米国では経済活動を再開する動きが続くのに伴い、コンセンサス予想を上回るアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)の見通しに沿って成長が加速している。これを受け、一部の投資家は見通しに対するダウンサイド・リスクについて考え始めている。このところ関心が高まっている1つの問題は、法人税に関する政策が変更される可能性があることだ。

米国のバイデン政権が提案しているインフラ再構築を目指した「米国雇用計画」には、企業税制を改定する他の措置とともに、2017年税制改革法の一環として実施された法人税引き下げの一部を逆戻りさせることが盛り込まれている。

当初の提案では、法人税率を21%から28%に引き上げる計画だ。もちろん、その行方は議会での交渉次第であり、税率が2017年の減税以前の35%を大幅に下回る水準にとどまることはほぼ間違いない。だが一部の投資家は、税率の引き上げがいずれ経済成長に悪影響を及ぼしかねないと懸念している。

ABでは、税率の引き上げは実体経済よりも、金融市場に大きな影響を与えると予想している。

2017年の減税は企業の投資拡大につながらず

法人税率引き上げが及ぼし得る影響について予想するために、2017年の減税がもたらした影響を振り返ってみよう。当時、税率は35%から21%に引き下げられた。

重要なのは企業の投資動向への影響である。理論的には、税率引き下げは企業の投資を押し上げ、米国経済をさらに強じんにするはずである。実際に企業がそのような行動をとっていたならば、今後の税率の引き上げは企業の投資を抑制し、成長を鈍化させることになる。

しかし、実際のデータは、2017年の減税は企業の投資をそれほど押し上げなかったことを示唆しているようだ。減税が実施された後に投資は確かに拡大したが、そのペースは緩慢で、おおむね減税以前のトレンドに沿った動きが続いたにすぎない。投資のトレンドが上向く明確な兆しが見えなかったため、2017年の減税の一部が巻き戻されても、企業の投資を大きく鈍化させることにはならないとABでは考えている。

実際のところ、需要が急増し、力強い成長を遂げるというABの見通しを踏まえれば、たとえ増税が実施されても、企業の投資は拡大すると予想される。つまり、投資に関する意思決定を左右するのは税制ではなく、今後の経済成長見通しだと考えている。

増税は自社株買いの縮小につながる可能性

ABは税制の変更が企業の投資を妨げるとは考えていないが、税率が引き上げられれば金融市場にとって逆風となる可能性がある。2017年の減税以降、企業による自社株買いはその後の数四半期にわたって過去最高水準に達し(図表)、過去数年の株式市場の力強いリターンに寄与したことは間違いない。

2017年の企業減税は自社株買いを押し上げた.png

税率が引き上げられれば、企業は資金を株主に還元する意欲が薄れる。それは株式市場の崩壊を意味するのだろうか?そうとは思えない。長期的に見れば、株式市場には引き続き米国経済のパフォーマンスが幅広く反映されるとABでは考えている。

そのため、自社株買いが減少すれば市場に逆風が吹くかもしれないが、それが大規模な売りを招くとは考えにくい。しかしながら、過去数年は自社株買いがリターンをけん引する役割を果たしてきたことを踏まえれば、投資家はその動きを注視する必要がある。

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