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【AB IQ】 株式投資におけるビッグデータの活用

                                                                                                                                                                     

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ネルソン・ユー
アライアンス・バーンスタイン・エル・ピー
株式クオンツ・リサーチ 責任者 兼 ブレンド戦略 責任者
 
 
 
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アライアンス・バーンスタイン・エル・ピー
株式部門 共同責任者
 

2019年8月20日

 
 
航空券価格、自動車販売台数、企業決算報告書の山。これらに共通するものは何だろうか? それは、ビッグデータ技術を応用した分析でアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)が成果を上げ始めた例であるということだ。ABでは、人間のアナリストだけでは解決できない株式投資の課題に、先進的なデータサイエンスを用いて取り組んでいる。
 
ビッグデータの活用は、資産運用業界にとって最先端の領域である。しかし、機械学習や人工知能などの分析ツールを、まったく性質の異なるさまざまなテーマの投資リサーチに適用することは、大きな困難がともなう。膨大なデータを投資に役立つ形に変換することは単純な作業ではない。データサイエンスをリサーチや運用のプロセスにうまく組み込むためには、適切な企業文化や組織を育む必要があり、また問題意識を適切な「質問」に落とし込む必要がある。
 

ビッグデータはなぜそれほど重要なのか?  

今日、投資家は膨大な量のデータを手に入れることができる。例えば、8,000社を超える米国上場企業が、法定四半期報告書(10-Q)や年次報告書(10-K)を、それぞれ何百ページもの長さで作成している。ABでは、過去26年間に提出されたこれらの報告書のうち、675,000件をデータとして取り込んだ。世界全体では、年間2万回に及ぶ業績発表説明会が英語で行われており、詳細な議事録が残されている。そして、英語以外の文書を含めると、データは天文学的な量に膨れ上がる。
 
理論的には、ポートフォリオ・マネジャーは、企業が直面するリスクと投資機会を完全に把握するために、何千ページにも及ぶデータを入念に調べる受託者責任を負っている。しかし、現実的には人間の力でそれほど多くの情報を効率的に解析することは不可能である。米国市場に限っても、すべての報告書と説明会議事録を読むためには、それだけで少なくとも30人のアナリストが必要となる。資産運用会社は、これが優れた投資成果につながる費用対効果の高い方法であるかどうか、自問せざるを得ない。
 
データサイエンスは、桁違いな量の情報に機械学習や人工知能を適用することでソリューションを提供する。しかし、もっとも高度なソフトウェアでさえ、データをファンダメンタル・リサーチに基づく実用的な投資判断に変換するためには、人間の指示と専門知識を必要とする。
 
例えば、自動車販売台数のサイクルを調査するアナリストを考えてみよう。今日では、自動車販売に関して入手可能な情報は多種多様かつ膨大である。米国在住の消費者は、購入プロセスの初期段階ではまずソーシャル・メディア上のマーケティング・キャンペーンからの情報を消費しながら、Caranddriver.comやEdmunds.comのようなウェブサイトでリサーチを行うだろう。最終的な決断に近付くにつれて、価格比較サイトが使われ、そこではアンケート、アプリ、買い物かごなどによってより多くのデータが生まれる。購入が完了したら、電子メールのレシートが生成される。購入後には、オンライン・レビューを通じた顧客満足度データも得られる。
 
これらすべてのデータをまとめると、アナリストは従来入手できなかった情報を得ることになる。しかし、投資に有用な知見を生み出すためには、アナリストはデータが何を意味するのかを問わなければならない。何人の顧客が商品について調べるために、実際に店に来ているのか? どのような価格競争が繰り広げられているのか? どのような商品特性が人気を呼んでいるのか? こうした問いかけをしてデータを見る必要がある。
 
