足元のグローバル株式市場では調整局面が続いており、当面はボラティリティが高止まりする可能性があると見るべきだろう。しかし、過去の下落相場と比べれば、最近の下げ幅は極端なものではないし、長期的な観点で見た市場のファンダメンタルズは引き続き良好であることにも留意しておくべきである。

2018年10月24日現在、グローバル株式市場は月初から9%ほど下落している。初めは新興国など米国以外の市場を中心とした下落であったが、途中からは米国市場も同調している。特に高成長テクノロジー銘柄の下落が著しい。

相場下落の最大の理由は企業業績の先行きへの懸念だ。利益成長が鈍化するリスクを市場が織り込み、株価バリュエーションが調整されつつある。調整はまだ終わっていない可能性があり、ボラティリティはしばらく収まらないかもしれない。しかし、少なくとも米国では利益成長が鈍化するとしても減益に至るとまでは見られていないし、世界的に株価バリュエーションが低下した結果として割安な投資機会が拡大していることも忘れるべきではない。

市場の変動の背景に3つの要因

今回の株式市場の下落には、主に3つの要因があったと見られる。

  • 米国金利上昇:10年物米国債の利回りは8月中旬の約2.8%から10月24日には3.2%まで上昇した。6週間で利回りが40ベーシス・ポイント上昇するというのはそれほど珍しくはないものの、投資家心理を悪化させる要因となった。
  • FAANG銘柄の調整: 過去数年における株式市場の上昇局面は、FAANG(フェイスブック、アップル、アマゾン、ネットフリックス、グーグル)と呼ばれる主要テクノロジー銘柄に主導されてきた。足元では、これらの銘柄が利益確定売りなどで大幅に反落しているが、市場の主役であった銘柄の失速は他のセクターにも悪影響を及ぼした。
  • 企業業績予想に見える貿易摩擦の影: 企業が通期業績見通しを発表するにあたり、トランプ政権の通商政策の影響に言及するケースが見受けられるようになった。また、足元の業績が市場予想を下回った企業もあり、米国を中心に先行きの不透明感が高まった。

深刻さの度合いは?

こうした懸念が高まる中、グローバル株式市場は10月24日までの3日間で約3%下落した。米国株式も同期間で4%下落している。これは、日常的な変動率ではないものの、前例のない下落というほどでもない。直近まで比較的安定した時期が長く続いていただけに、より大きく感じている投資家が多いかもしれない。10月24日には米国株式市場のボラティリティを反映するVIX指数が22に上昇した。これは長期平均をやや上回るものの、2月から3月にかけての下落相場でつけた37には遠く及ばない。それでも、このボラティリティ上昇は、しばらく相場が荒れるであろうことを示唆している。

年間を通じて市場が上昇し続けることは珍しく、上昇相場の年でも途中で調整局面があることは不思議ではない。1980年以降で見ると、各年の最中におけるS&P 500指数の下落局面の平均下落幅は約10%に達するが、この38年で年間ベースの騰落率がマイナスになったのは6回のみだ。もちろん、今年がプラスのリターンで終わると言うわけではないが、1年間の途中で調整局面が発生すること自体は市場の動きとしては普通のことなのである。

ファンダメンタルズは引き続き堅調 

市場のボラティリティが上昇すれば、投資家の不安が高まるのは不思議ではない。しかし、多くの国々で企業や経済のファンダメンタルズは、年初ほどではないものの、引き続き堅調だ。

マクロ経済面では、米ドル高、米国金利上昇や通商問題などを背景に、ABのエコノミストも世界経済の成長率予想をやや引き下げている。しかし、米国経済はおおむね好調で、株式市場の長期不振につながるような景気後退の兆しは見えていない。米国以外ではもっと軟調な国もあるが、全体として世界経済の成長は持続している。

株式市場とマクロ経済は長期的には連動しているものの、短期的には乖離が生じることがある。それは、市場の不安が高まり、投資家心理が市場動向の最大要因となった時にしばしば起こるが、足元でもそのような傾向が見られる。

投資家は何をすべきか 

こうした市場環境下、投資家のとるべき行動はどのようなものだろうか。以下、ABの資産運用専門家の考えを共有したい。

慌てて投資戦略を変更しない:

10月の市場下落は、厳しい局面においてもポートフォリオの方向性を維持することの困難さをあらためて浮き彫りにした。短期的な市場変動であっても、人間の感情は動揺するからだ。こういう時にこそ、資産クラスや地域ごとの資産配分バランスなどに関し、資産運用のプロフェッショナルに冷静な意見を求める価値があるだろう。

株式に背を向けてしまわない:

適切に分散されたポートフォリオにとって、株式は常に重要な位置を占める。過去数年にわたり、株式のパフォーマンスは期待リターンを上回るものであったため、若干の調整があることは不思議ではない。ABでは、株式は引き続き長期的な観点からは魅力的な投資機会を提供していると考えている。市場が反転するタイミングをピンポイントで当てることはほとんど不可能であるため、今あわてて株式への資産配分を引き下げてしまうのは、損失を確定してしまい、市場回復の恩恵を受ける機会を逃すことになる可能性がある。

しばらく高ボラティリティが続くことを覚悟する:

慌てて行動しないということは、市場の変動に目をつぶるということではない。ボラティリティがすぐには収まらない可能性は考慮すべきだ。例えば、株式へのエクスポージャーは維持しつつも、下落リスクに対して抵抗力のある戦略に乗り換えることができよう。財務的なクオリティが高く、潤沢にキャッシュフローを創出しているのに株価バリュエーションが割安な銘柄を重視した戦略などだ。長期的な潜在リターンを重視する観点からは、景気や市場のサイクルに左右されない独自の利益成長ドライバーを持った優れた企業の発掘に注力した成長株戦略も魅力度を増していると思われる。

 

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
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