資家は為替ヘッジありタイプの商品を選択することで、為替リスクを回避することが出来ます。

ただし、前述したように為替ヘッジを行うにはコストがかかる場合があります。為替ヘッジありタイプを選んだ場合は、投資家の利益はその分低下しますので、その他の費用に加えて、ヘッジコストにも留意した上での投資判断が必要です。

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