これらの質問は、可能な限り具体的なものでなければならない。より良い質問は、より良い結果をもたらし、確信度の高いポートフォリオの構築につながる知見を生み出す。
 

スキルを統合して知見を生み出す       

そのような知見を生み出すには、幅広い運用スキルを組み合わせる必要がある。大規模なデータセットを高速処理し、複雑な統計モデルや経済モデルと組み合わせなければならない。クオンツ分析に基づく運用を行うマネジャーは、データサイエンスに慣れているように見えるかもしれないが、情報を理解するためのスキルを必ず持っているとは限らない。
 
ファンダメンタル・アナリストは、問題意識を反映した適切な質問を投げかけて答えを求めることで、膨大なデータから有益な情報を抽出することができるが、それを効率的に処理するための技術的なスキルは持ち合わせていない可能性がある。以下のケース・スタディでは、データサイエンスをファンダメンタル分析及びクオンツ分析と組み合わせたハイブリッド型アプローチが、運用チームによるデータ活用の取り組みにどのように役立つかを例示する。
 
ケース・スタディ1:
ビッグデータを用いた航空会社の稼働率リサーチ
 
質問:航空会社による増便は価格決定力にどのような影響を与え、また、ポートフォリオで保有する航空会社銘柄にどのような影響を与えるか?
 
旅行者なら誰でも知っているように、航空運賃の決定は非常に複雑でわかりにくい。各路線の運賃は、市場原理に基き、座席の供給と旅客の需要の変化により、日々大きく変動することがある。このため、運輸セクターのアナリストが航空会社の稼働率、価格設定、そして究極的には収益力について結論を出すことは非常に難しい作業を伴う。
 
そこで、ABでは2018年に、航空会社による新たな座席の供給が価格決定力にどのような影響を与えるかをより詳しく理解するため、ビッグデータの活用に着手した。このプロジェクトによって、データから知見を得るためには、考え抜かれたファンダメンタル・リサーチの技術を用いることがいかに重要か改めて分かった。
 
このリサーチで取り組む問題はシンプルで、増便や大型機の導入による座席数の増加が価格決定力にどのような影響を与えるか、というものである。この問題を解くために、ABではまず航空会社のウェブサイトから何百万もの航空券価格のデータを収集した。しかし、構造化されていない生のデータは、まず、ABのデータサイエンティスト・チームによって統合・整理されなければならなかった。
 
まずまずのスタートとなったが、ファンダメンタル・アナリストは満足しない。航空券価格のデータだけでは、問題の答えにはならないからだ。必要なのは、飛行機の座席数と、実際に各便でどの程度の座席が埋まっていたかということであった(図表1)。そのため、航空会社の輸送能力に関する運輸省のデータセットに目を向けた。
 
飛行機の稼働率を求める.png
 
 
ABのデータサイエンティスト・チームは、100万行以上の運輸省のデータを6カ月遅行ベースで航空会社の報告に基づく各便の旅客数データを重ね合わせた。そして、アナリストは、データ・チームと協力して、26万4千路線の四半期ごとの運賃と輸送能力のデータをマッチングし、さらに各航空会社ごとのデータを足し合わせ、競争の影響に焦点を当てるためにデータセットから独占市場を取り除いた。これにより、路線数は5万4千に減少した。
 
このリサーチでは、2つの明白な結論が得られた。第1に、航空会社は、旅客収益を座席有効マイルで割った数値(PRASMと呼ばれる、航空業界で使用される路線ごとの利益率を測る指標)の伸び率が平均よりも高い路線で座席数を増やすことが多い。第2に、各路線における各社合計の座席数増加ペースは1年以内に鈍化する傾向があり、これはPRASM回復のきっかけとなる。
 
これらの結論は、単なる机上の空論ではない。運賃の決定にはたらく要因をよりよく理解することで、保有銘柄の潜在的な収益力をより明確に把握できるようになったため、その銘柄に対する確信度が高まり、ポジションを積み増すことになった。さらに、このリサーチによって、航空運賃をリアルタイムでより正確にモニターすることが可能となったほか、経営陣に対するエンゲージメント活動?においても、これらのデータを用いて将来の路線拡大の計画について議論を行っている。
 
ケース・スタディ2:
新型車に対する消費者の反応を測定
 
質問:スバルの利益回復の鍵となる新型車の成否は予測できるか?
 
