地政学的な緊張から世界経済の減速まで、今日の投資環境における主なシステミック・リスクは無視することができない。そうしたリスクは2020年に利回りを持続的に低水準あるいはマイナス圏にとどめるほか、ボラティリティを度々押し上げる要因となりそうだ。債券の利回りが歴史的な低水準にある中で、債券市場は投資家に過度のリスクテイクを強いることなく着実なリターンを創出することができるのだろうか。

システミック・リスクに対する評価

ポピュリスト的な政策地政学的な緊張は、多くの面で絡み合いながら拡大している。軍事的対立だけが唯一のリスクではない。米国と中国の貿易戦争は世界の貿易に悪影響を及ぼし、企業の景況感悪化や製造業生産の落ち込みを招いている。メキシコやユーロ圏など貿易の影響を受けやすい国々が最も大きな打撃を受けている一方で、皮肉なことに、中国と米国はさほど大きな影響を受けずに済んでいる。

米中の通商協議は2019年末に合意に向けて前進したが、一部の製造業データはそれ以降安定しているとはいえ、生産の落ち込みを示す水準にある。いずれにせよ、最近の進展は大統領のツイート1つで覆される可能性がある。

2020年の米大統領選挙の結果は大衆迎合(ポピュリズム)的な政策の進展がもたらした市場のボラティリティを解消できるのだろうか? そうとは思えない。例えば、米国の政界では左派、右派ともに保護主義的な貿易に向かう動きを後押しする一方、中道派は依然として懐疑的な見方をしている。しかも、英国の欧州連合(EU)離脱を巡る混乱が示すように、ポピュリズムの台頭は世界的なテーマである(以前の記事『How Will Trade Wars and Populism Play Out?』(英語、動画)ご参照)。トニー・ブレア・インスティチュート・フォア・グローバル・チェンジによると、ポピュリスト的政治リーダーの数は1990年以降、全世界で5倍に増加した。

偶然ではないが、世界経済は困難に直面しており、長期的な低成長局面に入る可能性がある。世界経済が減速すれば、各国はショックに対する脆弱性が一段と高まる恐れがある。

中央銀行は状況の変化に素早く行動しており、2020年はさらなる金融緩和策が講じられる可能性がある。だが、世界の大半で金利がすでにゼロ%あるいはゼロ以下の水準にあるため、金融緩和は効果を発揮しにくくなっている。積極的な財政緩和策も検討されることは当面なさそうだ。

しかし、状況が真っ暗というわけではない。

スティープ化している米国のイールドカーブが示すように、市場は米国経済が景気後退に陥るリスクは後退したと考えている。ABもその見方に同意したい。米国や他の先進国の消費者は支出を続けており、米国の労働市場はとりわけ健全な状態を維持している。

それに加え、中国は2020年の実質国内総生産(GDP)成長率の目標を6%に設定した。この目標を達成するには、国内外の景気下押し圧力に対処するため引き続き緩和策を強化していく必要がありそうだ。中国の景気刺激策は先進国や新興国の経済や資産価格に波及し、世界経済の安定化に寄与する可能性がある。

それでも、世界経済が転換点を迎えたと考えるのは時期尚早だろう。このような直面する脅威は長期的なトレンドとなりうる。

投資機会の発掘

このようなことから、債券の利回りはしばらく低水準にとどまり、市場のボラティリティは高水準で推移する可能性が高い。しかし、投資家は引き続き債券戦略を通じて相応のリターンを獲得しうる。

例えば、10年物の日本国債は過去3年間、年初に利回りがゼロに近い水準であった。また過去12年のうち11年は年初の利回りが1%を割り込んでいた。だが、この期間の年平均リターンは2%を上回っている。同様に、欧州では利回りの低下により債券価格が力強く上昇した。ブルームバーグ・バークレイズ・ユーロ総合国債指数は2019年初めに利回りが0.74%だったが、年間のリターンは6.77%に達した。

