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新興国経済の成熟化がもたらす 債券市場の構造変化

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村上 尚己

マーケット・ストラテジスト

 

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2015年2月3日

アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)のエコノミスト・チームが2015年初に改定した世界経済見通しでは、2015年の世界GDP成長率が前年比3.0%と、2014年(2.7%想定)からやや成長率は高まると予想している。2015年は米経済が+3.8%と極めて高い成長に加速し、同国の牽引で世界の成長率が高まり、昨年に続き2015年もリスク資産投資にとって好ましい経済環境が続くと見ている。

今回の改定において、2015年の世界GDPの成長率予想の数字は、前回策定した1カ月前からわずかしか変わっていない。ただ、地域別に2015年GDP予想の数字を見てみると、先進国の見通しは前回とほとんど変わらない成長加速を想定している一方で、新興国経済については前回の4.2%から3.8%に大きく下方修正した。2014年の新興国経済の成長率は4.2%と推定されるが、加速する先進国とは対照的に、新興国は2015年に更なる成長低下を予想している。

リーマンショック以降の景気回復が明確になった2010年からの3年間は先進国と新興国の成長率は同じ方向に動いてきた。ところが、2013年から両者のGDPの伸び率が異なる方向で動いている(図表)。2013年はアベノミクスによる日本復調、2014年は米国経済の力強い成長で先進地域の経済成長率は2年連続で上向く一方、同時期に新興国経済は2年連続で4%台の成長率に留まり、かつ2年連続で低下した。新興国地域は2010年から2012年まで、5%を超えるペースで成長していたのにである。


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1カ月前までは、エコノミスト・チームは米経済の2015年の高成長を前提として、新興国経済は2014年と同程度の4%台の成長率が続くと想定していた。しかし、ブラジル、ロシア、中国などの2015年の成長率見通しを下方修正したことで、最新予想では2015年の新興国の経済成長率は3.8%まで低下すると想定している。リーマンショックの余波で最も成長率が落ちた2009年の新興国の成長率は3.1%だったが、それ以来の水準の成長減速を想定しているわけだ。

2013年以降の先進国と新興国の成長率のかい離(デカップリング)を引き起こしているのが、新興各国の国内に起因する成長下振れ要因である。2013年以降の先進国経済復調の恩恵を新興国は受けているが、それを超えるマイナス要因を新興各国が抱えているので、成長率の減速を余儀なくされる。ABの予想が正しければ、この傾向が2015年により鮮明になる。

今回の新興各国の成長率予想を引き下げた一つの要因は、原油先物市場での価格急落が示すように資源価格停滞の長期化を前提に、エネルギー産出各国の経済成長率押し下げ圧力を精査し、それを予想に反映させたことだ。特に、エネルギーに依存する産業構造を持つロシアは、原油価格下落、更に中央銀行による利上げ、また経済制裁措置が長期化することを踏まえて、2015年にマイナス4%という深刻な景気後退になると予想している。

新興国の成長率が3年連続で低下となると、2000年代半ばからの新興国の高成長ブームが終焉し、その反動減が長期化している側面が無視できないだろう。原油価格下落が資源国の成長抑制になると同時に、昨年12月24日のコラム「歴史的な原油価格下落と 新興国債券投資の目利き」で述べたように、2014年末からの原油価格等の歴史的な下落は、新興国のブーム終焉を象徴している。

このブーム終焉は、新興国が先進国化するプロセスで起こる「成長フロンティアの拡大」が一巡したことが影響している可能性がある。多くの新興国の所得水準が先進国水準に接近したことで成長余地が小さくなり、長期的に新興各国の経済成長率が低下するフェーズに入りつつあるということだ。10年以上のスパンに基づく時間軸で新興国の成長率がすう勢的に低下するという、「新興国の成熟化」が進んでいるという視点が必要と筆者は考えている。

11月のコラム「新興国債券投資 ~高成長の終焉が長期的な投資リターンを底上げ~」では、新興国の高成長の終焉(成熟化)によって、名目GDPや長期金利水準が低下し始めたことが、新興国債券投資リターンを押し上げる点に注目した。新興国債券の利回り低下という点に注目すれば、新興国債券投資の一つの魅力は低くなる。

ただ、1980年半ば以降、日本を含めた先進国の国債金利が30年近く低下し続けた中で、債券投資リターンは押し上げられ、投資家の世界では債券投資の重要性が高まり続けた。成熟化しつつある新興国各国においても、過去30年に先進国が経験したことと同様に、債券リターンが押し上げられ、同時に債券市場の規模拡大、債券市場の成熟化そしてグローバル化が加速するのではないか。

債券投資家にとって、新興国債券は高い利回りを提供する代わりに、各国の政治情勢など不確実性が高いリスクを取る投資対象だった。ただ、新興国債券投資の規模拡大と成熟化が今後進む中で、債券投資家にとって位置付けが大きく変わる可能性がある。こうした市場の構造変化を先取りして、新興国各国が抱えるリスク・リターンを見定める目利きの重要性は今後一段と高まるだろう。





当資料は、2015年1月27日現在の情報を基にアライアンス・バーンスタイン株式会社が作成した資料であり、いかなる場合も当資料に記載されている情報は、投資助言としてみなされません。当資料は信用できると判断した情報をもとに作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。また当資料の記載内容、データ等は今後予告なしに変更することがあります。アライアンス・バーンスタインおよびABはアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーとその傘下の関連会社を含みます。アライアンス・バーンスタイン株式会社は、ABの日本拠点です。



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