2015年10月26日
意外かもしれないが、債券市場の流動性の枯渇は今に始まったことではない。銀行の自己資本に関する厳格な規制により、何年も前から市場の流動性は低下し始めている。また、一部の債券への投資の集中やリスク管理を重視する戦略の増加が投資家に短期的なボラティリティの上昇をもたらすなど、複数の要因によって流動性の低下がさらに悪化する可能性がある。
最近では、市場の流動性の低下について投資家の注目度が高まってきている。しかし、市場ではこの問題はだいぶ前から話題になっていた。ABはその時点で、投資家が流動性の枯渇をうまく乗り切り、さらにはそこから利益を得られるよう、投資プロセスをアップグレードした。
以下に、ABが顧客のポートフォリオを強化するために実践している5つのポイントを示す。
1. とにもかくにも分散
流動性が乏しい環境では、例えばハイイールド債券や新興国債券など1つのセクターだけに資産を集中させることは危険だ。仮にそのセクターの流動性が干上がった場合、市場がストレスを抱えている間は取引が行えない可能性が高い。
このためABは、全体像を見渡しながら機動的なマルチセクター戦略を用いることで、幅広い種類の債券を利用する。これにより、例えばハイイールド市場で売却が急増した場合、投資家は流動性がより高い投資適格級の社債やその他のセクターの債券に素早く、そして容易に乗り換えることができる。
2. 人気が集中している債券を避ける
世界中で金利が低い状態にあり、投資家は利回りを求めて同時に同じ債券に駆け込むことを余儀なくされている。このように一部の債券に投資が集中すると、その資産価格が押し上げられる。そして大抵の場合、取ったリスクに対して見合わない水準まで価格は上昇してしまう。
そのため、取引が集中している債券を避け、人気ではなく価値に基づいて投資の決定を行うべきであるとABでは考える。人気にとらわれずに投資を行うことができれば、非常に大きな強みを持つことになる。そのような投資家は、他の投資家が売却しようとする時に、魅力度の高い資産をより低価格で購入することができるだろう。
3. キャッシュとデリバティブを手元に十分確保する
他の投資家が必死になって売却しようとしている時にスムーズに購入するためには、キャッシュが必要となる。例えば、テーパリング(資産購入の段階的縮小)騒動が起こった際、他の投資家が続々と売却していた時に魅力的な債券を購入した投資家は、必要な時に流動性を提供できたことで高い利回りを得た。そのためにはまず、購入する準備ができている必要があった。
確かに過去7年間のキャッシュの利回りは限りなくゼロに近く、手元にキャッシュを大量に残してしまうと高いリターンを得られないことになる。しかし、流動性が低い環境を活用したい投資家にとっては、キャッシュを保有することは非常に重要である。
パフォーマンスの低下を和らげるために、ABでは流動性の高いデリバティブを比較的多く取り入れることで、「合成」証券へのエクスポージャーを構築する。
4. 徹底的に分析して投資ホライズンを長期化
ABでは、すべての投資候補銘柄について徹底したクレジット・リサーチを行い、満期まで保有することを視野に入れて債券の新しい投資機会を分析する。その理由は、流動性が常に潤沢であると想定することは危険だと考えるからだ。ある特定の証券について、償還までの持ち切りを考慮した際に魅力的でないと判断した場合は、そもそも購入しないだろう。
しかしクレジット・リサーチを綿密に行えば、市場の混乱にも耐え得る、長期的に安定したポートフォリオを保有できることになる。また、長期的な投資ホライズンに基づいた債券投資は流動性を自ら創出する。債券の発行体が破産しない限り、投資家には日々の市場の変動にかかわらず安定した利息が支払われると同時に、満期時には元本が払い戻される。
流動性の確保とは、究極的には、投資したお金を取り戻すことであろう。
5. プライベート・クレジットへの戦略的な資産配分
長期的な投資ホライズンに基づけば、プライベート・クレジット市場で厳選した銘柄に投資することもできる。これには、中堅企業への直接融資や民間の商業用不動産ローンへの投資が含まれる(以前の記事『流動性幻想の消失:年金基金におけるプライベート・クレジット投資』ご参照)。これらの投資は伝統的な債券資産よりも流動性が低いため、非常に高い利回りを提供する。
