2020年9月末現在、米国の経済回復はアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)の予想どおり迅速なものであったが、完全回復とまでは至っていない。これから回復ペースがより緩やかになる中、長い時間をかけて「正常」に戻る道をたどることになろう。しかし、先行きには多くのリスクがある点には留意すべきだ。
 
足元の進展を踏まえ、ABは2020年及び2021年以降の国内総生産(GDP)見通しの微調整を行った(図表1)。まず2020年の米国GDP成長率については、-5.4%から-3.8%へ修正した。これは、年末までに新型コロナウイルスの影響で失われた経済活動の約70%が回復することを示唆している。

GDP反発も、パンデミック前に比べ依然低位な水準.png

 
一方、2021年の成長率については+3.8%から+3.4%へと若干の下方修正を行った。したがって、2021年末時点の経済活動レベルは今般の調整によって大きくは変わっていない。米国の経済活動が以前のピークを回復するまでには、2021年10-12月期から2022年1-3月期までかかるとABは見ている。
 

今後の経済回復を左右する重要な前提

経済予想には常に土台となる前提が必要だが、今般の予想にあたって重要な前提は経済面というより、むしろ公衆衛生や各種政策面における今後の動向に置かれている。これらについて、ABは以下の前提を置いている。
 
+経済成長の重要な要素である財政政策について、米国議会と行政は最終的に2021年の経済成長を下支えする景気刺激策を成立させる
 
+新型コロナウイルス感染再拡大を受けた広範囲のロックダウンは再開されない。また、今後数四半期で予想を超える革新的医療技術が発展し、経済成長に対して顕著に好影響が具現化することもない
 
+医療技術やウィズコロナ時代に対する社会・経済の適応が進み、2021年後半までに新型コロナウイルスがマクロ経済に対して与える影響は有意でないレベルまで減衰していく
 
+米国大統領選挙の結果に関して中期的には混乱は発生しない。たとえ選挙結果に対する異議申し立て等が発生した場合でも社会は機能不全に陥らない
 

7-9月期の反発は朗報

2020年7-9月期の米国経済が予想以上に回復したことを受けて、ABは2020年GDP成長率予想を上方修正した。個人消費が回復の大きなけん引役となっており、財政支援が後押しする形で家計支出は予想以上に堅調に推移している。
 
しかし、回復は一様ではない。財の消費は完全に回復した一方、サービス消費は依然として深刻な打撃から回復したとまでは言えない。住宅市場は堅調だが、鉱工業生産の回復は出遅れている。それでも、全体的に7-9月期の回復は目を引くものであった。
 

2021年に向けてさらなる財政支援が不可欠

7-9月期が好調だったにもかかわらず、2021年のGDP見通しを下方修正した理由は、追加財政支援の必要性について議会で論争となっている点が大きく関係している。
 
新型コロナウイルス流行以前は雇用されていた1,000万人以上の人々が依然失業したままだ。経済活動はおよそ3分の2まで戻ったかもしれないが、労働市場は半分しか戻っていない。これを恒久的な失業者増加と捉えると、とりわけ懸念すべき状況だ。
 
パンデミックを受けて成立した財政支援策によって、これまで失業者の収入は穴埋めされてきたが、これらの政策の大半は現在期限切れとなっており、個人消費が今後大きく後退するリスクがある。2020年9月のペースで労働市場の回復が続くとした場合、米国経済が完全雇用に戻るには1年半近くかかる見込みであり、ギャップは未だ大きい(図表2)。そのため、今後の緩やかな景気回復期間において、家計所得の橋渡し役としての財政政策が非常に重要な役割を担う。
 
所得ギャップを埋めるためには財政支援が必要.png
 
失業者や危機に瀕している産業に対する追加支援に関して、議会及び政権は最終的に合意に達すると現時点でABは見ている。ただし、これらの対応が遅延すると、2021年は従来の予想よりも弱いスタートになる可能性が高い。
 

予想の下方リスクと上方リスクはおおむねつり合っている

現在の経済予想について、上方リスクと下方リスクはおおむねつり合っていると考えている。言い換えれば、ポジティブ・サプライズとネガティブ・サプライズが発生する可能性はおおむね均等ということだ。下方   リスクとしては、早期の緊縮財政、ロックダウン再稼働、米国大統領選挙の結果により経済活動が混乱する可能性などが挙げられる。逆に上方リスクは、予想を超える医療技術の革新、より大規模な財政刺激策実施などだ。今後数カ月間でこれらのいずれかまたは全てが顕在化した場合、GDP予想を再調整して上方修正するだろう。 
 

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
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