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ダイナミズムを伴う米国の雇用創出

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村上 尚己

アライアンス・バーンスタイン株式会社
マーケット・ストラテジスト
 

 

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2016年4月27日

 

2016年初に発生した新興国経済失速や原油安に起因する市場の混乱には、投資家だけではなく米連邦準備制度理事会(FRB)など当局者も強い警戒感を抱いたが、「行き過ぎた悲観論」は和らぎつつある。一方、FRBが2015年末に開始した米金利引き上げに関しては、2016年以降も極めて緩やかなペースに留まるとの見方が多い。米経済の回復にはこれまでの金融緩和が一定の役割を果たしてきているため、その支えがなくなると成長が失速するリスクがあるとの見解だ。

リーマンショック後の米国経済は、インフレ率の上昇が緩やかで、経済成長率もこれまでのところ緩慢で脆弱に見える。一方、過去6年間を通じてFRBが目指したとおり、労働市場では雇用拡大・失業率低下が実現した。米国の経済および労働市場の回復の持続性を考えるために、これまでの雇用創出の状況について産業別に以下で分析した。
 
2010年以降の米労働市場の回復は、民間産業全般で起きていることに加え、技術革新や規制緩和で生まれた新規ビジネスの拡大が雇用創出の中核を担っている特徴がある。米国の産業構造の変化に伴うダイナミズムが労働市場の変化に及び、そして経済成長の基盤となる雇用を創出している。このことは、米経済が必ずしも「金融政策頼み」で成長しているわけではないことを示している。
 
詳細を見ると(図表)、2010年~2015年の景気回復局面で、米国では雇用者数が年間230万人増えた。1年当たりでは、前回2003年以降の5年間の景気回復期(142万人/年)よりも多くの雇用者が創出されている。リーマンショックによる歴史的不況で労働市場に激震が及んだ反動増の側面もあるが、幅広い民間産業で雇用が増えているのが特徴である。なお、唯一雇用が減ったのは政府部門である。
 

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前回(2003年~2007年)の労働市場回復期には、製造業、情報通信業で雇用が減少したが、2010年以降はこれらの産業を含めて雇用回復が観測された。前回局面で減少したこれらのセクターでの雇用創出で、前回と比べ42万人(1年当たり)雇用が底上げされている。 
 
2003年からの景気回復期に情報通信業で雇用が減少したのは、2000年頃までのITブーム崩壊の調整が長期化したためだ。2010年以降は、同セクターでも雇用が若干増えたが、中でもデータ・プロセッシングやサーバー構築など新たなネットサービスに起因する雇用創出が見受けられる。株式市場では、フェイスブック、グーグルなどの新興テクノロジー企業はFANG*と称されモメンタム株になっているが、これらの新興企業が生み出す新たなサービスが雇用創出をもたらしている。
 
上記以外に、前回の景気回復よりも2010年の雇用拡大が目立つ産業として、輸送業、小売業、雇用サービス業、外食産業の4つが挙げられる。
 
輸送業は、12.9万人/年と前回回復時(6.4万人)から伸びは倍増。中でも、トラック輸送業者、宅配業者、その他輸送サービス、での雇用創出が目立つ。インターネット技術の発達により、後記する「無店舗小売業」の隆盛などとともに、新たな流通ビジネスが生まれ雇用創出が実現したと見られる。
 
小売業では23.9万人/年と、運輸業同様に前回の拡大期のほぼ倍のペースで雇用が伸びた。百貨店など伝統的小売業に加えて、全体に占めるシェアは小さいが、「無店舗販売」や「その他小売業」での雇用拡大が目立つ。インターネット等の技術革新を駆使したアマゾンなど、新たなビジネスモデルの隆盛が雇用創出を支えたと見られる。
 
サービス業は1990年台以降雇用拡大をけん引したが、今回の景気回復局面では、教育・医療などでは前回ほどの雇用拡大は見られない。一方、一部のサービスでの雇用創出が目立つが、その一つが、雇用サービス業で18.2万人と前回時(2.8万人)から大きく伸びている。この中にはパートタイムなど一時労働者も含まれるが、一方で、Uberなどシェアリング・エコノミーのビジネス拡大に伴う新たな雇用形態を通じた雇用創出が、カウントされているとみられる。新たなビジネス誕生が、雇用を生み出しているということだろう。
 
また、すそ野が広い外食産業も雇用創出をけん引している。外食産業の中でも、「クイックサービス」と区分けされるサービスの雇用拡大が12.8万人と、前回時(8.2万人)から伸びが目立つ。流通システム発達やモバイル端末など情報技術の利用により、日本における「中食」に近いサービス提供が米国でも広がったことが、雇用創出をもたらしたと見られる。
 
上記の産業別雇用動向は、米国では景気回復で実現した新規ビジネスの拡大とともに、それに成功した企業による雇用創出が起きており、同時に成長率が高まらない産業における雇用創出が限定的であることを示している。
 
米国経済は低成長のニューノーマル時代が訪れたとする見方が多いが、産業構造の変化とともに雇用創出が実現していることは、米経済が底力を保っていることを示唆している。債券市場では、ニューノーマル到来でFRBの断続的な利上げ継続は難しいとの見方が多いが、米経済の基盤の強さを踏まえれば、FRBの利上げ継続はスムーズに実現する可能性もあり得るだろう。
 
日本への示唆は何か? 日本でもアベノミクス発動後の2013年から雇用者数は増加に転じた。米国でこれまで見られたように、新たなビジネス誕生が更なる雇用創出を生む好循環を強めることが一段と重要になる。政府がリーダーシップを発揮し、規制緩和、幅広い雇用ルールの再構築、多様な働き方を阻害する雇用慣行見直しなどを推し進めることが必要である。そうした取り組みを積み重ねれば、景気・雇用回復の経路がより太くなり、アベノミクスの成果がより鮮明になるだろう。
 


 

*フェイスブック、アマゾン、ネットフリックス、グーグルの4銘柄のアルファベットの頭文字を合わせた表現
 


 

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