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【AB IQ】 債券投資に機械学習がもたらすもの

                                                                                                                                                                     

 
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バーント・ウーベン
アライアンス・バーンスタイン・エル・ピー
債券クオンツ・リサーチ・ディレクター
 
 
 
ジェフ・スコグランド   skoglund_jeff_WA2.jpg
アライアンス・バーンスタイン・エル・ピー
債券部門 最高執行責任者
 
 
 
ガーション・ディステンフェルド   distenfeld_gershon_WA2.jpg
アライアンス・バーンスタイン・エル・ピー
債券部門共同ヘッド
クレジット運用 ディレクター
 
 
 

 

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2019年8月23日

 
 
ある大学院生のグループがウォーレン・バフェット氏に、投資の世界で働くためにはどのような準備をすればいいか尋ねた。すると、同氏は企業が米証券取引委員会(SEC)に提出する報告書の束を持ち上げ、こう答えた。「こういう資料を毎日500ページ読むことだ。知識というのはそうして身につくものだ。そしてそれは複利のように積み上がっていく。」
 
これはよく知られた逸話だが、投資に関する根源的な事実を示唆している。SECに提出される10-K(年次ベース)や10-Q(四半期ベース)と呼ばれる業績報告書は、企業の財務状況を知るための重要な情報源であり、そこには売上高、リスク、将来に関する経営陣の見通しなどが盛り込まれている。
 
だが大半の投資家にとって、毎日発表される膨大な量のデータをじっくり調べるには時間が足りない。次々と舞い込む10-K(年間8,000件)や10-Q(年間3万2,000件)、決算説明会の資料(年間2万件)などの資料の全てに目を通そうとするならば、資産運用会社はそれだけで優に30人のリサーチ・アナリストを雇用する必要があるだろう。しかも、最も優秀なアナリストですら、そうした資料に含まれる重要な情報を時おり見逃してしまうかもしれない。
 
人工知能(AI)や機械学習はこうした状況を変えつつある。様々な投資の問題に取り組み、潜在的なリターンを押し上げるための新たな方法を資産運用業界にもたらしている。例えば、人間の言語を理解したり解釈するのを助けるAIの一種である自然言語処理(NLP)システムを備えたコンピューターは、数秒のうちに何十万もの報告書を点検し、大量の言葉や数字の中から即座にパターンを抽出することができる。投資家にとっては、それによりリターンを予測することが容易になる。
 
 

複雑な問題を切り分ける  

債券投資の運用マネジャーは、株式投資の運用マネジャーと比べ、リサーチのプロセスにAIを取り入れることに関し若干後れを取っている。その主因は、デジタル化しなければならないデータが多いためである。アップルの株式には銘柄コードはひとつしかないが、同社の社債には多くの銘柄が存在し、償還期限やクーポン、コベナンツ(財務制限条項)、返済優先順位などがそれぞれ異なっている。
 
ABの債券チームはこうした複雑な問題を2段階に分けて解決しようと取り組んでいる。まずは、各債券に関する流動性データ(どの売り手や買い手が、どの価格で、どのような量の注文に応じられるのか)やABのクレジット・アナリストによる評価をデジタル化するとともに一元管理し、債券チームの誰もがすぐにそうした情報にアクセスできる環境を整えた。次に、AIに駆動された「バーチャル・アシスタント」もそのデータにアクセスできるようにすることで、数秒のうちに投資対象候補のリストを作成できるようにした。
 
このような取り組みを進めているのはABだけではない。機械学習やNLP、予測分析等は、膨大で複雑なデータセットをより意味ある情報に変換することが可能であるため、債券運用者の間では、リサーチや投資プロセスにそうした技術を取り入れることの価値への認識が高まっている。
 
