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「若者はリスクを取れ!」は本当か?:これだけは押さえておきたい資産形成のポイント 第1回(全4回)

 

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後藤 順一郎

アライアンス・バーンスタイン株式会社
プロダクト・マネジメント部 ディレクター
DC推進室長 兼 アライアンス・バーンスタイン未来総研ディレクター



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2014年8月19日

1. はじめに  

投資信託が銀行窓口で扱われるようになってから早15年が経過したが、「貯蓄から投資へ」の流れが停滞する中、長期的な資産形成という意味で当初期待されたほどの成果は上がっていないのが現状である。その原因としては、回転売買による投資期間の短期化、トータル・リターンよりも分配金を重視する風潮などが考えられる。

しかしながら、長期投資そのものの重要性が低下したわけではなく、むしろ公的年金の存続性に対する不安や企業年金の確定拠出年金化などが話題になる昨今、老後の生活資金の確保といった観点からその必要性はますます高まっている。特に、これまで投資に関心の薄かった若者の資産形成に対する潜在的ニーズが認識されつつあり、フィナンシャル・プランナーのみならず金融機関も徐々にではあるがこの年代に対する取り組みを強めているようだ。アライアンス・バーンスタインにおいても、退職後に貧困状態に陥る事態(リタイアメント・プア)を社会問題として深刻に捉え、それを未然に防ぐため各方面と連携して様々な活動を行っている。

このような若者に対して長期投資を語る際に必ずと言っていいほど言及されるのが、①「時間分散効果」、②「ドルコスト平均法」、そして③「複利効果」の3つである。これらは、それぞれ若者の資産形成をサポートする考え方であり、私もその有用性は否定する訳ではない。ただ、昨今はその効用が多少過大に評価されているのではないかという意見があることも事実だ。

そこで本稿では、「時間分散効果」、「ドルコスト平均法」、「複利効果」をひとつずつ再検証し、金融機関の販売担当者の方がそのメリットと限界を正しく理解した上で、個人投資家、特に若年層に対して適切なアドバイスが可能となることを目的とする。第1回で「時間分散効果」、第2回で「ドルコスト平均法」、第3回で「複利効果」について論じ、そして最終回では、昨今注目を集め始めている投資の止め方/引き出し方について米国の事例を紹介し、日本への示唆を述べる。


2. 時間分散効果の盲点

長期投資ではリスクが下がるため、長期の投資期間がある若者はリスクの高い運用を行うべき、と言われることが多いが、果たしてこれは正しいのだろうか?

この考え方は一般的に「時間分散効果」と呼ばれているが、これは通常、長期にわたって投資すると「年率」リターンの標準偏差(リスク)が下がることを意味する。後で解説するが、ここで重要なのは「年率」という点である。図表1 は株式をイメージして、リターンの分布が平均5%、リスク20%(いずれも年率)の正規分布に従い、前期のリターンと今期のリターンは独立しているとした場合の投資期間と年率リターンの関係を示したものである。

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実線の年率リターンは不変であるが、点線で示した最良の場合のリターン(上位5%)と最悪の場合のリターン(下位5%)の差、つまりリターンのブレ幅は確かに投資期間が長くなるほど狭まっている。

これにより時間分散効果は一応確認されたものの、長期投資において「年率」リターンの安定が本当に重要なのかという点が問題である。やはり、投資家にとっては資産額が最終的にどうなるのか、つまり「累積」リターンが一番気になるのではないだろうか。そこで、図表2では投資期間と累積リターンの関係を示した。
 

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累積リターンは年率リターンとは異なり、むしろ時間に比例してブレ幅が拡大している。長期投資によって実はリスクが増加する(√N倍。ここでNは投資期間、以下同様)ため、最悪の場合の累積リターン(下位5%)は大きなマイナスになり、下振れリスクが浮き彫りになる。特にこの例では、運用開始から10年前後のマイナス幅が最も大きく、長期運用の一つの目安とされる10年で失敗した場合のダメージの大きさを物語っている。

下振れリスクの度合いを見るために、図表3に1年後のリターン分布と30年後のリターン分布を示した。点線で示した30年後のリターン分布の方が明らかに左側に長く伸びており、大きなマイナスが起こる確率が高いことを示している(これを「ファット・テール」と呼ぶ)。
 

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結局、投資家にとって一番重要と思われる累積リターンで見た場合、一般的に言われている長期投資のメリットは存在せず、むしろリターンが下振れする可能性が大きい。

