米国と中国の貿易戦争やブレグジット(英国の欧州連合(EU)離脱)を巡る交渉など、世界の投資家は様々な予測不能なイベントに取り囲まれている。しかし、適切なアプローチを採れば、不確実性が高まった時にも慌てる必要のないポートフォリオを構築することが可能だ。

投資家は短期的、長期的な安定を脅かす数多くの問題に直面している。不均衡な富の配分や政治的な分断によって、マクロ経済や社会の断層が広がりつつある。米国の財政赤字、中国企業の債務、日本や欧州大陸における人口の高齢化は、未来に問題が待ち構えていることを示唆している。問題は、何が次の「大地震」の引き金になるか、そしてそれはいつ起きるかということだ。

その答えを正確に知ることは誰もできない。十分な情報を備え、ポートフォリオのパフォーマンスに影響を与え得る要因について確かな見解を持っていたとしても、それらのイベントがどのような反応を呼び、事態がどう進展するかを予測することはほとんど不可能である。だから、それを予測しようとするのはやめた方がいい。その代わりに、影響を受け易いエクスポージャーを回避し、強固なファンダメンタルズを持った銘柄を選択すると同時に、リスク管理に関する視野を広げることにより、未知のイベントに備えたポジションを構築すべきである。

脆弱性の高いポジションを避ける   

株式のアクティブ運用マネジャーの大半は、投資機会を見極め、それぞれの戦略を執行するための明確な運用プロセスを確立している。多くの場合、投資機会は自らが優位性を持つとそのマネジャーが判断している市場の一部に集中しており、それは通常、投資スタイルや地域によって決まる。

その結果、一部の投資戦略は他の戦略と比べて予測不能なイベントの影響を受けやすくなっている可能性がある。なぜなら、特定の業界や地域へのエクスポージャーは、悪影響をもたらす場合があるからだ。例えば、ある投資アプローチを採用している結果として欧州の銀行や中国の輸出企業、日本の消費関連企業などに大規模なポジションが構築されていれば、ポートフォリオのパフォーマンスはそれぞれの国のマクロ経済動向によって著しい影響を被る可能性がある。その場合、マクロ経済や、規制、政治などの要因を予測することの方が、ターゲットとするセクター内における個別企業ベースの勝者を選別するよりも、パフォーマンスにとってはるかに重要な問題となってしまう。

イベントがもたらす結果が全く予測できない場合、これはリスクの高い戦略となる。例えば、米中貿易戦争がエスカレートする恐れがあるとの懸念から、投資家は輸出企業や景気に敏感な銘柄のポジションを縮小する可能性がある。しかし、それは間違った行動かもしれない。米国による関税引上げを受けて中国が最終的に市場開放を進め、より協調的な通商政策を採れば、それらのセクターや企業は長期的にアウトパフォームすることすら考えられるからだ。そのため、貿易戦争がもたらし得る結果の予想に基づいてポジションを取ることは、逆効果になりかねない。

より予測可能な企業のファンダメンタルズを重視  

しかし、こうした環境においても、ポートフォリオのポジションを構築する方法はある。例えば、どのような環境でもアルファ(超過収益)の創出を目指すことによって、市場を揺るがすイベントの影響に対して抵抗力を持つ戦略を考えてみよう。そうした戦略が適切に執行されれば、パフォーマンスに打撃を与えかねない市場のボラティリティやスタイル・サイクルを乗り切る助けになるだろう。

では、アルファはどのように創出されるのか? そこでは、ビジネスに関するファンダメンタルな分析こそが違いをもたらす。長期的で持続可能なビジネスモデルに加え、幅広いセクターや地域にわたったキャッシュフローに基づくバリュエーションに焦点を当てることにより、政治・マクロ経済的なリスクに左右されにくい安定的なアルファを創出する銘柄選択が可能になるであろう。

スタイルの中立性も重要である。株式ファクター(スタイル)へのエクスポージャーを最小限に抑えることは、コア株式戦略にとって重要な要素となる。バリュー、グロース、モメンタムなどスタイル・ファクターへのエクスポージャーが長期的に報われるであろうことは間違いない。しかし、スタイルのパフォーマンスは年ごとに、あるいは四半期ごとにさえ激しい変動に見舞われるケースが多い(以前の記事『不安定な市場で安定的なリターンを得るには』ご参照)。市場が予期せぬイベントで動揺している場面や、その後に訪れるであろう回復局面でも、スタイルのパフォーマンス・パターンは予測が極めて難しい(図表)。

ファクター別パフォーマンスは市場環境の変化で大きく変動.png

リスク・モデルを見直す 

また、資産価値を守るためには、伝統的な分散投資に過度に依存してはならない。ポートフォリオのエクスポージャーが幅広い地域、セクター、株式ファクターに分散されていれば、それで安全だという錯覚に陥ってしまいがちである。しかし、単純なリスク・モデルはポートフォリオのアキレス腱を発見できない可能性がある(以前の記事『FANG騒動で明るみに出たリスク・モデルの死角』ご参照)。市場を襲う次なる危機は、以前とは異なる形で現れる公算が高いからだ。定量モデルは必ずしもどのようなタイプのエクスポージャーが問題をもたらし得るのか特定できない可能性がある。

では、投資家はどうすればいいのだろうか? 標準的なリスク・モデル以外にも目を配り、リスク環境の変化に目を光らせるべきだ。それは、様々な定量ファクターからなるリスク・モデルとヒストリカルなイベント分析を融合させ、定性的なアプローチを通じてポートフォリオを構築すべきであることを意味する。

予測できないことを予測しようとするのは、将来に備える好ましい方法とは言えない。企業のファンダメンタルズも確実なものではないが、はるかに容易に信頼性の高い予測を立てることができる。したがって、長期にわたって本質的な価値を創出し、不透明な環境においても高水準で持続可能なキャッシュフローを創出する能力を持つ企業の株式を購入することこそが、将来の不確実な時代に向けたポートフォリオを構築する最善の方法であろう。

 

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
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