2017年の新興国債券市場は力強いリターンを生み出した。2018年も好調を維持する可能性があるが、世界経済の動向や地政学的問題を巡るリスクが数多く待ち受けているため、投資家は選別的なスタンスを取ることがこれまで以上に重要となる。

2017年初頭を振り返ると、新興国債券市場は、米国の金利上昇や米ドル高を背景とした資金流出に対する懸念から、厳しいスタートを切った。しかし、あきらめずに市場に留まった投資家は、大きな見返りを得ることができた。新興国の国債や社債の主要指数は、現地通貨建て、米ドル建てともに11月までに年初来リターンが7.5%-13%ほどに達した。

新興国債券はなぜそれほど底堅い相場となったのだろうか? 一つには、世界経済が健全であったことだ。先進国経済は過去10年近く成長不振が続いてきたが、ようやく勢いがつき始めている。米国をはじめとする先進国の力強い成長は他の国々の経済も押し上げる傾向があるため、新興国にとっても好材料となる。

だが、2018年はより注意が必要だ。新興国のファンダメンタルズは引き続き良好で、債券市場のバリュエーションもおおむね魅力的な水準にある。しかし、マクロ経済および地政学的なリスクは拡大しており、グローバル資本市場を取り巻く環境は不透明感が強まってきた。米連邦準備制度理事会(FRB)が予想以上のペースで金融政策を引き締めれば、市場は混乱に陥りかねない。中国経済がさらに減速し、コモディティ価格を圧迫する可能性もある。

こうした不透明な投資環境は、長期的に優れたパフォーマンスを上げるためには選別的かつ機動的なアクティブ運用が有効であることを示している。

なぜ選別的な投資が有効なのか  

足元の市場環境で良い材料は、多くの新興国で重要な改革が進み、経済のファンダメンタルズが強化された結果、外的ショックや急激な投資資金流出に対する脆弱性が薄れたことだ。そうした国々は、インフレを収束させ、経常収支を改善し、規律ある財政に基づく中道的な経済政策を進めることでそれを成し遂げた。こうした環境改善はいずれも、新興国債券市場が数年前と比べはるかに強靭になっていることを意味する。

それでもなお、新興国投資に関しては選別的なスタンスが不可欠だ。例えば、発展途上国では政治的リスクや経済的リスクがそれぞれ異なっているため、国やセクターの選別を軽視することができない。

2018年の最大の課題は、米国を始めとする先進国で予想されている金融政策の変更がもたらす影響だ。これまでのところ、新興国債券市場はFRBによる段階的な金利引上げを無難に乗り越えてきた。しかし、2018年はFRBの首脳が交代するため、市場が現在予想している以上に引締めペースが速まる可能性がある。そうなった場合、米国債利回りが上昇するほか、米ドル高が加速して一部の新興国通貨や債券を圧迫する可能性がある。

新興国の政治リスクも見過ごしてはならない。メキシコやブラジルなどでは選挙が予定されており、大幅な政策変更や政権交代につながる可能性がある。

幸いなことに、政治リスクはその国単独の問題であることが多い。アルゼンチンの政治問題がインドネシアに影響を及ぼすことはほとんどない。これは、多くの新興国に投資を分散することで特定の国の政治リスクによって生じ得るボラティリティを抑制する、あるいはリスクの高い国は回避して他の国々に注力することができることを意味している。

個別の国や企業に関する要因を考慮し、各セクターや個別債券をオーバーウェイトにしたりアンダーウェイトにしたりできるアクティブ運用は、新興国債券市場において長期的に成功を収めている。ハード・カレンシー(米ドルなどの主要通貨)建て新興国債券運用に関しては、3年移動平均ベースのリターンで見ると、2004年から2016年までの期間の85%においてアクティブ運用マネジャーの過半がベンチマーク指数をアウトパフォームしている(図表)。

新興国債券ではアクティブ運用がアウトパフォームする傾向.png

マルチセクター運用の投資機会  

新興国債券投資における資産配分方法は、それぞれの投資家のニーズ、慣熟度、リターン目標、ガバナンス上の制約などに左右される。しかし、マルチセクター・アプローチを用いることができれば、国、社債発行企業、通貨などによって投資を分散することが可能になり、長年にわたる安定したリターンの創出に寄与することができる。

今日の世界では、新興国債券を債券ポートフォリオの片隅に追いやることはもはや妥当ではない。多くの新興国はすでにある程度の発展を遂げており、世界経済の成長にとって不可欠なけん引役となっている。新興国を抜きにした債券ポートフォリオは、ある意味不完全なものとならざるを得ない。しかし、新興国債券投資では、とりわけ不透明感が強い局面においては、選別的な姿勢が極めて重要になる。

 

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
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