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『21世紀の資本』から考える資産運用ビジネス(エッセイ)

 

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山本 誠一郎
アライアンス・バーンスタイン株式会社
代表取締役社長







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2015年1月20日

年初にあたり、世界的なベストセラーになっているトマ・ピケティ著『21世紀の資本』から将来の資産運用ビジネスへの示唆について考えてみたい。

すでに様々な解説書で紹介されているとおり、同氏の主張を一言で言えば、ストックの資本収益率(r)がフローの経済成長率(g)を上回る世界では、格差が拡大するというものである。そして、格差は様々な社会問題を惹起し、その解決のためには累進的な資本税、ストックへの課税が望ましいという提案がなされている。

この結論や提案自体、何も目新しいことはないといわれている。しかし、この大著の画期的なところは、過去の経済学者がともすると概念的に捉えていた事象を膨大かつ客観的なデータに基づいて実証分析を試みたこと。そして何より経済学者にとっては歴史的すぎるテーマを、歴史学者にとっては経済学的すぎるテーマを、つまり各専門分野の谷間に位置付けられるテーマを「ホリスティック」に包括的に紐解いたところであろう。したがって、著作は単なる経済学の理論書としてではなく、政治、思想、哲学、歴史や文学までも網羅したリベラルアーツの本としても魅力的な本である。

この著作の面白いところは、読み手によって多面的かつ複層的な解釈が可能になるということであろう。経済学者はむろんのこと、それ以外の様々な分野の専門家の思考を刺激し、それが多様な議論を生み、ひいては新たな知の創造につながるという、まさにギリシャ時代にアリストテレスなど哲学者が集った『知の広場』(=トポス)を提供してくれている。

政治家など各界のリーダーであれば、格差問題はまさに社会を不安定にする政治問題の核心であり、その解決に目を向けるのではないだろうか。理想的な税制はどうあるべきか、どのような国際協調が必要なのかを議論し、さらに外交問題まで踏みこんで考えるのかもしれない。現に格差問題は2015年のダボス会議で議論すべき重要な社会問題の一つとして位置付けられている。

社会学者や教育に携わる方であれば、経済格差が引き起こす様々な社会問題、特に教育格差の問題に目を向けるのではないだろうか。そして人的資本を向上させる施策について議論するのかもしれない。

自然科学者であれば、ひょっとするとr>gの公式に思わず目を奪われ、これはアインシュタインの相対性理論の方程式E = mc2にも匹敵する画期的な発明になるのかもしれない。

思想家や哲学者であれば、ピーター・ドラッカーの『見えざる革命』になぞらえ、超富裕層だけが支配する見えない世界を想像し、今まさに着実に進行している現象について知の探求を行うのかもしれない。

はたまた文学者であれば、フランスの王政復古の時代に上流階級の座を確保しようともがく人々の姿を描いたバルザック著の『ゴリオ爺さん』の物語から、幸せとは何かについて考え、家族や結婚観について思いをめぐらせるのかもしれない。

さて、我々資産運用業界に携わる者の立場からすると、この著作はどのように読み解けるのであろうか。主題である経済的な格差がさまざまな社会的問題を引き起こすことへの懸念についてはむろん異論はない。産官民が一体となって、解決策を講じるべきであろう。一方で、ストックの収益率が200年単位の長期間にわたり4-5%で推移し、フローの成長率は実は1-2%程度しか伸びていない現実を受け止めた場合、いつの時代でも実はストックである資本の運用、つまり(広義の)資産運用が重要で、これからますます重要になってくるということであろう。このことも半ば当たり前のように思われるが、多くの人が目をつむってきた、あるいは頭では分かっていても実践してこなかった、できていなかった歴然たる事実を突きつけられたともいえるのではないだろうか。

具体的には、著者は婉曲的な表現で(特に個人の)資産運用の大切さを説いていることがうかがえる。著者の言葉をそのまま引用してみよう。

『21世紀の社会国家が行うべき最も重要な改革のひとつは、個人口座に基づく統合された年金制度を構築することだ。(中略)低成長環境においては、個人の貯蓄がもっと重要な補助的役割を果たすのは確実なのだから。(中略)「公的年金というのは相続財産を持たない人のための相続財産なのだ」という表現はよく聞かれる。これはそのとおりなのだが、だからといって収入の少ない人々に、自分で老後の貯蓄を奨励するのが愚かということにはならない。』*

この本が世界中で話題になっていること自体、まさに「資産運用の時代」が到来しているといってもよいのかもしれない。そして、世界中の運用会社はまさにこうした時代に先駆けて、(特に個人の)資産形成を応援するビジョナリーな取組を真摯に行うことが求められているのかもしれない。実務家としてどう考え行動すべきか。アライアンス・バーンスタインとしても業界の仲間達とともに切磋琢磨すべき課題としたい。

 

出典: 『21世紀の資本』 トマ・ピケティ著 みすず書房
* 第13章 「21世紀の社会国家」 より



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