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リタイア後における投資の賢いやめ方:これだけは押さえておきたい資産形成のポイント 第4回(全4回)

 

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後藤 順一郎

アライアンス・バーンスタイン株式会社
プロダクト・マネジメント部 ディレクター
DC推進室長 兼 アライアンス・バーンスタイン未来総研ディレクター



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2014年9月10日


本連載ではこれまで3回にわたり、一般に長期投資のメリットと言われる「時間分散効果」「ドルコスト平均法」「複利効果」について、それぞれ様々な角度からその真偽を検証してきた。いずれも従来の説明では正確でなかったり、効用が強調され過ぎたりしている点はあるものの、人的資本や行動ファイナンスという新たな概念や視点に立脚すると、有効であることが確認された。

ただ、第1回~第3回はすべて資産形成、つまり積み立て局面を想定したもので、昨今注目を集め始めているリタイア後の「投資のやめ方」については触れていない。そこで最終回となる第4回では、リタイア後の資産の取り崩し方と、資産運用と保険を融合した老後への備え方について述べた後、その目的に適したターゲット・イヤー型ファンドの先進国である米国の最新事情を紹介する。


1.     リターンの出方が最終資産額を大きく左右

通常、資産運用においては平均的なリターンとリスクの関係に注意が払われるが、平均値が同じでもリターンの発生する順番(出方)によって、投資家にとって一番大事な最終資産額が大きく変わることはあまり意識されていない。また、この影響は積み立て局面と取り崩し局面では大きく異なる。

図表1は、10年間の投資期間を想定し、積み立て局面と取り崩し局面の両方について、年率平均リターンはどちらも5%で同じだが、最初と最後の年のリターンの出方が対照的な2つのシナリオの最終資産額への影響を示したものである。積み立て局面では当初0円から毎年50万円ずつ積み立て、取り崩し局面では逆に当初の500万円を毎年50万円ずつ取り崩すものとした。リターンの出方については、1年目が+20%と好調なものの、10年目が▲20%と最後に崩れるケース(先良後悪シナリオ)と、1年目が▲20%と出足でつまずくが、10年目が+20%と最後に挽回するケース(先悪後良シナリオ)を想定した。

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積み立て局面では「先悪後良シナリオ」の方が最終資産額は大きくなり、取り崩し局面では「先良後悪シナリオ」の方が好結果を残した。その理由はシンプルで、資産額が大きい時に高リターンを獲得すると、資産が大きく増えるからである。積み立てによる資産額は年齢に比例して増加し、定年前後がピークとなるため、勤労世代にとってはリタイア直前のリターンが、退職後世代にとってはリタイア直後のリターンが最も大切である。保守的な言い方をすれば、資産額が人生最大になるリタイア前後の損失をいかに抑えるかが最終資産額を大きく左右するのである。

リタイア前後に大きなマイナスを回避するには、取り崩し局面に入る前に資産配分を保守化する(株式などリスク資産の比率を減らし、国債など安全資産の比率を高める)のが賢明で、できればターゲット・イヤー型ファンドのようにリタイアに向けて徐々に保守化することが望ましい。また、大きな損失を回避するための保険として株式オプション等の活用も有効である。

それでもゴール目前かゴール直後の最悪のタイミングで大きな損失を被ることはあり得るが、積み立て局面終了後の取り崩し局面においても運用を継続することが大切である。図表2に示したように、ITバブル崩壊やリーマン・ショックなどにより株価が大幅に下落した後は、比較的短期間で失地を回復することが多いからだ。したがって、大きな損失を被ったまま資産運用をやめたり、資産配分を極度に保守化したりすると、今度は最悪のタイミングで利益獲得機会を放棄することになりかねない。結局、リタイア後も資産運用を続けることが大事であり、図表3に示したように(退職を65歳と想定)、資産配分を年齢とともに徐々に保守化しながら、資産を取り崩すのが最善の方法と言える。

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2.     定額引き出し vs. 定率引き出し

では次に、実際の取り崩し方法について考えてみよう。基本的には、長年こつこつ蓄えた資産から毎年、一定額を引き出すのか(定額引き出し)、それとも一定比率を引き出すのか(定率引き出し)の選択になるが、結論から言うと、それぞれに一長一短がある。定率引き出しの場合は、老後の生活資金が毎年変動するため、老後の生活費を調整することが困難なら、定額引き出し以外の選択肢はないのだが、ここでは調整が可能という前提で話を進める。図表4では、リタイア後も運用を続けると想定し、リターンの出方については前出のシミュレーションと同様のパターンに基づき、リタイア直後の資産額が3,000万円で毎年150万円を引き出す場合(ケース①)と毎年資産額の5%を引き出す場合(ケース②)の資産額の推移を示した。


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定額引き出しの場合、一定の生活資金を毎年確保できるが、資産額が増えている時は少ない比率、資産額が減っている時は大きな比率で引き出すことになり、引き出しの影響は運用額によって異なる。一方、定率引き出しの場合、運用額への影響は常に一定で、リターンの出方の影響を受けにくいため、財産の保全の観点からはより好ましい引き出し方と言える。一方、定額引き出しは、どのシナリオでもトータルで1,500万円を引き出すことになるが、定率引き出しでは、先良後悪シナリオでは1,800万円弱の引き出しができるのに対し、先悪後良シナリオでは1,200万円強しか引き出せないため、これだけのブレ幅を調整できない限り実施は難しい。つまり、財産の保全と消費支出を合わせた効用を考えると、定額引き出しと定率引き出しのどちらが有利とは一概には言えないのである。

