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【AB IQ】企業文化の分析: 投資家のためのガイド

                                                                                                                                                                     

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ミシェル・ダンスタン
アライアンス・バーンスタイン・エル・ピー
責任投資 グローバル責任者
グローバルESG改善戦略 ポートフォリオ・マネジャー
 
 
 
  
 

2021年6月17日

 
 
多くの大企業の最高経営責任者(CEO)を歴任したルイス・ガースナー氏はかつて、「組織とは結局のところ、その構成メンバー全体の価値創造力にほかならない」と述べている。
 
企業リーダーの視点から見れば、これは理にかなっている。強固な企業文化で結束した社員はより良い意思決定を行い、長期的により良い結果を生み出すからだ。満足度の高い社員はモチベーションが高くなり、離職率も低下する。そしてその結果、生産性が向上し、組織が安定し、顧客ロイヤルティも向上することが、複数の独立した研究により明らかになっている。
 
企業文化は無形に見えても、成功と失敗を分け得るものであり、持続性のあるビジネスを構築するためには、人的資本の育成が不可欠だと言える。では、投資家はどうすれば企業文化の強さを測ることができるだろうか。
 

企業文化は長期的な課題

多くの難問があるが、投資家はまずレンズを調整しなければならない。企業文化は、四半期ごとの業績や毎日のニュースのような時間軸ではなく、年単位で見るべきものだからだ。企業業績の報告書は企業文化についてあまり語らないし、企業文化の影響を日々の株価変動から見て取ることは難しい。
 
しかし、強固な企業文化を早期に確立することは、持続的な成功を確実なものにするために役立つ。そのような企業文化は、常に成果を上げ、急速に変化する事業環境に対応し、厳しい局面を乗り切り、前向きなビジョンを維持することを可能にする。そして、優れたリーダーは、企業内のすべての組織がどのように相互に作用しているかをよく見ている。
 
企業のファンダメンタルズに関するリサーチの一環として企業文化を評価したり、経営陣と定期的に対話を行う「エンゲージメント」に取り組むことで、投資家は市場に先立って有望な企業を見極めたり、企業文化が障害となる可能性に気づくことができる。
 

企業文化の評価にはエンゲージメントが重要

企業文化を評価するには、経営陣との対話を通じて、企業を詳細に観察することが必要だ。企業が業績報告書で企業文化について説明することはまずないし、したとしてもそのこと自体で企業文化が強いとか効果的であることがわかるわけではない。アクティブ運用を行う投資家は、情報を積み上げ、明確性、一貫性、整合性、影響力など、複数の観点から評価を行わなければならない(図表)。
 
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企業文化を見極めるには厳しい質問を

企業文化は多様であるため、その評価方法には単一の絶対的な物差しがあるわけではない。それがビジネスの成功に結び付くものであるかどうかを判断するには、多くの労力を要する(以前の記事『企業文化が成長の秘訣』ご参照)。このため、ABの全てのアナリストやポートフォリオ・マネジャーがESG(環境・社会・ガバナンス)要因に関する情報を共有するために用いているデータベース・プラットフォームのESIGHTには、エンゲージメント活動によって企業文化についての理解を深める上で効果的な質問のリストが用意されている。
 
質問の内容は、その企業がどのように企業文化を定義しているか、人材育成にどれだけ投資しているか、従業員の満足度など多岐にわたる。いくつか例を挙げてみよう 。
 
1) 貴社では、企業文化をどのように定義し、その向上に向けて最近どのような取り組みをしていますか? また、どのような課題に直面していますか?
 
投資家は、企業が自社の企業文化について確信を持っているかどうか、また、経営陣や社員がその企業文化を的確に定義し、明確に説明できるかどうかを見る必要がある。企業文化はまた、静的なものではない。報酬・表彰プログラムの導入や強化、またはワークライフバランス改善の取り組みなどにより、企業文化は強化することができる。また、従業員からのフィードバックを得るために、公式・非公式を問わず、コミュニケーションの経路を拡充することも望ましい。
 
経営陣は、企業文化の問題点にも注意を払う必要がある。例えば、従業員の間の無関心や不満の蔓延、離職の異常な増加、上級職からの一貫性のない、または一方的なコミュニケーションといった問題だ。企業との対話の中でこうした問題の兆候が観察され、しかも経営陣がそれについて語ろうとしない場合、投資家はそれを警戒シグナルと見なすべきである。
 
2) 従業員の帰属意識や満足度はどのように測定していますか? 過去1年間に調査した従業員の割合とその結果は? 改善が必要な分野は?
 