もちろん、長期投資にはメリットもある。投資期間が長いほど、リスクの増加よりもリターンの増加の方が大きくなるため、図表4で示したように元本割れの確率は低下していく。これは、別の意味での時間分散効果と言える。
 

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このように長期投資による時間分散効果には様々な見方があり、年率リターンのブレ幅の減少だけで、その効果を訴求するのは誤解を招く恐れがある。累積リターンの分布や元本を下回る確率なども考慮して総合的にその効果を説明するのが正しい姿ではないだろうか。

ちなみに、現代投資理論ではリターンと分散(リスク(標準偏差)の2乗)で表現される効用関数を用いて最適資産配分を決定するが、投資期間の長期化に伴うリターンの増加(N倍)と分散の増加(N倍)が等しくなることから式全体の関係性は変わらず、算出される最適資産配分も変わらないという結果となる。つまり、投資期間が長いからといってリスクの高い資産配分が最適とはならないということは、現代投資理論からも明らかだということだ。
 

3. 自分自身を資産として考える

では、若者はリスクを取った運用をしない方が良いのだろうか? 結論から言うと、私はリスクを取るべきだと考えているが、それは時間分散効果とは全く別の根拠からである。その理由は、若者には自分自身の労働収入から生じる将来貯蓄の余力が豊富にあることにある。

専門的な言い方をすると、若者には長期にわたり労働収入から生じる貯蓄のキャッシュフローがある。自分自身をひとつの資産とみなせば、これはインカム・ゲインに相当し、定年退職までの期間の長期債券を保有していることに等しい。この擬似的な長期債券のことを「人的資本」と呼ぶが、日本では一般的に労働収入は安定していることから将来貯蓄も安定しており、人的資本は非常に低リスクの資産と位置づけられる。

図表5では、働き始めたばかりの若者が毎年50万円の積立を40年間続ける場合における初年度の人的資本と金融資産を示している。
 

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積立投資を開始した当初、この若者は金融資産こそ少ないが、人的資本という多額の擬似長期債券を有している。つまり、図表6に示したように、この若者は最初からかなり保守的なポートフォリオを有しているのである。したがって、人的資本を含めたトータルで考えると、少ない金融資産の中ではリスクを取れることになる。これは、たとえ金融資産で損失を出しても、この若者は将来の労働収入から来る貯蓄で十分にカバーできるので、リスクを取れる状況にあると言うことである。
 

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このように「若者はリスクを取れ!」という結論は同じだが、それは一般に言われる長期投資による時間分散効果ではなく、「人的資本」という概念に立脚するものである。

ちなみに、図表7はアライアンス・バーンスタインが日本人の一般的な給与モデルに基づき設計した年齢別の資産配分である。年齢の増加に伴って擬似的な長期債券である「人的資本」は次第に減少していくが、代わりに金融資産の中でのリアルな債券を増やし、全体のリスクを調整していることが確認できる。
 

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つまり、一般的な時間分散効果からの示唆と同様、「人的資本」の考え方においても、加齢に伴い徐々にリスクを低くすべきといった結論になる。したがって、若者へのアドバイスとしては、最初にリスクを取ることだけでなく、その後のリスク調整、つまり資産配分の保守化も大切であることを合わせて伝えることが望ましい。  

一方で、退職後30年以上生きることが珍しくない現代においては、過度の低リスク化は退職までに十分な資産が形成できない(貯蓄不足リスク)、生存中に資金が枯渇してしまう(長生きリスク)等の問題を引き起こす可能性がある。この問題を回避するには、勤労世代ではリスクの高い資産配分とすること、老後もしっかり運用することが必要である。(第2回に続く)

出所:『投資信託事情』 2011年3月号(イボットソン・アソシエイツ・ジャパン株式会社)
 

 

当資料は、2014年7月31日現在の情報を基にアライアンス・バーンスタイン株式会社が作成した資料であり、いかなる場合も当資料に記載されている情報は、投資助言としてみなされません。当資料は信用できると判断した情報をもとに作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。また当資料の記載内容、データ等は今後予告なしに変更することがあります。上記の個別の銘柄・企業については、あくまで説明のための例示であり、いかなる個別銘柄の売買等を推奨するものではありません。アライアンス・バーンスタインはアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーとその傘下の関連会社を含みます。
 

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