女性の地位向上を司る組織は存在しないが、それは逆に言えばすべての組織が自ら責任を負わなければならないということである。そのため、女性が自分の能力を発揮して自らの針路を決められるようにする「エンパワーメント」に取り組む動きが広がっている。エンパワーメントは、まず教育から始まる。次は公平に職業に就いて正当な収入を得られるようにすることで、特に女性の進出が遅れている分野ではそれが重要となる。そして究極的には、女性が職場でリーダーシップを執ったり、自分の事業を立ち上げたりすることが目標となる。

ここでは、世界共通言語である「数字」を使い、女性のエンパワーメント を推進している3つの組織に焦点を当ててみたい。そして、アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)内での女性の活躍についても紹介したい。ここで取り上げる3つの組織は、まさしくABがサステナブル投資やインパクト投資において注目している組織の例である。社内の例は、女性の進出を論じる上でABが自らの行動についても説明する責任を果たすために紹介するものである。

女子大の例: ロサンゼルスのマウント・セント・メアリーズ大学 

女性の場合、共学よりも女子大で学んだ後の方が大学院の学位を取得するケースが多い。さらに、米国西部で唯一の女子大であるマウント・セント・メアリーズ大学を卒業した場合は、上位の学位を取得する傾向がより強い。

図表1__2.png

女子大は女性の教育水準の向上に確実に寄与しているが、全体として、女性がより高等な教育を受ける割合は過去50年間で大幅に上昇している。

図表2__2.png

職場でリーダーシップを執る女性:カナディアン・インペリアル・バンク・オブ・コマース(CIBC)のウーマン・イン・リーダーシップ債券 

企業の取締役や経営幹部を含む上級管理職のレベルにおいて、女性が十分な割合を占めていないことは周知の事実である。

図表3.png

しかし、CIBCウーマン・イン・リーダーシップ債券は他にない視点を持っている。この証券は、女性の登用に関し独自の基準を設け、その基準を満たす企業へのローンだけを組み入れた証券化商品となっている。具体的には、下の3つの項目のうち1つを満たしていれば組み入れの要件を満たしたと見なされる。

図表4.png

起業を通じた女性のエンパワーメント: Etsy 

ハンドメイドの作品やビンテージ物、独自の工場生産など、ユニークでクリエイティブな商品を扱うグローバルな電子商取引サイトであるEtsyは、一般的に女性が少ない職種であっても実際に女性を積極的に起用している企業だ。

図表5.png

女性がオーナーである企業の成長率は全企業の平均よりも高いことをデータは示している。そのため、今後はさらに多くの企業がEtsyに倣う形で女性の起用を進めると予想される。

図表6.png

女性の少ない分野で活躍: ABのクオンツ・アナリスト   

エイミー・ヤンの仕事は、計量分析を担うクオンツ・アナリストとして膨大な量のデータに目を配り、ポートフォリオのパフォーマンスに影響を与えうるリスクや他の要因へのエクスポージャーを、運用チームに示すことである。

ヤンはABで最も若いクオンツアナリストの一人で、同じような役割を担っている数少ない女性の一人でもある。金融サービス業界に女性のクオンツ・アナリストが何人いるかを示す信頼できるデータはないが、実感としては少数にとどまっているようだ。ABはジェンダーのダイバーシティ 推進に真摯に取り組んでおり、2018年に新規採用した従業員も42%を女性が占めているが、それでもクオンツ分野では男性の数が女性を上回っている(しかしながら、ABはこの分野でも積極的に男女のバランスを取ろうと努めていることには言及しておきたい)。

ヤンのキャリアに関するストーリーは、クオンツ分野でより多くの女性が採用される道筋を示唆している。

ステップ 1: 早い時期から数多くの挑戦を

米国で2015年に授与された STEM(科学・技術・工学・数学)分野の学士号や修士・博士号等の学位の半分程度は女性だったが、数学、コンピュータ・サイエンス、物理学など「ハード・サイエンス」分野では、クオンツ分析と同様に女性の比率が著しく低くなっている。

図表7.png
図表8.png

ヤンの経験は、女性が科学や数学の分野に従事する上で、成功への確信が大きな役割を果たしうることを物語っている。ヤンは小学生時代に計算が苦手だったため、母親が家でも多くの課題を与えた。そうした努力を通じて自信がつき、彼女は数学が大好きになった。コロンビア大学で工学を専攻していた際はプログラミングの授業が頭痛の種だったが、その苦労によってさらに強く成功を目指すことになった。

「あきらめるなんてあり得なかった」彼女はこう語っている。

ステップ 2: 自らを励ます

職場で昇進する上でも自信がカギとなる。ヤンはキャリアについて議論するため、社内で目標とする人物を探し、豊富な経験を持っている人たちにアドバイスや支援を求めるようにしている。そして、決して楽ではない新たな分野への挑戦であることを理解した上で、現在のクオンツ・アナリストとしてのポジションに応募し、社内異動した。

ヤンは「私たち女性は時々、仕事に応募する前に十分に準備ができていなければならないと考えるが、男性はもっと積極的にリスクを取り 、仕事に必要な知識はその仕事をしながら学べると考えているように思う」と言う。

ヤンが経験豊富な同僚から積極的に学ぼうとしていることは、自分の能力を必要以上に低く評価しているという意味ではない。彼女は自分が新たなデータソースを見つけ出し、それらが意味することをかみくだいて説明するといった重要なスキルを提供できることを知っている。

