世界的な金利上昇を背景に、債券の2018年初来リターンはおおむねマイナスとなっている。欧州中央銀行(ECB)の超緩和的な金融政策が出口に向かう中、欧州債券も例外ではない。だが、欧州債券は今後も損失を出し続ける運命にあるのだろうか? 必ずしもそうとは限らない。金利上昇に対処する方法はいくつかある。

低迷する債券リターン    

債券投資家にとって2018年は厳しいスタートとなった。米国債の年初来リターンはマイナス1.2%程度*で、主な総合型債券インデックスも下落している。インフレ期待が高まり、米国連邦準備制度理事会(FRB)によるさらなる金利引上げが見込まれる中、債券投資家は一段と大きな困難に直面する可能性がある。

同様に、欧州ではECBが量的緩和の段階的な解除を続ける見通しで、年内にも資産買入れプログラムが打ち切られそうだ。そのため、ユーロ圏の債券市場も向かい風に直面しそうだ。アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)では、世界的に金利が市場の予想以上に上昇する可能性があると考えており、特に欧州ではそのリスクが高いと見ている。今は、債券ポートフォリオを見直し、より柔軟な戦略を取り入れる好機かもしれない。

その具体的な方法を紹介しよう。

① 総合型アプローチ以外にも目を向ける

最近の債券市場の下落にもかかわらず、欧州債券の利回りは依然として過去最低に近い水準にある。こうした状況下では、伝統的な総合型債券ポートフォリオは、金利上昇に対する抵抗力が弱い。特に、ユーロ総合インデックスなどのベンチマークに追随するパッシブ型戦略は脆弱性が高い。デュレーションが7年弱の場合、利回りが10ベーシス・ポイント(bps)上昇すれば債券価格が0.7%近く下落し、年間の利回り収入がすべて失われることになる。利回りが50bps上昇すれば、ユーロ総合インデックスが損失を取り戻すのに38カ月かかる計算になる(図表)。

ユーロ総合インデックス:小幅な利回り上昇でも大きな影響.png

そこで、例えば、金利リスクへのエクスポージャーを引き下げる(ゼロ以下には至らない範囲で)、と共に、選別的に信用リスクへのエクスポージャーを引き上げるといった方針を採れば、より高い利回りが得られる一方で、金利上昇による債券価格の下落リスクをある程度抑制できる。特に欧州債券市場ではこの効果が顕著だ。例えば、金融機関が発行する劣後債(金融機関の自己資本比率の算出上「その他ティア1(AT1)」に分類されるものなど)や、欧州のハイイールド債、米国のモーゲージ担保証券(MBS)などは、金利上昇に対する抵抗力が強い。利回りの高い債券は一般に金利変動への感応度が低い(が、信用スプレッドの変化には敏感に反応する)からである。

② クレジットの投資機会に注目     

欧州債券に投資するには、欧州の金利上昇リスクに留意しなくてはならない。これまでのところ、ECB幹部によるコメントが極めてハト派的なものにとどまってきたことから、市場はECBの量的緩和解除見通しに対して穏やかな反応を見せている。しかし、ECBが市場の期待をうまく抑えれば抑えるほど、金融政策の変更が明確になった際の市場の反応が激しいものとなりかねず、利回りに大きな影響を与える可能性がある。一方、ユーロ圏の経済成長が勢いを増し、欧州企業の債務負担が軽減されれば、欧州社債市場の市場環境は改善するであろう。

ユーロ圏のハイイールド債市場は、需給面でも底堅い見通しだ。純発行額は抑制された水準が続き、過去数年を下回るとみられる一方で、需要は依然として堅調に推移すると予想される。ハイイールド債のミューチュアル・ファンドからは資金が流出している(2018年1-3月期は51億ユーロ**の流出超)が、ユーロ圏の投資適格級社債のスプレッドが小さく、ECBの政策がそれを支える状況が続くと見込まれるため、投資適格級債券運用ポートフォリオは利回り補完のため機動的にハイイールド債への投資を続けている。

ここでひとつ重要な点は、デフォルトを低水準に抑えるためにはアクティブ運用が有効であるということだ。経済が回復している時ですら、社債のデフォルトにつながる企業固有の問題が発生する。これまでの経験に基づけば、スキルの高いアクティブ運用はリスクの高い発行体を見極めることができる。そのため、適切に運用されているアクティブ運用ポートフォリオは、ベンチマークに比べ、組入銘柄のデフォルト件数が少なくなる。

③ 隠れた投資機会を求め、非ベンチマーク銘柄も組み入れる

総合型債券ベンチマークは、足元で利用可能な投資機会を全面的に活用することができない。例えば、金融セクターにはAT1と呼ばれる劣後債の比較的新しいカテゴリーが含まれている。これは、まだどのベンチマークにも組み入れられていない。AT1は2017年に力強い上昇を演じたが、それでもまだ投資価値があると考えられる。

AT1は利回りが依然として魅力的な水準にあることに加え、銀行の自己資本増強と不良債権減少が同時に進んでいることによるバランスシート改善の恩恵も受ける。さらに、利回り上昇やイールドカーブのスティープ化は銀行の収益性を押し上げ、利益率を改善させるだろう。もちろん、リスクもある。AT1の投資家は株式に転換されたり、損失償却によって価値がゼロになる可能性がある。資本が劣化すればクーポン支払いが停止されることもあり得る。しかしながら、銀行セクターが改善していることを踏まえれば、こうしたリスクは比較的低いと考えている。

適切な資産配分を見極める   

これら3つのアプローチは、それぞれが異なる方法で金利上昇に対処する手段となり得る。リスクを認識し、直ちに行動すれば、投資家はより困難な金利環境に備えた適切な資産のアロケーションを準備することができる。

* 2018年3月31日現在、米ドルベース
**  出所:JPモルガン。この額はJPモルガンのファンド・ユニバースの受託資産総額の7%に相当する。

 

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