バリュー株は過去数年間アンダーパフォームした。しかし、ここへきて潮目が変わりつつあるかもしれない。足元では割安銘柄が復調の兆しを見せており、長期にわたるグロース株優位相場が転換する可能性を示唆する指標も現れている。

業績回復余地が過小評価され、株価バリュエーションが割安な水準に留まっている銘柄を重視するバリュー投資に特化してきた投資家にとって、過去10年間は厳しい局面だった。期間の大半にわたり、世界的にバリュー株がグロース株をアンダーパフォームしたからだ。特にここ2年間は、代表的な高成長銘柄である米国のFAANG(フェイスブック、アマゾン、アップル、ネットフリックス、グーグル)の人気上昇がこうしたトレンドに拍車を掛けてきた。

2018年7-9月期は変化の兆し  

しかし、最近はバリュー株が息を吹き返す兆しが現れている。2018年7-9期は新興国市場でバリュー株のパフォーマンスがグロース株を8.8%ポイント上回ったほか、日本でもバリュー株がアウトパフォームした。株価が急落した10月も、MSCIワールド・バリュー指数の下げ幅は4.8%にとどまり、MSCIワールド・グロース指数を4%ポイント近くアウトパフォームした(図表1、左図)。10月は、実は全地域にわたりバリュー株がグロース株をアウトパフォームした(図表1、右図)。

10月のグローバル株式市場ではバリュー株がグロース株をアウトパフォーム - Copy.png

こうした最近の動きが、バリュー株に資金が向かう大きな変化の始まりだと判断するのは時期尚早である。それでも、バリュー株の長く暗い冬が終わりを告げつつあるかもしれないと考えるのには相応の理由がある。

1.金利上昇は通常、バリュー株の追い風となる:

金利が上昇すると、グロース株のバリュエーションはバリュー株よりも大きく低下する傾向がある。その理屈は単純だ。金利上昇は投資家が将来のキャッシュフローに適用する割引率を押し上げる。グロース株は長期的な利益成長から価値の大半を生み出しているが、足元では必ずしも多くのキャッシュを創出しているわけではないことが多い。対照的に、バリュー株は長期的な成長力は低いものの、すでに潤沢なキャッシュフローを生み出しているケースが多い。そのため、割引率が上昇してもバリュー株のバリュエーションはそれほど大きな影響を受けずに済む。したがって、米国の金利が歴史的な低水準から上向きつつある現在、バリュー株の本格的な回復に向けた環境が整いつつある可能性がある。

2.企業業績とバリュエーションのかい離が著しい:

バリュー株はグロース株よりも利益成長率が低いことが多い。これはグロース株の定義を考えれば当然ではあるが、そのためバリュー株はグロース株と比べ割安な株価バリュエーションで取引されるケースが多い。株価予想収益率で見ると、足元のグローバル株式市場におけるバリュー株のバリュエーションは、グロース株を35%下回る水準にある。利益成長率に関するバリュー株とグロース株の間の格差が長期平均並みであることを踏まえれば、このバリュエーションのディスカウント幅は通常より大きいと言える。利益が株価バリュエーションにとって重要な要因だと考えるなら、このディスカウント幅は正当化するのが難しい。この歪みが修正される時、バリュー株は力強いパフォーマンスを示す可能性がある。

3.幅広いセクターで投資機会:

一部の業種は、金利上昇局面でパフォーマンスが良くなる傾向がある。例えば金融セクターでは、銀行は利ザヤ拡大による恩恵を受けるし、保険会社は負債を賄う上でコスト低下が追い風となる。しかし、これらのセクター以外でも、一般消費財からテクノロジーや素材まで、幅広いセクターで過小評価されている銘柄を見つけ出すことができる。各セクター内における最も割安な銘柄群と最も割高な銘柄群のバリュエーション・スプレッドは異例なほど高水準に拡大している(図表2)。これは、特定のセクターに大幅にポジションを傾けなくても、投資機会は豊富に存在していることを意味している。

幅広いセクターでバリュー投資機会が拡大 - Copy.png

厳しい市場環境はバリュー株に有利 

最近の市場の混乱は、株式投資家の信頼感を揺るがせた。しかし、割安な投資機会を探し求めるバリュー投資家は、ボラティリティを歓迎すべき面もある。企業業績が比較的堅調な動きを維持している中では、特にそう言える。米国を始めとする一部の市場では、来年は企業業績の伸びが鈍化する見込みだが、世界的に見れば力強さを維持している。市場の下落は投資家に痛みをもたらしてきたが、株価は、米国市場ですら2018年1月下旬のピーク時に比べはるかに割安な水準となっている。

バリュー株は過去においても、市場環境が最も厳しい時期にグロース株を上回るパフォーマンスを示してきた(図表3)。その理由は、市場が調整する場面では、それまで最も大きく上昇してきた銘柄の下げが最もきつくなる傾向があるからである。例えば、MSCIがバリュー株指数とグロース株指数を設定した1975年以降、市場が暦年ベースで幅広く下落した年は9回あったが、そのうち7回においてはバリュー株がグロース株をアウトパフォームした。ITバブルが崩壊した2000年には、バリュー株のパフォーマンスはグロース株を27%ポイント上回った。

市場下落局面ではバリュー株がグロース株をアウトパフォームすることが多い - Copy.png

バリュー株はリスクが高いとみなされることが多いが、実際はボラティリティから投資家を守る役割を果たす可能性がある。キャッシュフロー利回りがかなり高水準にある現在、潤沢にキャッシュフローを創出しているにも関わらず株価が割安な企業は、市場全体のバリュエーションがさらに大幅低下することがあれば、緩衝材となり得るからである。

そして、ボラティリティはバリュー投資家に投資機会をもたらすこともある。市場が下落している場面では、優れた企業の株価も下落する。こうした流れに逆らい、堅実であるにも関わらず過小評価されているビジネスを展開している割安な銘柄をポートフォリオに取り入れられれば、バリュー株が回復する場面では大きなリターンを期待し得るポジションを構築することができる。

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