ステップ 3: 支え合う企業文化を創り出す

ヤンが役員レベルのAB社員を気軽にコーヒーに誘ったり、20年以上の経験を持つベテランがたくさんいるオフィスで自分の考えを述べたりできる背景には、チームワークを重視するABのオープンな文化がある。

彼女は「ミーティングで私が発言するのを、誰かが迷惑に思っていると感じたことは一度もない」と語る。「彼らは私のアイデアがベストなものでなくても、私が本当に気持ちよくアイデアを出せる雰囲気を作ってくれた。」

ヤンは自分の仕事が大好きで、仕事をしているときには性別をあまり意識しないと話す。それでも、彼女はクオンツの世界にもっと女性が増えてほしいと考えている。彼女のような成功例こそが、次の世代の女性たちが活躍するために必要な刺激となるのかもしれない。

 

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
オリジナルの英語版はこちら

本文中の見解はリサーチ、投資助言、売買推奨ではなく、必ずしもアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)ポートフォリオ運用チームの見解とは限りません。本文中で言及した資産クラスに関する過去の実績や分析は将来の成果等を示唆・保証するものではありません。

当資料は、2019年3月8日現在の情報を基にアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーが作成したものをアライアンス・バーンスタイン株式会社が翻訳・編集した資料であり、いかなる場合も当資料に記載されている情報は、投資助言としてみなされません。当資料は信用できると判断した情報をもとに作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。また当資料の記載内容、データ等は作成時点のものであり、今後予告なしに変更することがあります。当資料で使用している指数等に係る著作権等の知的財産権、その他一切の権利は、当該指数等の開発元または公表元に帰属します。当資料中の個別の銘柄・企業については、あくまで説明のための例示であり、いかなる個別銘柄の売買等を推奨するものではありません。アライアンス・バーンスタインおよびABはアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーとその傘下の関連会社を含みます。アライアンス・バーンスタイン株式会社は、ABの日本拠点です。

当資料についてのご意見、コメント、お問い合せ等はjpmarcom@editalliancebernsteinまでお寄せください。

アライアンス・バーンスタインの運用サービス

アライアンス・バーンスタイン株式会社

金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第303号
https://www.alliancebernstein.co.jp/

加入協会
一般社団法人投資信託協会
一般社団法人日本投資顧問業協会
日本証券業協会
一般社団法人第二種金融商品取引業協会

当資料についての重要情報

当資料は、投資判断のご参考となる情報提供を目的としており勧誘を目的としたものではありません。特定の投資信託の取得をご希望の場合には、販売会社において投資信託説明書(交付目論見書)をお渡ししますので、必ず詳細をご確認のうえ、投資に関する最終決定はご自身で判断なさるようお願いします。以下の内容は、投資信託をお申込みされる際に、投資家の皆様に、ご確認いただきたい事項としてお知らせするものです。

投資信託のリスクについて

アライアンス・バーンスタイン株式会社の設定・運用する投資信託は、株式・債券等の値動きのある金融商品等に投資します(外貨建資産には為替変動リスクもあります。)ので、基準価額は変動し、投資元本を割り込むことがあります。したがって、元金が保証されているものではありません。投資信託の運用による損益は、全て投資者の皆様に帰属します。投資信託は預貯金と異なります。リスクの要因については、各投資信託が投資する金融商品等により異なりますので、お申込みにあたっては、各投資信託の投資信託説明書(交付目論見書)、契約締結前交付書面等をご覧ください。

お客様にご負担いただく費用

投資信託のご購入時や運用期間中には以下の費用がかかります

  • 申込時に直接ご負担いただく費用…申込手数料 上限3.3%(税抜3.0%)です。
  • 換金時に直接ご負担いただく費用…信託財産留保金 上限0.5%です。
  • 保有期間に間接的にご負担いただく費用…信託報酬 上限2.068%(税抜1.880%)です。

その他費用:上記以外に保有期間に応じてご負担いただく費用があります。投資信託説明書(交付目論見書)、契約締結前交付書面等でご確認ください。

上記に記載しているリスクや費用項目につきましては、一般的な投資信託を想定しております。費用の料率につきましては、アライアンス・バーンスタイン株式会社が運用する全ての投資信託のうち、徴収するそれぞれの費用における最高の料率を記載しております。

ご注意

アライアンス・バーンスタイン株式会社の運用戦略や商品は、値動きのある金融商品等を投資対象として運用を行いますので、運用ポートフォリオの運用実績は、組入れられた金融商品等の値動きの変化による影響を受けます。また、金融商品取引業者等と取引を行うため、その業務または財産の状況の変化による影響も受けます。デリバティブ取引を行う場合は、これらの影響により保証金を超過する損失が発生する可能性があります。資産の価値の減少を含むリスクはお客様に帰属します。したがって、元金および利回りのいずれも保証されているものではありません。運用戦略や商品によって投資対象資産の種類や投資制限、取引市場、投資対象国等が異なることから、リスクの内容や性質が異なります。また、ご投資に伴う運用報酬や保有期間中に間接的にご負担いただく費用、その他費用等及びその合計額も異なりますので、その金額をあらかじめ表示することができません。上記の個別の銘柄・企業については、あくまで説明のための例示であり、いかなる個別銘柄の売買等を推奨するものではありません。