企業は従業員からの意見を集めるだけでなく、それを取締役会で共有し、問題に対応するための行動計画を策定するべきである。したがって、従業員からのフィードバックに基づいて実施された措置の具体例を聞くことが重要だ。もし企業が従業員にフィードバックを求めているのに、それにより判明した問題に対処していないとしたら、それは懸念材料となる。
 
企業文化を重視するならば、人材の獲得、育成、流出防止は極めて重要だ。投資家は、企業があらゆる階層の従業員のために十分な研修プログラムを提供しているか見極める必要がある。実務能力に加えて、対人的な調整能力など、幅広いスキルを網羅すべきだ。多くの従業員を対象とした株式報酬プランもまた、企業文化を後押しするものであり、オーナーシップ意識を浸透させることで業績向上に貢献し得る。
 
要するに、経営陣が本当に人材の重要性を評価しているならば、従業員に対するコミットメントと行動でそれを担保しているはずだということである。
 
3) 他社における非倫理的な行動、不祥事、規制違反に対して、貴社はどのように対応してきましたか?
 
経営状態の良い企業であっても、行動を支配する倫理的・文化的な枠組みを継続的に強化・補強しなければならない。同業他社、または他分野の企業などで大きな不祥事が起きた場合、先見の明のあるリーダーであれば自社の方針を再検討する契機にするだろう。この質問は、自社でも起こり得る問題に対して経営者がどのように反応しているかについて会話を始めることを目的としている。
 
一時世界を席巻した#MeToo運動が良い例だ。一部の企業ではすでにセクシャル・ハラスメントに対処するための制度を持っていたが、#MeToo運動は、従業員のためのリソースを強化し、既存の慣行を見直すための警鐘となった。対応しなかった企業の中には、社内からの大きな反発に直面したところもあった。一方、企業文化のしっかりした会社は概して迅速に対応し、従業員と思慮深い対話を行っている。
 
4) 従業員に健康やウェルネスを維持するための適切なインセンティブを与える利点とは?
 
従業員のウェルネス・プログラムに関しては、遅れている企業もあれば先進的な企業もあり、その中間に位置する企業もある。ウェルネス・プログラムを評価する具体的な方法は色々あるし、従業員からも重要視されている事項だ。しかし、投資家がこの質問を提起する際には、経営者がどのようにウェルネス・プログラムをビジネスの改善に結びつけようと考えているかという観点から取り組みを評価することが求められている。
 
企業は、ウェルネスに関し具体的に掘り下げる必要がある。例えば、業務の質の向上、コスト削減、顧客満足度の向上など、生産性の向上によって生じる収益面の改善。また、社会的評価での効果もある。経営陣は、優れたウェルネス・プログラムを持つことによって、従業員に対し親身で顧客とも価値観を共有している企業という評価を築き、ブランド力を強化する力を問われている。
 

企業文化の断絶に注意

投資家は、エンゲージメントを通じて企業文化が統一されているのか、それとも「断絶」があるのかを見極める必要がある。例えば、企業内のさまざまな職位の人に戦略、企業文化、ビジョン、価値観について尋ねてみる。返ってくる返答が一貫していて明確であれば、コミュニケーションが良好でオープンな企業文化があることを示している。
 
また、会社全体で従業員にどのようなインセンティブが与えられているかを理解することも重要だ。役員や上級管理職には素晴らしい福利厚生が用意されていても、他の従業員グループにそれがないない場合、敵対的な企業文化が醸成されてしまう可能性がある。優れた企業は、すべての従業員が大切にされていることを行動で示す。
 
投資家はまた、経営者の発言と企業文化が一致しているかどうかを確認する必要がある。最近の事例では、いくつかの拠点で残念な暴力行為が生じた一般消費財・サービス・セクターのある企業で、そのような不整合が見られた。この企業は従業員を最大の資産と考えていると述べているが、事件後の聞き取りに対し、従業員の安全や幸福へのコミットメントを表明したり今後の取り組みを明示するのではなく、それぞれの事件の間に関連性がないことを暗示するようなデータを提示するだけだった。そのような切り口から話を始められたため、その企業が標榜する価値観とはかなりかい離があるように感じられた。 
 

ビッグデータから企業文化を分析

データサイエンスの登場により、企業の人的資本や企業文化をデータに基づき評価する手段が拡大している。
 
例えば、あるビジネス・サービス提供会社は、成功の大きな要因としてダイバーシティとインクルージョン(D&I)が挙げられていた。そこで、第三者機関に依頼して元従業員に聞き取り調査を実施してみた。結果はおおむね良好だったが、ジェンダー関連の人事慣行について、さらなる調査を必要とする問題が浮上した。
 
