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甘くなりがちな格付:格付がいかに市場に混乱をもたらしているか

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ジェフ・スコグランド
アライアンス・バーンスタイン・エル・ピー
グローバル・クレジット・リサーチ・ディレクター 

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2015年5月19日

格付機関は資本市場を支える重要な役割を果たしている。企業や政府の債務に対して彼らが付与した格付は、信用リスクを測る標準的な基準として投資家の間で幅広く用いられている。だが、彼らの格付は完全なものではない。また、投資家が自らの分析の代用物として用いるべきでもない。

甘すぎる格付は悪影響をもたらす可能性がある。格付機関が付与する格付は、企業や他の債務発行体がどれほど容易に資金調達できるか、あるいはどれほど高コストの資金調達を強いられるかを決定づける要因となる。しかし、ひねくれた見方をすれば、格付機関が債務問題を引き起こす一因を作っているケースも多い。格付機関が妥当な水準よりも高い格付を付与すれば、企業や業界全体が必要以上の債務発行を行う誘因となるためだ。

そうした例には事欠かない。2008年の世界金融危機以前、格付機関は不動産担保証券やローン担保証券に高い格付を与え、投資家は数千億米ドルに上る損失を被った。最近では、欧州連合(EU)全体としての信用力の高さを理由に、脆弱な欧州諸国の政府債が実力以上の格付を付与された。その結果、ギリシャなどが持続可能な水準以上の債務を発行することが可能になった。米国では、エネルギー会社がシェールガス採掘を目的とした水圧破砕と呼ばれる非伝統的な方法による採掘に必要な資金を調達するため、過去6年間に多額の債券を発行してきた。アライアンス・バーンスタインでは以前からこうした動きについて指摘してきた(「Lesson of the Oil Collapse? Do Your Own Credit Homework」(英語)参照)。

現在、債券発行が急増しているのは消費者向け製品セクターである。同セクターの企業は総じて業績が安定しているため、高めの格付を付与されている。しかしながら、こうした企業の経営陣は自力での成長余地の乏しさや株主からの圧力を受け、自社株買い(債券保有者にとって好ましくない)や買収(債券保有者にとっては自社株買い以上に好ましくないケースが多い)の資金を賄うために社債を発行してきた。

格付会社はなぜ高すぎる格付を与えるのか? ビジネスが好調に推移している場面では、利益やキャッシュフローの見通しに対して楽観的になりやすい。クレジット・アナリストが陥りやすい最も危険な過ちは、現在のトレンドが将来も続くと考えてしまうことだ。企業の将来を予測する上で望ましいアプローチは、固定的な価値ではなく、起こり得る様々な結果を想定することだ。しかし、格付機関のアナリストは定型的な手法にとらわれていることが多く、よりダイナミックな信用リスク分析手法を取り入れることができずにいる。

そして、投資銀行は格付機関に対して格付を限界まで高めるよう働きかける。彼らは格付機関との会合を重ね、ディールの構造に手を加える。彼らの目的は市場と駆け引きを行い、できる限り低コストで債券を発行するために望ましい格付を獲得することにある。しかも、そこには利益相反が起きる。発行体は格付機関に手数料を支払っており、それが実力以上の格付となる一因となっている疑いがある。

楽観的な想定が外れた場合、債券投資家は大きな損失を被ることになる。格付には暗黙のうちに、経済成長率、価格、需要、天候、政治などの様々な前提条件が反映されている。企業が過度に多額の債務を発行し、それらの前提条件が一つでも満たされない場合、市場ではストレスが高まり、格下げやデフォルトにつながりかねない。そうすれば投資家が損失を被ることになる。

不動産担保証券の格付に関する誤った前提とは何であったか? 米国の住宅価格は全般的に下落しておらず、今後も決して大幅に下落することはなく、歴史的な低水準にあるローン担保証券のデフォルト率は変化しないと想定していたことだ。欧州の債券に関して言えば、債権者が損失を強いられる前に、問題を抱えるユーロ圏諸国をEUが救済すると多くのアナリストが想定していた。エネルギー会社の債券については、アナリストは原油価格が過去5年間にわたり比較的狭いレンジで推移してきたことを、価格が下落しない保証として誤った解釈をしてきた。

現在、長年にわたって強力なブランド力を構築してきた消費者向け製品は、価格に対する下落圧力を跳ね返すことができると想定されている。だが、そのトレンドは変化しつつある。

今日の消費者はますます価格に敏感になり、デジタル技術を駆使している。その結果、生活必需品メーカーは変化の波に左右されやすくなっている。それに加え、歴史の浅い競合会社にとって市場参入の障壁が低くなっている(例えば、食品メーカーはシンプルな原料だけで商品を生産することができる)上、ソーシャル・メディアを通じたマーケティングを行えば驚くほど短時間で独自のブランドを確立することも可能になった。消費者向け製品メーカーはこうした問題に直面していることを受けて、買収に目を向けつつある(先日ハインツがクラフトを460億米ドルで買収すると発表したことはその好例)。

最善の防御策(と攻撃策)は自分で信用リスクを判断することだ。多くの投資家が7年前に比べて格付を信用しなくなっているのは好ましいニュースである。すべての投資家は独自のファンダメンタルズ評価に基づく格付分析手法を学ぶべきであり、いかなる投資の意思決定においても、格付機関の格付は数多く存在する判断材料の一つに過ぎない。

甘すぎる格付は、とりわけアクティブ運用者にとって投資機会をもたらし得る。市場が格付機関に依存し過ぎれば、資本市場が混乱に陥る環境を生み出し、逆張り投資家にとってはリスクに比べ非常に魅力的な利回りが得られる債券を購入することが可能になる。


 

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。オリジナルの英語版はこちら。
https://blog.abglobal.com/post/en/2015/04/thats-so-overrated-how-credit-ratings-do-damage
 

本文中の見解はリサーチ、投資助言、売買推奨ではなく、必ずしもアライアンス・バーンスタイン・ポートフォリオ運用チームの見解とは限りません。本文中で言及した資産クラスの過去のパフォーマンスは将来の運用成果等を示唆・保証するものではありません。当資料は、2015年3月31日現在の情報を基にアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーが作成したものをアライアンス・バーンスタイン株式会社が翻訳した資料であり、いかなる場合も当資料に記載されている情報は、投資助言としてみなされません。当資料は信用できると判断した情報をもとに作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。また当資料の記載内容、データ等は作成時点のものであり、今後予告なしに変更することがあります。 上記の個別の銘柄・企業については、あくまで説明のための例示であり、いかなる個別銘柄の売買等を推奨するものではありません。

 

 

当資料についてのご意見、コメント、お問い合せ等はjpmarcom@abglobal.comまでお寄せください。

 

 

 

 

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