AllianceBernstein アライアンス・バーンスタイン株式会社

knowledge openspace 知の広場

knowledge openspace 知の広場

企業年金改革によりDC加入者の運用内容は 改善するのか? 第2回(全2回) 「損失回避」バイアスを乗り越えたデフォルト商品の必要性

 

jg__small.jpg

後藤 順一郎

アライアンス・バーンスタイン株式会社
プロダクト・マネジメント部 ディレクター
DC推進室長 兼 AB未来総研ディレクター



PDF版をご希望の方はこちら pdf

2015年1月19日

 

前回述べたように、投資教育の努力義務化、運用商品数の削減、そして分散投資を促すデフォルト商品によって、確定拠出年金(以下、DC)加入者の健全な資産形成を促すための改革へ向けた議論が現在進んでいる。

別の見方をすれば、公的年金が国民の老後生活を支える力が弱まる中で、引退時までに国民が自助努力で十分な老後資産を確保できる確率を高めようという「結果重視」の施策に国が舵を切ったと言えるだろう。

その中で大きな役割を期待されているのがライフサイクル投資、つまりターゲット・イヤー・ファンドだ。ターゲット・イヤー・ファンドは、米国では資産形成のコアとしての位置づけを確立しているため、DC関係者の中では以前から関心のある運用商品だったが、ここにきて国が前向きに取り組み始めたことから、日本でも注目を集めるようになってきている。

一方、ライフサイクル投資は若いときには高いリスクを取った運用となるため、日本人には合わないといった声も聞こえてくる。米国人は投資に積極的な人が多いからそれでも良いかもしれないが、日本人の多くは投資に消極的であり、米国発の考えをそのまま輸入しても日本人には馴染まないのではないか、との反論だ。

しかしながら、図表1を見ると明らかなように、米国人と日本人の投資に対するスタンスには大きな違いは見られない。日本人も米国人も大半が消極的投資家なのだ。フロンティア精神旺盛な米国人は日本人とは違うとイメージしがちだが、実態は、日本人も米国人も同じで投資に対しては消極的なのだ。
 

Chart1.jpg

 

また、投資の切り口からの反論として挙げられるのは、リスクを取って運用しても報われないのではないか、というターゲット・イヤー・ファンドというよりは、投資そのものに対する不信からくる心理的な抵抗だ。

図表2を見ると、運悪くバブルの絶頂の1989年12月末に日本株式に投資を始めた場合、直近の2014年10月末であってもまだ元本割れの状況であるため、日本株式に投資をしていたら報われなかったのは間違いない。
 

Chart2.jpg

ただ、ここで大事なのは日本株式が悪かっただけであり、グローバルでみれば株式は大きく上下しながらもしっかりと増えているという点だ。つまり、日本株式に多く投資をしていた運用方法が間違いなのであり、投資そのものが上手くいかなかったのではない。理論に則り、グローバル投資を実践していれば、この間であっても資産は4倍を超えるまで成長している。

ちなみに、投資教育の現場では、伝統4資産として日本株式と海外株式を分ける考え方が一般的となっている影響や、個人にとって身近な投資対象と思われていることもあって日本株式に多くの資産を配分しがちだが(ホームカントリー・バイアス)、分散されたデフォルト商品に投資をすればグローバル分散が実践できるので、これもデフォルト商品のメリットと言えるだろう。
 

最後は、投資教育によって自分で分散投資をしてもらうのが王道ではないか、との反論だ。確かにこれは正論だが、問題は現実には投資教育が十分には機能していないことなのだ。

DC加入者の平均資産配分の推移は、DCが導入されて10年以上が経過しているにもかかわらず、変わっていない。投資は進まず、依然として元本確保型商品が6割を占める状況となっている。結果として図表3にあるように、直近のDC加入者の利回りも0%~1%が大半となっている。前回、DCでは平均的には2%の利回りを獲得しないと退職一時金よりも減額となってしまうと話したが、まさに減額となってしまっている人が多い状況となっている。
 

Chart3.jpg


なぜDC加入者はしっかり投資をしないのだろうか? 恐らく、最大の理由は投資に興味がないということであろう。しかしながら、たとえ興味があり投資の基本原則を理解したとしても、多くの人は適切に行動できないのである。

これに関しては「行動ファイナンス」で様々な研究がなされている。代表的なものは、人間は長期的にはリスクを取らなければならないと理解していても、短期的に損失を回避したい心理が強くなり、なかなかリスクが取れないということだ(損失回避)。

元本確保型商品に偏重している現状はまさにこの人間の性質が表れた結果であると思われる。これは人間が元来持っているバイアスなため、投資教育をしてもなかなか変わらないのだ。といって放置しておくと、老後までに十分な資産が形成できなかったDC加入者が溢れることになる。

そこで、バイアスに陥りやすいDC加入者の意思決定に任せるのではなく、投資を促す仕組みを導入することで、このバイアスに対処し、しっかりと資産形成をしてもらうというのが欧米での一般的なソリューションとなっている。親が子供に正しい行動を促すのと同様、国が国民に正しい行動を促す措置ともいえるだろう。

