債券の利回りが再び低下

米国では当初「予防的利下げ」と言われていたものが利下げサイクルに発展しつつあり、欧州では「日本化」、つまり民間部門の資金余剰の慢性化やマイナス金利の長期化が懸念され始めた。図表1 は、主要債券指数におけるマイナス金利の債券の構成割合を示すものだが、ヘッジ外債においてはマイナス金利が当たり前になりつつあることがわかる。本邦投資家は、円債投資のみならず、外債投資でも低金利環境への本格的な対処が必要になっている。アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)では、それには主な注意点が3つあると見ている。

主要指数におけるマイナス利回り銘柄の割合.png

注意点1: ロールダウン効果まで総動員しているか

債券は決まったクーポンを定期的に受け取ることから、どの期間も収益は一定と思われがちだが、実は債券の期間収益は一定ではない。通常の環境であれば、債券の発行直後の期間収益はクーポンを上回り、そして償還日が近くなると期間収益はクーポンを下回るようになる。これは、債券の利回りが時間の経過により徐々に下がっていくことでキャピタル収益が発生するためで、「ロールダウン効果」として知られている(図表2)。為替ヘッジ・コストや運用資金の調達コストを考慮すると、低金利環境では保有債券の収益が時間の経過によりマイナス利回りに陥る可能性が通常環境時よりも高い。言い換えると、低金利環境では、特にクレジット・リスクを取りにくい投資家の場合、インカム収益だけでは収益源泉が足りなくなっている可能性がある。

足元は米国など一部の国では逆イールド環境になっており、ロールダウン効果が逆に作用するケースがあり、債券の利回りと期間収益の関係は複雑化している。債券運用者はロールダウン効果の享受や、可能な場合は金利見通しに応じたアクティブなイールドカーブ戦略など、キャピタル収益の獲得も企図したポートフォリオを維持する必要がある。

債券の期間収益は一定ではない.png

注意点2: 環境変化への適応余地を残しているか

運用上、特定の収益や負債の目標がある場合、もしくは大規模な債券ポートフォリオを運営する場合、広く利用されるのが持ち切り運用だ。この運用手法は、目標利回りを満たすポートフォリオを構築したうえで、運用期間中の売買コストを最小化することで利回りを収益として実現する。運用期間を通じて当初想定した環境が続くなら、変化に対応するためにコストをかける必要がないという前提だ。

低金利環境下の債券持ち切り運用では、2つの罠に注意が必要だ。1つは、為替ヘッジのコストだけは運用開始と同時に固定することが困難な点だ。特に過去2年ほどは、運用期間中に為替ヘッジ・コストが上昇したため、途中で前提を修正し戦略を見直すという意思決定を不本意なタイミングで余儀なくされるリスクが顕在化した。もう1点は、持ちきり運用では当初の利回り水準が見えやすいだけに、設計時点で過度にクレジット・リスクを取ってしまう罠に陥る可能性 があることだ。複数年にわたってのクレジット・リスクをめぐる信用環境や市場流動性を正確に見通すことは困難であるがゆえに、クレジット・リスクの高い銘柄の年限構成には当初から注意を払う必要がある。また、運用会社側も適切な情報開示や分析能力を顧客に提供し環境変化への注意を喚起する必要がある。

注意点3: リスクは本当に分散しているか

国債の金利と社債のスプレッドは逆に動く傾向があることはよく知られている。例えば景気見通しが鈍化すれば国債は買われ金利が低下するが、一方、企業業績見通しが悪化するため社債には売り圧力がかかる。同じ原因が国債と社債では逆に作用するわけだ。

しかし、低金利環境下では必ずしもこのリスク分散がワークするとは限らない。注意点2で述べた点に関連するが、金利が低いがために投資適格社債を国債の代替として購入する動きが強まっているからだ。図表3は、米ドル建ての国債、投資適格社債、ハイイールド社債の前年末比の金利変化を表示しているが、環境によって投資適格社債は国債に似る局面もあれば、逆にハイイールド社債に似る局面もあることがわかる。

低金利環境では、運用規模や、ポジション入れ替えの柔軟度、クレジット・リスク許容度などの様々な制約に加え、どの債券セクターのクレジット・リスクを取るかを慎重に検討する必要がありそうだ。

過去10年で3度は投資適格社債とハイイールド債の動きが逆に.png

低金利環境を生き延びるために

ABでは、上記の論点を組み合わせた債券運用ソリューションについて多角的に研究している。たとえば、順イールド環境の債券ユニバースに着目したアクティブ運用戦略や、金利リスクとクレジット・リスクの組み合わせを調整してリスク分散を最大化しつつインカム収益確保を目指すアクティブ運用戦略などがそれにあたる。

低金利・低ボラティリティが長期化していようとも、安全資産としての位置づけや、インカムの確保など、様々な理由で投資家は債券投資を継続せざるを得ない。マイナス金利の広がりによって、債券運用の収益源としてのインカム収益の絶対量が低下した。しかし一方では、金利の下限がゼロではなくなったことで、債券の値動きに着目したキャピタル収益獲得の機会は逆に拡がったとも考えられる。本稿で述べた3つのポイントを押さえたアクティブ運用の活用は、この厳しい運用環境を乗り越えて行く切り口のひとつになるのではないだろうか。

 

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