企業の業績報告書は、そのようなデータの好例である。企業による情報発信や行動、あるいはそれらの情報から見える事業の健全性は、その企業の全般的なクレジットの質を評価する上で多くの材料を提供してくれる。そのため、そうしたシグナルは社債のリターンを予測する上で重要な意味を持つ。長期的には、さらに多くの債券運用者がそうした手法に工夫を凝らし、クレジット分析に取り入れると予想される。
 
 

企業の話法:行間を読み取る       

NLPはなぜ効果的なのだろうか? それは、企業が人間によって運営されており、人間は習慣で動く生き物だからである。大半の企業は過去の四半期報告書あるいは年次報告書をテンプレートとして使用し、それを更新することで最新の報告書を作成している。多くの項目に関する説明や表、グラフなどがぎっしり詰め込まれたそのような長大な文書も、コンピュータを用いれば高速で読み取ることが可能で、人間の目であれば見落とすかもしれない重要なシグナルを検知することができる。
 
NLPを用いたコンピューターは、10-K資料の語調、すなわち企業のセンチメントを評価することができる。経営陣は10-Kの財務に関する項目の中で、「損失」「減損」「逆境」などネガティブな言葉を多く使っていないだろうか? そうだとすれば、その企業は何らかのビジネス上の問題を抱えている可能性がある。言葉の選び方や語調を見れば、企業のカルチャーや経営陣のリーダーシップ・スタイルすら垣間見ることができる。
 
言葉の複雑さも重要である。経営陣による業況説明の一部が長くなっていたり、複雑になっていたりしないだろうか? 文章に占める数字の比率が高まっていないだろうか? そうしたことがあった場合、経営陣は根本的な問題から投資家の関心をそらそうとしている可能性がある。また、全般的なリスクの見通しはどうだろうか?経営陣はそれを多くの言葉では語らないかもしれないが、その項目に大幅な変更があれば、それはその企業が全般的なリスクが高まると予想していることを示唆している可能性がある。
 
そうしたシグナルは微小なものであることも多い。企業の10-K資料に含まれるネガティブな言葉が10%増加していたとしても、人間のアナリストはそれに気づかないかもしれない。担当セクターにカバーしなければならない企業が20~30社もあれば、なおのこと難しくなる。しかし、コンピューターはそうしたシグナルを検知することができるし、他のデータと合成して総合的なセンチメント・シグナルを生成することもできる。さらに、その予測能力を検証するために過去何年にもわたるSEC提出資料と照合することもできる。
 
幅広いセクターや業界にまたがるテーマに関するリスク・シグナルを抽出するためにNLPを活用した機械学習を用いることもできる。製造業、農産物、テクノロジー、銀行など、多くの業界にわたる企業の業績報告書に「貿易」や「関税」という言葉がリスク要因として登場し始めたならば、それは重要な意味を持ち、今後の動向を示唆しているかもしれない。ここでもまた、数秒のうちに何千もの資料を点検できるコンピューターは、それぞれ特定のセクターだけを担当しているアナリストよりも、迅速にそうした変化を検知することができる。
 
 

人間 + 機械  

もちろん、人間の言葉は本質的に複雑なものであり、ひとつの言葉が複数の意味を持つこともある。例えば、「自社株買い」という言葉は株式アナリストにとってはポジティブだが、債券チームにとってはネガティブな意味合いを持つ。したがって、それぞれの分野に特化した「辞書」を使うことが必要であり、ABでも債券アナリスト向けにクレジットに特化した辞書を作成している。
 
これは何を物語っているのだろうか? AIやビッグデータの時代となった現在でも、資産運用会社は生身のアナリストなしに仕事はできないということだ。コンピューターは膨大な量のデータを目にもとまらぬ速さで処理することには長けているが、そこから投資に結びつく判断を導き出し、ハイレベルの戦略を策定するには人間が必要である。定量分析とファンダメンタル分析はお互いに補完し合うもので、リターン予測の正確性を高めるためには両者を組み合わせるのが最善である。しかしそれを成功させるには、両者がお互いに理解できる言葉で話すことができなくてはならない。つまり、定量モデルが示唆することは、すべて直感的にも意味をなすものでなくてはならない。
 