しかし、債券市場では流動性が一瞬で蒸発することが起こり得る。また、ポートフォリオにおける債券の第一の役割はインカムを創出することであることを忘れてはならない。投資ホライズンが長いポートフォリオではどの程度の流動性が実際に必要なのか見極める必要があるだろう。
すべての債券投資で言えることは、長期的な視点を持ち、価値に注目すべきということだ。そのことを心に留めている投資家は、流動性リスクを恐れる必要はなく、単に管理すればいいのだ。
当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。オリジナルの英語版はこちら。
https://blog.abglobal.com/post/en/2015/09/what-were-doing-to-manage-liquidity-risk
当資料についてのご意見、コメント、お問い合わせ等はjpmarcom@abglobal.comまでお寄せください。
当資料についてのご意見、コメント、お問い合せ等はjpmarcom@alliancebernstein.comまでお寄せください。
アライアンス・バーンスタイン株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第303号
【加入協会】一般社団法人投資信託協会/一般社団法人日本投資顧問業協会/日本証券業協会/一般社団法人第二種金融商品取引業協会
https://www.alliancebernstein.co.jp/
当資料についての重要情報
当資料は、投資判断のご参考となる情報提供を目的としており勧誘を目的としたものではありません。特定の投資信託の取得をご希望の場合には、販売会社において投資信託説明書(交付目論見書)をお渡ししますので、必ず詳細をご確認のうえ、投資に関する最終決定はご自身で判断なさるようお願いします。以下の内容は、投資信託をお申込みされる際に、投資家の皆様に、ご確認いただきたい事項としてお知らせするものです。
投資信託のリスクについて
アライアンス・バーンスタイン株式会社の設定・運用する投資信託は、株式・債券等の値動きのある金融商品等に投資します(外貨建資産には為替変動リスクもあります。)ので、基準価額は変動し、投資元本を割り込むことがあります。したがって、元金が保証されているものではありません。投資信託の運用による損益は、全て投資者の皆様に帰属します。投資信託は預貯金と異なります。リスクの要因については、各投資信託が投資する金融商品等により異なりますので、お申込みにあたっては、各投資信託の投資信託説明書(交付目論見書)、契約締結前交付書面等をご覧ください。
お客様にご負担いただく費用:投資信託のご購入時や運用期間中には以下の費用がかかります
● 申込時に直接ご負担いただく費用 …申込手数料 上限3.3%(税抜3.0%)です。
● 換金時に直接ご負担いただく費用…信託財産留保金 上限0.5%です。
● 保有期間に間接的にご負担いただく費用…信託報酬 上限2.068%(税抜1.880%)です。
その他費用:上記以外に保有期間に応じてご負担いただく費用があります。投資信託説明書(交付目論見書)、契約締結前交付書面等でご確認ください。
上記に記載しているリスクや費用項目につきましては、一般的な投資信託を想定しております。費用の料率につきましては、アライアンス・バーンスタイン株式会社が運用する全ての投資信託のうち、徴収するそれぞれの費用における最高の料率を記載しております。
ご注意
アライアンス・バーンスタイン株式会社の運用戦略や商品は、値動きのある金融商品等を投資対象として運用を行いますので、運用ポートフォリオの運用実績は、組入れられた金融商品等の値動きの変化による影響を受けます。また、金融商品取引業者等と取引を行うため、その業務または財産の状況の変化による影響も受けます。デリバティブ取引を行う場合は、これらの影響により保証金を超過する損失が発生する可能性があります。資産の価値の減少を含むリスクはお客様に帰属します。したがって、元金および利回りのいずれも保証されているものではありません。運用戦略や商品によって投資対象資産の種類や投資制限、取引市場、投資対象国等が異なることから、リスクの内容や性質が異なります。また、ご投資に伴う運用報酬や保有期間中に間接的にご負担いただく費用、その他費用等及びその合計額も異なりますので、その金額をあらかじめ表示することができません。上記の個別の銘柄・企業については、あくまで説明のための例示であり、いかなる個別銘柄の売買等を推奨するものではありません。