その後、経営陣とのエンゲージメントを続ける中で、同社では人事部門責任者が交代し、D&Iの責任者が置かれたことがわかった。これを受け、その影響を確認するために、ネット上の転職サイトで従業員による当該企業のレビューを分析してみた。すると、従業員による主観的評価には時間の経過とともに改善する傾向が見られ、また自然言語処理を施すとジェンダー問題に言及したコメントが減少していることが判明した。
 
データサイエンスを利用することで、投資家は企業の文化や価値観に対する評価がどう変化しているかを調べたり、同業他社と比較することができる。これは、企業がリストラを行ったり、経営陣が交代した際には、有用な分析手段となる。ある企業では、CEOの交代後に支持率が50%から95%に急上昇した。 
 

企業文化を試した新型コロナウイルス

新型コロナウイルスの感染拡大により多くの企業で企業文化が試された。安全を確保しながら大勢の社員によるテレワークを可能にするために、迅速な対応が求められた。また、需要ショックが収益を圧迫し、厳しい決断を迫られた企業も多い。
 
ABでは、エンゲージメントを促進するために、新型コロナウイルス関連の課題も直ちにESIGHTに取り入れた。そして、すでに社会的問題に特化した企業エンゲージメントを200件近く実施し、人的資本の開発に関するものも100件以上行っている。
 
その中には、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、健康状態に関わらず全社員の給与・福利厚生を全額保証したり、現場社員の手当を引き上げたほか、社員食堂を改装して食事の配送を始めたヘルスケア企業など、企業文化が素晴らしい対応をもたらした例もあった。また、ある金融サービス企業では、危機的な状況にある従業員とその家族を支援するために従業員救済基金を設立し、未曽有の事態に対処していた。
 

コロナ禍への対応: データサイエンスの視点

データサイエンスは、どのような企業文化がコロナ禍によりうまく適応できていて、どのような企業文化が苦戦しているのかを明らかにした。転職サイトなどでは従業員自身の言葉を抽出することができるため、例えば従業員が「その他大勢」と扱われているように感じているのか、あるいは「従業員と顧客を守るための努力が足りない」と受け止めているか、「在宅勤務への移行がスムーズにできた」と経営陣を評価しているかなど、さまざまな角度から従業員の感情を知る貴重なレンズを提供している。
 
従業員心理の指標も、長期的な影響を与える可能性がある。危機への対応が従業員から肯定的に受け止められた企業は、従業員を惹きつけ、維持することができるかもしれない。コロナ禍において企業文化が長期的な企業収益や株価のパフォーマンスにどのように影響を与えたかを理解するために、こうしたデータは長期的に追跡していく必要がある。
 
企業文化は、四半期ごとの業績や決算説明会よりもはるかに長い時間軸で企業の見通しを評価する上で大きな要因となる。企業文化を評価することは、損益計算書の分析ほど具体的ではないかもしれないし、妥当な評価軸を設定するための努力が必要だが、企業文化を見過ごしてしまうと、成功の方程式の重要な部分が失われてしまう。
 
 
 
 
 

 

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。オリジナルの英語版はこちら。

 

 

本文中の見解はリサーチ、投資助言、売買推奨ではなく、必ずしもアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)ポートフォリオ運用チームの見解とは限りません。本文中で言及した資産クラスに関する過去の実績や分析は将来の成果等を示唆・保証するものではありません。 
 
当資料は、2020年12月7日現在の情報を基にアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーが作成したものをアライアンス・バーンスタイン株式会社が翻訳した資料であり、いかなる場合も当資料に記載されている情報は、投資助言としてみなされません。当資料は信用できると判断した情報をもとに作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。当資料に掲載されている予測、見通し、見解のいずれも実現される保証はありません。また当資料の記載内容、データ等は作成時点のものであり、今後予告なしに変更することがあります。当資料で使用している指数等に係る著作権等の知的財産権、その他一切の権利は、当該指数等の開発元または公表元に帰属します。当資料中の個別の銘柄・企業については、あくまで説明のための例示であり、いかなる個別銘柄の売買等を推奨するものではありません。アライアンス・バーンスタイン及びABはアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーとその傘下の関連会社を含みます。アライアンス・バーンスタイン株式会社は、ABの日本拠点です。
 

 

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