例えば、「企業センチメントの変化は相対的なリターンの予測材料になりそうだ」という見方を受け入れるのは難しいことではない。しかし、「10-K資料にviceという言葉が頻出していることがパフォーマンスの低迷と関連がある」とNLPに基づくモデルが示唆した場合は、本当にそうであるのか警戒し、元データを精査する必要があるだろう。企業の文書では、「vice」という言葉はドラッグやギャンブル、売春を指すネガティブな言葉ではなく、「バイス・プレジデント」を指しているケースが多いからだ。
 
定量データ主導のクオンツ戦略には、常にサイエンスとアートが少し混ざり合っていると考えると良いだろう。機械学習などの定量ツールは重要な知見を提供してくれるかもしれないが、そうした知見を検証し役立つものにするには、ファンダメンタル分析に基づく判断が必要となる。
 
 

情報は多い方がいい  

資産運用マネジャーの目標は、できるだけ多くのソースから情報を引き出し、それを競合相手よりも速く有用な知見へと合成することであろう。
 
例えば、10-Kに関して言えば、まずは定量分析のアナリストが、総合的なセンチメントの変化や文章に占める数字の比率の変化など、様々なNLP上のサブ・シグナルの有効性をランク付けし、過去データを使ってそれらの予測能力を評価することから始めるだろう。
 
次のステップは、最も高い予測能力を示したサブ・シグナルを組み合わせ、ひとつの包括的な10-Kシグナルに統合することであろう。その際には、ハイイールド債、投資適格社債、S&P 500指数など、特定の投資ユニバースを考慮しなければならない。例えば、総合的なセンチメントなど、サブ・シグナルの一部は、ある市場について予測能力が高くても、別の市場ではそれほどでもない可能性があるからだ。
 
そして、究極的には、ファンダメンタル・アナリストやポートフォリオ・マネジャーが、有効性の高いシグナルを他の予測的シグナルと組み合わせて検証し、すべての情報をポートフォリオ構築に活用することになるだろう。プロセスが機能していれば、多種多様な社債を区別し、高スコアの銘柄へのエクスポージャーを拡大する一方、低スコア銘柄を避ける方法となる。
 
これは重要なことである。長期にわたり一貫してアウトパフォームしている債券運用マネジャーは、概してタイミングを計った売買やデュレーションの管理で高いリターンを獲得しているわけではないからだ。彼らは超過収益を創出してきた実績のある要因へのエクスポージャーを最大限に引き上げ、そうではない要因へのエクスポージャーを回避することによって優れたパフォーマンスを達成している。
 
債券運用マネジャーにとっては、目標が以前と変わったわけではない。引き続き、目標は超過収益の創出につながる実行可能な知見を得ることだ。機械学習やビッグデータの時代になって変化したのは、その目標を達成する方法である。
 
 
 

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。オリジナルの英語版はこちら。

https://www.alliancebernstein.com/library/how-machine-learning-can-help-bond-investors.htm

 

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当資料は、2019年6月19日現在の情報を基にアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーが作成したものをアライアンス・バーンスタイン株式会社が翻訳した資料であり、いかなる場合も当資料に記載されている情報は、投資助言としてみなされません。当資料は信用できると判断した情報をもとに作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。また当資料の記載内容、データ等は作成時点のものであり、今後予告なしに変更することがあります。当資料で使用している指数等に係る著作権等の知的財産権、その他一切の権利は、当該指数等の開発元または公表元に帰属します。当資料中の個別の銘柄・企業については、あくまで説明のための例示であり、いかなる個別銘柄の売買等を推奨するものではありません。アライアンス・バーンスタインおよびABはアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーとその傘下の関連会社を含みます。アライアンス・バーンスタイン株式会社は、ABの日本拠点です。
 
 

 

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