「デュレーションを維持する」ことも重要である。それは、世界の地政学的リスクに不透明感が強い場面で、金利変動のエクスポージャーを取ることを意味する。市場の急変時には、国債のデュレーションは株式やクレジット市場のボラティリティを相殺する役割を果たし、ダウンサイド・リスクを抑制する効果がある。

しかし、保有すべきなのは国債だけではない。投資家は利回り、クオリティ、ダウンサイド抑制の魅力的なバランスをもたらしうるクレジット物への資金シフトも検討するべきだ。現時点でABが魅力的だと考えている資産は2つある。それは商業及び住宅ローンを裏付け資産とする米国の証券化商品と、欧州の銀行劣後債である。

証券化商品は貿易戦争に起因するボラティリティを相殺する上で優れた役割を果たしてきた。商業不動産担保証券(CMBS)と信用リスク移転証券(CRT)は米国のハイイールド債に比べ、米中の貿易戦争に伴う市場変動をうまく乗り越えてきた。さらに、それらの証券は他の債券セクターや資産クラスとの相関性も低い。

CMBSは社債よりも高利回りであるため、ポートフォリオのインカムを押し上げる効果も得られる。同セクターは小売り企業の破綻懸念などからここ数年注目されていないが、その懸念は行き過ぎだと見ている(以前の記事『米国のモール業界に未来はあるか?』ご参照)。

米政府系住宅金融機関の連邦住宅抵当公庫(ファニーメイ)や連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)が発行するCRTに対して投資家が選好する動きも考えうる。CRTにとっては米国の住宅市場が依然堅調に推移していることは追い風であり、他にもプラス要因がある。住宅の入手しやすさは大半の地域で改善しており、また住宅価格も高所得地域の一部での若干の調整に伴い全体の上昇ペースが鈍化する可能性はあるものの、全体の上昇が頭打ちになるとは考えにくい。

また、投資家は欧州の銀行劣後債に資金を配分することで、過度のリスクを取らずに潜在的な利回りを引き上げることができる。これらの証券は、銀行に株式資本のバッファー強化を義務づけた世界的な規制であるバーゼルIIIを満たすために発行された。それらは資本構造の下位に位置づけられているため、投資適格クラスの銀行が発行した劣後債は、投機的格付債級の利回りを提供している。実際、発行体の銀行が困難な状況に陥った場合に真っ先に打撃を被る証券である欧州のその他Tier 1債(AT1)の利回りは、欧州や米国のハイイールド債を優に上回る水準にある。

現在、先進国の銀行の健全性はおおむね良好であるため、リスク/リターンの観点で魅力度が高い。欧州の金融機関は米国の金融機関に比べクレジット・サイクルがやや早い段階にあることから、欧州の銀行債は特に魅力がある。

クレジット・サイクルの終盤には、他にどんな債券が魅力的に見えるのだろうか? おそらく意外なことだが、投資適格社債の中で格付が低い銘柄では、国債に対するスプレッドがハイイールド債券とほぼ同じ水準で取引される債券が出てきている。それらの企業の多くは債務削減を重視している一方で、依然として健全な収益を上げている。ハイイールド市場の中では、償還期間の短いハイイールド債はボラティリティが抑制されそうだ。

最後に、先進国の中央銀行がハト派的スタンスに傾いていることは、新興国市場の債券を幅広く支えている。新興国の経済ファンダメンタルズはここ数年著しく改善してきた。2020年は世界的な金融緩和の進展により、新興国の資産価格はさらに押し上げられる可能性がある 。

うまくやり遂げる

低金利時代や、それが債券投資家にもたらす困難な状況は、当面継続すると見込まれる。しかし、地域やセクターに幅広く選別投資を行い、金利に敏感な銘柄とクレジットに敏感な銘柄の適切なバランスを保てば、世界経済がモメンタムを失っても資産のボラティリティを抑えるとともに、潜在的なリターンを引き上げることが可能になる。たとえ2020年の見通しがはっきりしなくとも、不透明感が強い時代には、それが一筋の光となる。

 

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