自動車セクターのアナリストにとって、ブランドの人気の動向を正確に知ることはなかなか難しい。2018年、ABでは日本のスバルが新発売したモデルやモデルチェンジを行った車が、好調な売れ行きとなって営業利益率の回復をもたらすかどうかを探るためのリサーチを行った。
 
この問いに答えるために、9つの自動車関連の消費者向けウェブサイトからスポーツ用多目的車(SUV)に関する5万件を超える過去のレビューを集めた。各モデルに対する総合レーティングを調べるとともに、レビューの文章に自然言語処理(NLP)を適用することで主要なトピックを抽出し、それを販売台数に照らし合わせてセンチメント・スコアを作成した(図表2)。ファンダメンタル・アナリストとデータ・チームの協力作業の下、四半期ごとの販売台数の変化を予測する上で重要なトピックや車の特徴を導き出した。
 
これにより、テクノロジー、走行性能、スタイルなどに関するいくつかの評価傾向が、新型車の成功の重要な前兆であることが分かった。また、リアルタイムのセンチメントに注目した結果、先般スバルの他車種で品質に対する懸念が浮上した際には、その問題に関する報道が始まると同時に新型車に対する消費者センチメントも悪化していたことがわかった。これを受け、スバルの経営陣と話し合いを始め、問題をさらに調査することになった。
 
より広い意味では、この分析によって、新型車に対する消費者センチメントを把握することができるようになった。これは、当該企業からの情報に依存せず、より正確な予測を行うことに役立つ。また、独自に生み出された知見は、経営陣と製品や財務状況についてより深い話し合いをする機会をもたらす。 
 
消費者センチメントを測るデータ分析ツールの作成.png
 

人間の関与も重要  

上記のケースから、資産運用会社がビッグデータを有効に活用するには、組織の構成や文化を適合させることが必要になることがわかる。データ分析機能は、運用チームや各セクターのアナリストと密接に統合されなければならない。また、少なからぬコストが発生するため、ビッグデータ分析が最大のインパクトを与えるよう、適切なプロジェクトを選択することも大切である。
 
これらの課題に適切に対処する資産運用会社は、データサイエンスの利点を活用して顧客のポートフォリオのリターンを向上させられる可能性がより高いと言える。簡単な答えはないが、はっきりしていることがひとつある。最も洗練された人工知能システムを応用しても、ビッグデータを投資における有用な知見に変換するには、株式リサーチのプロセスに人間も関与することが最良の方法であるということだ。
 
 

 
当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。オリジナルの英語版はこちら。

https://www.alliancebernstein.com/library/turning-big-data-into-big-investment-insights.htm

 

本文中の見解はリサーチ、投資助言、売買推奨ではなく、必ずしもABポートフォリオ運用チームの見解とは限りません。本文中で言及した資産クラスの過去のパフォーマンスは将来の運用成果等を示唆・保証するものではありません。  

 
当資料は、2019年6月20日現在の情報を基にアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーが作成したものをアライアンス・バーンスタイン株式会社が翻訳した資料であり、いかなる場合も当資料に記載されている情報は、投資助言としてみなされません。当資料は信用できると判断した情報をもとに作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。また当資料の記載内容、データ等は作成時点のものであり、今後予告なしに変更することがあります。当資料で使用している指数等に係る著作権等の知的財産権、その他一切の権利は、当該指数等の開発元または公表元に帰属します。当資料中の個別の銘柄・企業については、あくまで説明のための例示であり、いかなる個別銘柄の売買等を推奨するものではありません。アライアンス・バーンスタインおよびABはアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーとその傘下の関連会社を含みます。アライアンス・バーンスタイン株式会社は、ABの日本拠点です。
 
 

 

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