ここで注意したいのは、強制ではなく、あくまで促しているだけ、という点だ。デフォルト商品で運用するのが嫌であれば、自ら意思決定をすればよく、引き続き選択の自由はDC加入者に残されている。

この行動ファイナンスからの示唆を十分に理解していないと、「日本人は投資に慣れていないため、リスクを低くしたバランス型商品がデフォルト商品として適切なのではないか」との思考に陥ってしまいがちだ。実は、この発想自体がすでに損失回避のバイアスに侵されている。あるべき投資をしてもらうためのツールがデフォルト商品であるから、デフォルト商品にバイアスが反映されてしまうとデフォルト商品としての意味が無くなってしまう。

したがって、デフォルト商品の選定においては、理論や合理性に基づいているかを見極めることが肝要となる。その際、大事な点は、デフォルト商品の目標は何なのか、その目標の達成確率はどうなのか、そしてダウンサイド・リスクはどの程度なのかを評価する必要があるだろう。

このようなデフォルト商品改革が実現するかはまだ不透明だが、DC実施企業は、それに向けて準備をしてもよい頃なのかもしれない。(全2回終了)




 

当資料は、2015年1月5日現在の情報を基にアライアンス・バーンスタイン株式会社が作成した資料であり、いかなる場合も当資料に記載されている情報は、投資助言としてみなされません。当資料は信用できると判断した情報をもとに作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。また当資料の記載内容、データ等は今後予告なしに変更することがあります。アライアンス・バーンスタインはアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーとその傘下の関連会社を含みます。
 

 

当資料についてのご意見、コメント、お問い合せ等はjpmarcom@alliancebernstein.comまでお寄せください。

運用サービス

  • 債券
  • 株式
  • マルチアセット
  • オルタナティブ
  • リスク抑制
  • リターン追求
  • 更なる分散

アライアンス・バーンスタイン株式会社

金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第303号 
【加入協会】一般社団法人投資信託協会/一般社団法人日本投資顧問業協会/日本証券業協会/一般社団法人第二種金融商品取引業協会
http://www.alliancebernstein.co.jp

 当資料についての重要情報

当資料は、投資判断のご参考となる情報提供を目的としており勧誘を目的としたものではありません。特定の投資信託の取得をご希望の場合には、販売会社において投資信託説明書(交付目論見書)をお渡ししますので、必ず詳細をご確認のうえ、投資に関する最終決定はご自身で判断なさるようお願いします。以下の内容は、投資信託をお申込みされる際に、投資家の皆様に、ご確認いただきたい事項としてお知らせするものです。

投資信託のリスクについて
アライアンス・バーンスタイン株式会社の設定・運用する投資信託は、株式・債券等の値動きのある金融商品等に投資します(外貨建資産には為替変動リスクもあります。)ので、基準価額は変動し、投資元本を割り込むことがあります。したがって、元金が保証されているものではありません。投資信託の運用による損益は、全て投資者の皆様に帰属します。投資信託は預貯金と異なります。リスクの要因については、各投資信託が投資する金融商品等により異なりますので、お申込みにあたっては、各投資信託の投資信託説明書(交付目論見書)、契約締結前交付書面等をご覧ください。


お客様にご負担いただく費用:投資信託のご購入時や運用期間中には以下の費用がかかります
● 申込時に直接ご負担いただく費用 …申込手数料 上限3.3%(税抜3.0%)です。
● 換金時に直接ご負担いただく費用…信託財産留保金 上限0.5%です。
● 保有期間に間接的にご負担いただく費用…信託報酬 上限2.068%(税抜1.880%)です。

その他費用:上記以外に保有期間に応じてご負担いただく費用があります。投資信託説明書(交付目論見書)、契約締結前交付書面等でご確認ください。

上記に記載しているリスクや費用項目につきましては、一般的な投資信託を想定しております。費用の料率につきましては、アライアンス・バーンスタイン株式会社が運用する全ての投資信託のうち、徴収するそれぞれの費用における最高の料率を記載しております。

ご注意

アライアンス・バーンスタイン株式会社の運用戦略や商品は、値動きのある金融商品等を投資対象として運用を行いますので、運用ポートフォリオの運用実績は、組入れられた金融商品等の値動きの変化による影響を受けます。また、金融商品取引業者等と取引を行うため、その業務または財産の状況の変化による影響も受けます。デリバティブ取引を行う場合は、これらの影響により保証金を超過する損失が発生する可能性があります。資産の価値の減少を含むリスクはお客様に帰属します。したがって、元金および利回りのいずれも保証されているものではありません。運用戦略や商品によって投資対象資産の種類や投資制限、取引市場、投資対象国等が異なることから、リスクの内容や性質が異なります。また、ご投資に伴う運用報酬や保有期間中に間接的にご負担いただく費用、その他費用等及びその合計額も異なりますので、その金額をあらかじめ表示することができません。上記の個別の銘柄・企業については、あくまで説明のための例示であり、いかなる個別銘柄の売買等を推奨するものではありません。

戻る