米国国債の利回りが足元で急上昇している。その根拠は、経済成長に対する楽観論の高まりとインフレ期待の高まりである(以前の記事『米国インフレの行方-押さえておくべき4つのポイント』ご参照)。アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)の成長予測に基づくと、米国の長期金利は今後数四半期にわたり上昇する可能性が高いが、ややペースを落とした動きになるとみている。また、米連邦準備制度理事会(FRB) は金利の上昇幅や上昇ペースによっては、金利上昇を押し戻す用意があるとも考えている。
 
過去の米国経済サイクルでは、イールドカーブの傾き(2年物国債利回りと10年物国債利回りの差、長短金利差)は、景気後退局面やその回復初期に急激に上昇した(図表)。過去の経験から、イールドカーブの傾きの上限は2.5%近辺であり、これを超えた水準で定着することはあまりない。
 
今後不安定な動きが予想される米国インフレ率.png
 
 
過去の例にならう場合、2年物国債利回り0.25%にイールドカーブの傾きを2.5%と想定して、今後18カ月間に10年物国債利回りが2.75%に達するとの計算が成り立つ。しかし、足元は過去の局面とはいくつか異なるポイントも考慮に入れたい。
 

FRBは金利上昇を抑止する側に立つ

FRBは2021年に1兆米ドル近い債券の購入を計画しており、債券市場で近い将来の利上げがプライシングされることを許しそうにない。このどちらの要因も米国国債利回りの上昇余地に歯止めをかけてくる。大まかな試算としては、FRBの政策姿勢は10年物国債利回りを自然体よりも0.5%ほど下回る水準に維持するのに十分と考えている。
 
したがって、ABの2022年の10年物国債利回り予想のレンジ中央としては2.25%を想定し、2021年のレンジは1.5%から2.0%と想定している。また、金利が現在のペースのまま上昇していく展開は考えにくい。金利水準が高くなるにつれ、ここ数日で見たような急激な金利上昇が起こる可能性は逆に低くなるだろう。金利の上昇の経路は階段のような形状を示す傾向があり、急激な金利上昇後はいったん踊り場を作るのが通常だ。2021年の残りの期間は、このパターンが実現していくとみている。
 
市場ではインフレ率の上昇に注目が集まっていることから、この予想にさらなる上方修正がかかる可能性は残る。しかし、大幅に変更することは考えにくい。ここからはFRBがこれまでのように金利の上昇におうような姿勢で臨むとは思われず、もし急激な金利上昇があればFRBの行動を促すきっかけを与えることになる。
 

金利上昇は経済見通しの改善を織り込んだものと判断できる

米国経済が「正常な」状態を取り戻し始めたことで、経済ファンダメンタルズがどこまで金利に反映されているかを、伝統的な枠組みによって評価できる環境が戻ってきたようだ。購買担当者指数(PMI)を経済活動の指標とすると、足元の金利上昇は経済見通しの改善をほぼトレースする動きとみてよい。
 
現在の金利水準が今後も続くとすると、当面は、金利水準(米国10年物国債ベース)が前年比でみると1%近く上昇した状態が続くという計算になる。他方、PMIは50台後半となっていて景気拡大の基準となる50を大きく上回っており、過去の同様の局面における金利とPMIの関係とも整合的だ。現在の長期金利が織り込む水準は国内総生産(GDP)ベースで2021年約5%成長程度とみているが、ABはGDP成長予想を6.5%とより高くみており、ここでもさらなる金利上昇余地が示される。しかし、経済見通しと金利水準の関係は、ここ最近の金利上昇でかなり正常化したとみている。
 
金利上昇の背景を見極めることも重要だ。成長期待が高まっているために上昇しているのか、それとも市場が利上げを期待し始めたから上昇しているのか、この2つのケースで市場への影響はかなり変わってくる。したがって、当面は金利の水準だけではなく、イールドカーブの形状にも注意を払う必要があるだろう。
 

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