3.     資産運用一辺倒からの脱却: 保険の活用

ここまでは資産運用のフレームワークの中で取り崩し局面の最適な運用や取り崩し方法について述べてきたが、ライフサイクルに関係する様々なリスクを適切に管理していくには、資産運用だけでは不十分で、やはり保険など他の選択肢についても考える必要がある。

資産運用と保険の役割を一言でいえば、資産運用は「蓄える」ことに適しており、保険は「備える」ことに適している。ただ、保険による備えは、万一そのイベントが発生した際には生活に多大な影響を及ぼすほど多額な金額が必要となる場合や、いつ起こるのか予測が困難なイベントに対応することであり、これこそが共助的要素を持つ保険が果たすべき役割である。自分で準備できる金額や発生時期が予測できるイベントには資産運用で「蓄える」ことにより対応する方が効果的である。このような観点から、資産運用と保険が果たすべき役割を世代別にまとめたのが、図表5である。


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退職後世代にとって平均余命までの生活費を賄うには、資産運用が依然重要であるが、想定以上に長生きする場合(長生きリスク)のヘッジとしては保険、より具体的には定額の終身年金(以降は終身年金)が非常に効果的である。したがって、リタイア後の投資のやめ方としては「資産運用→取り崩し」という従来の発想から脱却し、「資産運用→終身年金→給付」という新たな形を模索する必要があると考えている。

終身年金は保険であるがゆえに互助的要素を持っており、言葉は悪いが「早く死亡した人の給付が長生きした人の給付に回る」商品設計になっている。図表6では、予定利率を3%と仮定し、平成21年の簡易生命表(男性)に基づき、この長生きした人が追加的に得られるリターンを年齢別に示した。


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終身年金の予定利率と生存による追加リターンの合計より高いリターンを達成できるのであれば、資産運用をすべきであるが、それが難しいのであれば、終身年金を購入する方が得策である。生存による追加リターンは50歳から60歳までは1%弱とまだ低いが、70歳で約2%となり、その後は急上昇して80歳では6%を超える水準になる。例えば70歳の場合を考えると、現在の市場環境では、予定利率の3%に2%を加えた5%のリターンを資産運用で確保するのは難しく、一定の資産を長生きリスクのヘッジのため終身年金にシフトするつもりであれば、70歳くらいか、遅くとも70歳代半ばまでには完了しておくべきだろう。

ただ、終身年金もいい事尽くめではない。終身年金は長生きリスクのヘッジとしては有効だが、①購入時点の金利水準で給付が確定する、②インフレ・ヘッジ能力がない、③急な資金ニーズに対応できない(流動性がない)といった難点がある。このため、リタイア時にすべての資産を終身年金へシフトするのは賢明ではない。

①への対処としては、一時点の金利水準の影響を受けないように、分割して終身年金を購入するやり方がある。②③に対しては、資産をすべて終身年金とするのではなく、インフレ・リスクへの対応や流動性の維持などに適した資産も同時に保有することが望ましい。③の問題は残るが、①②に対しては変額年金も一つのソリューションである。


4.     ターゲット・イヤー型ファンドに関する米国の状況

最後に、このところ注目されているターゲット・イヤー型ファンドの先進国である米国の最新事情を紹介したい。米国では老後の生活資金を賄うものとして確定拠出年金の割合がかなり大きい。その中で、資産配分が自動的にその時の年齢に適したものに変化するターゲット・イヤー型ファンドが2006年の年金保護法の制定をきっかけとしてコアな商品としての位置付けを固めつつある。

米国のターゲット・イヤー型ファンドは、次第に低リスク化していくのみならず、リタイア時のタイミング・リスクの回避や、長生きリスクやインフレ・リスク等に対応できるようリタイア後もしっかり運用する「Through the Retirement」方式の商品が多い。日本のターゲット・イヤー型ファンドはリタイア時に償還もしくは短期金融資産などの保守的運用にシフトする「To the Retirement」方式が大半であり、大きな違いがある。しかしながら、このような米国のターゲット・イヤー型ファンドでさえ市場リスクを引き続き取るがゆえに、実績が安定しないという欠点があった。

そこで開発されたのが、ターゲット・イヤー型ファンドに終身の給付保証を付けた、さらに進化したものだ。これは変額年金のように一定の保証がつきながらも、流動性の確保や、保険会社を分散することによる信用リスクの分散を図るなどの工夫がされている。運用会社が分散されたマルチ・マネジャー型のものまで開発されている。

このように、米国では確定拠出年金に積み立てられた資産を単に自分で取り崩す「資産運用→取り崩し」という考えはもはや過去のものとなっており、終身年金を活用した「資産運用→終身年金→給付」の議論に移っている。そして、そのアイディアを組み込んだ商品も実用化されている。

日本はまだ米国のレベルに達していないが、終身年金や変額年金は金融機関の窓口を通じて購入できる身近なものになりつつある。今後、環境の整備がさらに進み、米国のように老後の資金設計として「資産運用→終身年金→給付」という考えが定着することを期待したい。(全4回終了)



出所:『投資信託事情』 2011年6月号(イボットソン・
アソシエイツ・ジャパン株式会社)






 

当資料は、2014年7月31日現在の情報を基にアライアンス・バーンスタイン株式会社が作成した資料であり、いかなる場合も当資料に記載されている情報は、投資助言としてみなされません。当資料は信用できると判断した情報をもとに作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。また当資料の記載内容、データ等は今後予告なしに変更することがあります。上記の個別の銘柄・企業については、あくまで説明のための例示であり、いかなる個別銘柄の売買等を推奨するものではありません。アライアンス・バーンスタインはアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーとその傘下の関連会社を含みます。
 

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