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中国の市場開放はボラティリティの輸出を招くか?

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ジョン・リン 
アライアンス・バーンスタイン・香港・リミテッド
中国株式運用 ポートフォリオ・マネジャー
 
 
 
 
 
 
 

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2018年6月19日

 
 
中国の金融市場は世界に開かれつつある。これにより思わぬ結果も生じており、投資家は留意する必要がある。海外から中国本土の株式市場に流入する資金が増えるのと同時に、中国からグローバル市場へと流出する資金も増加しているからだ。特にアジア市場では、ボラティリティ上昇の要因となる可能性がある。
 
世界中の投資家が「中国A株」(以下、「A株」)と呼ばれる中国本土の証券取引所に上場している人民元建て株式への投資機会の拡大に熱い視線を向けている(以前の記事『中国A株: 新興国株式ファンドは本当に準備ができているか?』ご参照)。2018年5月31日にMSCI が初めてA株をグローバルな新興国株価指数に組み入れたためである。当初の組入比率は0.35%だが、8月末にはその倍に引き上げられる見通しだ。
 

中国A株の組入比率は徐々に拡大

MSCI はA株の組入れを徐々に拡大しようとしている。世界中のパッシブ投資家が新たなベンチマーク構成比率に合わせてA株を購入することになるため、一気に進めると大量の買いが発生することが予想されるが、一方で海外投資家が1日に購入できる株式については中国政府が厳しい枠を定めているためだ。
 
中国当局は変化を上手く受け入れようとしている。5月1日には、中国本土の取引所と香港証券取引所を結ぶ「ストック・コネクト」プログラムの枠を4倍に拡大した。これにより、指数改訂を前に海外投資家は本土株式を購入することが容易になった。しかし、中国が海外投資家にドアを広く開けば、中国の投資家の資金もそのドアから海外に出て行くことになる。
 

本土のマネーが香港に 

その影響は、香港に上場している中国株(H株)市場にすでに現れている。ここ数カ月、中国から香港に向かう投資資金が急激に増加した(図表1の左図)。
 
その主な理由は2つある。第1に、H株は2014年以降、A株よりも割安な水準で推移してきた(図表1の右図)。こうした投資機会をふまえ、中国本土の投資家は明らかに割高な国内のA株よりも割安な香港のH株への投資を選好していると思われる。第2に、ネット企業のテンセントやマカオのカジノ・グループを始めとする一部大型人気銘柄はA株市場で購入することができない。そのため、こうした銘柄を保有したい中国の投資家は、香港市場で購入するしかないのだ。
 
 
中国本土から香港への資金フローが拡大.png
 
 
このトレンドは、いずれH株市場の動きに影響を与える可能性がある。中国本土の株式市場は非常に不安定かつ非効率である。国内の個人投資家が株式の86%を保有しているからだ(図表2)。これは、ほとんどの先進国市場やアジアの新興国市場の倍以上の割合である。米国株式市場では、1960年代以降、個人投資家の比率がこれほど高くなったことはない。
 
中国A株市場は個人投資家の影響が大きい.png
 

短期売買の傾向

中国の個人投資家の行動は変わりやすい。彼らは長期的な見通しよりも、ニュースのヘッドラインや短期的な材料に反応する傾向が強い。また、国内投資信託のファンド・マネジャーも、そうした個人投資家のような行動をとりがちだ。なぜなら、中国のファンド・マネジャーは一般に短期的なパフォーマンスで評価されるからである。
 
例えば、中国の通信会社大手の一角である中国聯通(チャイナ・ユニコム)に関する同じニュースに、本土市場と香港市場がそれぞれどのような反応を示したかを振り返ってみよう。同社は2016年10月18日に、年間利益が大幅に落ち込むと警告する一方で、第4世代(4G)通信の新規契約者が力強く伸びているため売上高が拡大していると発表した。中国聯通のH株がその日から年末にかけて5.8%下落したのに対し、親会社である中国聯合通信(チャイナ・ユナイテッド・ネットワーク・コミュニケーションズ)のA株は同じ期間に38%以上上昇した。後者の利益の大半を中国聯通が稼いでいるにもかかわらず、である。
 
なぜこうした違いが起きるのだろうか? 中国聯通のH株に投資していた投資家は、先進国市場で予想される動きと同じように、将来の利益に関する悪い材料に注目した。一方、A株市場の投資家は、さえない利益見通しを無視し、事業再編に関する約束、長期保有投資家を迎え入れる可能性、経営陣向けの業績連動報酬スキームなどに飛びついた。確かにこれらはどれも重要な動きだが、株価の反応はこれらの変化がもたらす潜在的な影響よりも、非現実的な目先の期待感を反映した可能性がある。
 

次はどの市場に向かうか?

しかし、香港市場への影響は最初の段階に過ぎない。今後3年から5年間は中国の市場自由化が進むのに伴い、中国から流出する資金が近隣のアジア諸国をはじめとする他市場にも向かい始めると見られる。中国の個人投資家の資金が大量に流出すれば、他の市場の投資家構成に変化をもたらし、やがては市場の挙動にも影響を及ぼす可能性がある。個人投
資家の比率がわずか37%に過ぎない台湾のような比較的小規模な市場は、劇的な変化に直面する可能性がある。
 
投資家は中国の資金フローの規模や方向性を注視しなくてはならない。中国はすでに世界の製造業輸出のけん引役となっている。変化が一夜にして起こることはないだろうが、長期的に見れば、中国からアジア地域や世界への輸出品目リストに「株式市場のボラティリティ」が追加されるかもしれない。
 
ボラティリティにも良い側面がある。市場の非効率性やミスプライシングから生じた投資機会を発掘する、個別銘柄選択重視の投資家にとっては有利になり得る。中国株式市場のボラティリティが国境を越えて広がるのであれば、投資家はリスクを適切に管理するとともに投資機会を捉えるために、目をみはらせ、機動的に投資行動を取る必要がある。
 
 

 

 

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。オリジナルの英語版はこちら。

https://blog.alliancebernstein.com/library/will-china-export-volatility-as-equity-markets-open

 

 

 

 

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