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米国不動産の投資機会⑤: 銀行規制の強化に伴い投資機会が拡大しているトランジション・ローン

                                                                                                                                                                     

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臼井 はるな
アライアンス・バーンスタイン株式会社
運用戦略部 シニア・インベストメント・ストラテジスト





 

2019年12月2日

 
 
これまで4回にわたり、「米国不動産の投資機会」と題し、米国不動産の投資魅力を検証すると共に、リート(優先リート普通リート)や証券化商品など様々な投資手法について紹介してきた。最終回となる本稿では、トランジション・ローンと呼ばれる、商業用不動産を担保とする短期ローンについて紹介する。量的緩和を背景に、クレジット市場の大部分でスプレッドのタイト化が進んでいる中、トランジション・ローンは旺盛な資金ニーズに支えられて魅力的な投資機会を生み出している。
 

トランジション・ローンとは

まず「トランジション」という概念について説明しておきたい。米国の商業用不動産(ホテルやショッピング・モール、オフィス、賃貸用マンションなど)は、定期的にテナントの入れ替えや大規模な改装を行うことにより、賃料収入の上昇及びそれを通じた物件価値の向上を図ることが多い。こうしたテナントの入れ替えや改装といった、賃料収入に一時的な変化が生じる過程を不動産投資の世界ではトランジションと呼ぶことが多く、本稿でもそれを踏襲する。
 
あるホテルの例を見てみよう。米国の大規模地方都市にあるこのホテルは、設備の老朽化などを背景に室料収入が伸び悩み、売りに出された。割安感に注目してこの物件を取得した不動産投資ファンドは、立地や他のホテルとの競合状況、都市の成長性に鑑みて、改装等を通じ物件価値の向上を図る余地があると考え、全面的なリニューアルに踏み切った。こうした改装期間中はホテルの営業ができず、賃料収入が一時的にストップするため、オーナーである不動産ファンドは改装及び設備維持にかかる費用をトランジション・ローン、すなわち借り入れによって調達した。3年程度かけて改装を終了、ホテルが営業再開し、料金及び稼働率の向上によって物件価値が上昇した時点で、オーナーはこの物件を売却し、キャピタル・ゲインを獲得すると共にトランジション・ローンを全額返済した。
 
こうした改装による賃料及び物件価値の向上ニーズはホテルにとどまらない。オフィスであれば、旧来型の個室オフィスを多く備えたスタイルから壁を取り払ったオープン・スタイルへの改装、賃貸用マンションであれば室内設備の刷新のみならず専有・共有部分のレイアウト変更を伴う改装など、周辺環境の変化に応じて、賃料収入ひいては物件価値の向上につながる様々なアプローチが考えられる。
 
トランジション・ローンは、こうしたトランジション期にある商業用不動産向けに融資するノンリコース・ローン(融資対象の物件以外に債務の返済義務が及ばないローン)を指す。改装やテナント入れ替え等により賃料キャッシュフローが大きく減少する期間への融資となることから、通常の稼動状態にある不動産へのローンよりもリスクが高く、その分リターンである利回りも高い傾向にある。従来は、主に伝統的な銀行セクターが資金を供給していたが、金融危機以降はバランスシート規制強化を受け、銀行セクターに代わってローン投資ファンド等による供給が増加しつつある。
 

トランジション・ローンの特徴と投資魅力

トランジション・ローンの主な特徴として、①ローン期間が短い、②コベナンツ(財務制限条項)が強い、③利回り水準が魅力的、といった点が挙げられる。以下でこれらの特徴について詳しく述べていきたい。
 
① ローン期間
改装やテナント入れ替え期間を対象としたローンであることから、ローン期間は通常3年から5年程度と短い。トランジションが終了し、賃料キャッシュフローが安定した段階では、より低い金利での調達が可能となるため借り換えインセンティブが発生するためだ。上記のホテルの例のように、早期に売却が決まれば借り換えでなく、売却資金でローンが返済されるケースも見られる。
 
② コベナンツ
トランジションにはどんな優良案件であっても、改装の進行度合いやその後のテナント誘致、賃料収入の回復状況といった不確定要素が常について回る。このため、トランジション・ローンのコベナンツにおいては、これらの現状について貸し手が逐一モニタリングする権利を確保することが一般的である。また、最初からローン全額を融資するのではなく、進行状況に応じて段階的な融資を行うことや、支払い金利分をあらかじめ準備金として借り手に積み立てさせることで利払いリスクを軽減するといった手法も多い。こうした強いコベナンツで貸し手の権利が守られており、かつローン期間中を通じて借り手との接触が可能な点は、トランジション・ローンの大きな特徴のひとつである。
 
③利回り水準
トランジション・ローンの利回り水準は個々の案件によって大きく異なり、かつ、プライベートな貸し手が主であるためしっかりとした統計が存在しないものの、ABが魅力的だと考える投資対象ユニバースでおおむね6%から8%程度(2019年9月末時点)と、同程度の信用力を持つ米国のハイイールド債やレバレッジド・ローンを上回る水準にある。弁済順位が高く、コベナンツも強いにもかかわらず利回り水準がこれらのアセット・クラスを上回るのは、ローン期間中の流動性がない(市場を通じたローンの売買ができない)ためである。裏返せば、トランジション・ローンの投資家は、平均ローン期間である約3年間の流動性を手放すことにより、ハイイールド債やレバレッジド・ローンを上回る利回りを、より強いコベナンツ及び高い弁済順位と共に享受できることとなる(図表)。
 
流動性は低いが、貸し手の権利が強いトランジション・ローン.png
 
広義の米国商業用不動産ローンの市場規模は4兆米ドル、うち約7割は依然として伝統的な銀行セクターによる貸出であるとされる(2017年末時点、出所:米連邦準備制度理事会、NREI)。
 
フローの指標に目を転ずると、毎年、3,000億米ドルから4,000億米ドル相当のローンで償還、再調達ニーズが発生するが、ファンドによる調達額は2017年で約280億米ドル(出所:プレキン)と年間償還額の1割以下にとどまる。特に、銀行セクターにとってリスクウェイトの比較的高いトランジションやさらにリスクの大きいオポチュニスティックと呼ばれるカテゴリでは、高止まりする資金ニーズに対して供給が追いつかない状態が続いている。量的緩和を背景とした資金流入により金利スプレッドのタイト化が進むハイイールド債券やレバレッジド・ローン市場とは対照的だ。利回り改善を模索する投資家にとって、今後とも魅力的な投資機会となる可能性が高いと考えられる。
 
 
 
 
 
当資料は、2019年11月19日現在の情報を基にアライアンス・バーンスタイン株式会社が作成した資料であり、いかなる場合も当資料に記載されている情報は、投資助言としてみなされません。当資料は信用できると判断した情報をもとに作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。また当資料の記載内容、データ等は今後予告なしに変更することがあります。当資料で使用している指数等に係る著作権等の知的財産権、その他一切の権利は、当該指数等の開発元または公表元に帰属します。アライアンス・バーンスタイン及びABはアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーとその傘下の関連会社を含みます。アライアンス・バーンスタイン株式会社は、ABの日本拠点です。
 
 

 

 

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