米国の株式市場には奇妙なアノマリーがある。それはここ数年、収益性の高い企業の株価上昇ペースが利益の伸び率に追いついていないことだ。これは、複雑な市場環境に直面する今日の投資家にとって、重要なヒントを与えてくれる。

米国株は、足元での株価調整や税制改革による若干の利益かさ上げ効果などにもかかわらず、市場全体としては依然としてやや割高な水準にある。また、水面下では、過去数年にわたる強気相場が生んだ目に見えない不均衡が広がっている。例えば、過去6年間、S&P 500指数のトータル・リターンは指数構成銘柄の利益成長率を大幅に上回っている(図表の緑の実線対点線)。だが、総資産利益率(ROA)に基づきふるい分けた高収益性企業の株価は逆の動きを示している(図表の青の実線対点線)。高ROA企業の株価は市場全体と同程度に上昇しているが、これは利益の伸び率をはるかに下回っている。

収益性の高い米国企業は株価リターンが利益成長を下回る.png

株価調整後もバリュエーションは高止まり  

これはどのように説明すればよいだろうか? 単純化して言えば、市場には利益の伸び率よりも株価バリュエーションが大幅に上昇した、低利益成長企業が数多く含まれているということであろう。

こうした企業は、生活必需品、公益事業、不動産など、債券の代替投資先とされるセクターにとりわけ多く見られる。ここ数年、配当利回りを求める投資家がこれらのセクターに押し寄せたからだ。2月初めの市場の調整を経た後でも、これらの銘柄のバリュエーションは依然として高止まりしている。米国の公益セクター銘柄は2018年の予想利益に基づく2月末時点の株価収益率が16倍となっており、生活必需品セクターも17.8倍に達している。次ページの図表は、S&P 500指数構成銘柄全体の業績がすでに高水準にある現在の株価バリュエーションに追いつくには、大幅な利益拡大が必要であることを示している。米国企業の営業利益率がすでに16.7%という高水準に達している今日の状況を踏まえれば、それは難しい注文である。

すでに利益率が高水準にあることはまた、景気サイクルに敏感な企業にも問題を投げかけている。これには、世界的な企業収益サイクルが力強く推移するとの期待から株価バリュエーションが高騰した製造業や素材セクターの銘柄が含まれる。そうした企業の収益力は非常に不安定な場合が多く、現在高水準にある営業利益率はいずれより低い水準に平均回帰する可能性が高い。

高ROA企業: 秘められた潜在力 

こうしたことから、将来にわたり収益力を維持できる企業を見つけ出すことが非常に重要になる。この観点からするとROAは強力な指標であり、特に利益率の変動性や株価バリュエーションなど、先を読み取る他の要因と組み合わせて用いればさらに強力になると考えられる。実際、高ROA企業の1992年から2017年までの期間におけるパフォーマンスは、ラッセル1000グロース指数を年率換算で3.7%上回っている。

しかし、上の図表が示すように、高ROA企業の株価はここ数年、利益の拡大ペースに追いついていない。これらの企業の業績は株価をはるかに上回る伸びを示しているため、業績の伸びに追いつくには株価の大幅な上昇が必要となる。つまり、これらの銘柄には市場にまだ認識されていない大きな上値余地があると考えられる。

市場のボラティリティに備える 

さて、市場で再度ボラティリティが上昇した時、投資家はどのようなポジションを取るべきだろうか? 市場全体にまんべんなく投資しているポートフォリオは、一見無難に思われるかもしれないが、市場の混乱に大きく影響を受けやすいと思われる。なぜなら、そうした場面では、業績の伸びに先行して株価が大きく上昇してきた銘柄がより大きな調整圧力に見舞われる恐れがあるからだ。

収益性を重視するアプローチは、市場の混乱に備える上で効果的だ。言い換えれば、バランスシートが健全で、持続性のあるビジネスモデルを持ち、堅実な経営陣が率いる企業を探すことが重要だということである(以前の記事『米国株式市場の正念場に備えるには』ご参照)。そうした企業は、3-5年の時間軸で見ると、力強いリターンが期待できる。そうした銘柄であれば、下げ相場に巻き込まれたとしても、投資家は長期的な見通しに確信を持ち続けることができるため、より魅力的な株価水準でポジションを積み増すことができる。

2月の株価調整は注意警報となった。今こそ投資家は、株式ポートフォリオを注意深く点検し、保有銘柄の収益の実績や見通しが株価リターンとかい離していないことを確認すべきである。

 

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