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中国恒大集団のたどる道は「中国版リーマン・ショック」とは異なる

                                                                                                                                                                     

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ブラッド・ギブソン
アライアンス・バーンスタイン・香港・リミテッド
アジア太平洋債券 共同ヘッド
 
 
 
  
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アライアンス・バーンスタイン・香港・リミテッド
アジア太平洋債券 共同ヘッド
 

2021年9月28日

 
 
中国恒大集団(エバーグランデ)の財務状態を巡る足元のニュースは、同社に対する投資家の信頼を大きく揺るがしている。また懸念の対象は他の中国不動産開発会社にも広がり、それらの会社の債券価格も下落している。今後我々は中国版リーマン・ショックを迎えるのか? この一企業の崩壊が、システミックな金融危機を引き起こすのだろうか。
 
アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)の分析の結果は「NO」だ。中国の政策立案者は、資金のひっ迫を回避し、不動産セクターに対する投資家の信頼を回復するための政策を有している。しかし、中国が信用収縮を食い止めるために取るであろう政策手段を考える前に、まずは現状を整理してみよう。
 

中国恒大集団は財務規律のコントロールに失敗

中国恒大集団は新興国最大の不動産開発企業だ。その負債額は5,700億人民元(880億米ドル)に達し、世界で最も負債の多い企業の1つだ。
 
この負債の行く末は不透明だ。資産売却によって負債を大幅に削減したにもかかわらず、流動性が大幅に悪化している。同社は社債の債務不履行の危機に瀕しており、2021年9月23日に利払いが滞ってから30日後に正式な債務不履行と判断される。
 
中国恒大集団の信用問題は突然起こったわけではない。過去10年間、中国の不動産開発会社は、積極的な拡張計画に資金を投入するために、負債でバランスシートを拡大してきた。セクターの債務残高が増加するに伴い、金融システムに及ぼすリスクについて規制当局の懸念も高まった。このリスクを抑えるために、政府は2020年に「Three Red Lines(3つの防衛線)」という規制を打ち出した。不動産開発業者のバランスシートの拡大を、純負債資本比率、流動比率(現金と短期負債の比率)及び負債資産比率の3つの尺度で一定の範囲内に収めることで、債務膨張の抑制を目指すものだ。
 
「3つの防衛線」を守るため多くの不動産開発業者は債務の削減を余儀なくされた。しかし、業界内で最も負債の多い中国恒大集団については、規制の遵守が困難な状況に直面したのだ。
 

中国恒大集団は中国版リーマン・ブラザーズなのか?

北京の政治中枢には、中国恒大集団は救済の価値がないと映っているようだ。それは、中国の巨大な経済の中で、システム的に重要とみなされる不動産開発会社は、中国恒大集団を含めて一社もないからである。
 
中国恒大集団は、バランスシートが巨大であるにもかかわらず、中国の住宅市場におけるシェアはわずか4%に過ぎず、破綻を許さないほどの重要性はないと考えられる。当局としては、特定のデベロッパーを救済することでモラルハザードを助長することも避けたい。さらに言えば、不健全な企業を破綻させることで、中国の社債市場全体の健全性を逆に高めるという目標を達成することができ、クレジット投資家にとっても良いことにもなる。
 
ただし、中国恒大集団を含むどの不動産開発企業も単体ではシステム的に重要ではないが、中国の不動産セクター全体は重要な産業である。開発業者自身と、サプライチェーンを形成する重機や建築資材のサプライヤーなどの関連企業の負債総額は101兆元に上り、中国の金融システムの35%、国内総生産(GDP)の100%に相当する。
 
つまり、個々の不動産開発業者の債務不履行や破綻は許容できるが、不動産業界全体が危機にさらされる事態に対しては、当局は何らかの措置を講じる可能性が高いといえる。
 
しかし少なくともこの段階では、そのような措置を取る必要はないと考えられる。アジアのクレジット市場の一部は投資家の懸念の影響を大きく受けているが、中国国内のクレジット市場やインターバンク市場では信用収縮の兆候は見られない。例えば、最近の中国市場で混乱が発生した局面では(2018年の貿易戦争、2020年のパンデミック)、国内債券市場で債券の新規発行が急減し、信用スプレッドが拡大したが、このような反応は現在見られていない(図表1)。
 
中国の債券市場にはシステム危機の兆候はない.png
 
システミックな混乱を示すもう1つの指標であるインターバンク市場も、銀行間の借入金利が中国人民銀行の公開市場操作金利に密接に連動しており、正常に推移している(図表2)。
 
中国のインターバンク市場に動揺はみられない.png
 
しかし中国の政策当局は、システミックな混乱の兆候が拡大した場合には、行動を起こす準備ができていると考えられる。大手国有銀行との調整や潜在的な政策発動を通じて、不動産セクターの資金調達圧力を緩和し、投資家の信頼感を取り戻す手段が想定されよう。
 

中国不動産セクターの混乱は、むしろ投資の好機か?

ABでは、中国のほとんどの不動産開発業者は、この短期的な混乱を乗り越えることができると考えている。しかし、金融市場の懸念が実際のビジネスの危機をもたらす可能性がある。オフショア債券市場へのアクセスが低下し、不動産デベロッパーの海外での資金調達が長期間にわたって不可能になるようなケースだ。
 
この場合、アクティブ投資家は、長期的な市場の変動を乗り切る能力を持つ発行体を探すべきである。これは、流動性確保の手段や、必要に応じて売却可能な優良資産を保有する発行体を意味する。債券価格が低迷している局面では、潜在的な投資機会に目を向けるべきだ。
 
混乱と不透明感が市場を覆う局面では、企業の破綻や債務再編の可能性があるため、個々の信用状況を厳密に調査することが特に重要だ。また中国の場合は、政府が企業を破綻させる意思があるのかないのかを見極めることも、重要な調査項目だ。言い換えれば、投資家は、中国政府がどの企業をシステム上重要だと考えているのかをより正しく予測するために、体系的なフレームワークをもって分析に臨む必要がある(以前の記事『中国株式会社 ~中国クレジット市場のリスクを理解する~』ご参照)。
 
中国恒大集団にばかり注目が行きがちな環境だが、投資家はニュースの裏を読んでいくことで、中国のクレジット市場におけるリスクを適切に評価し、潜在的な投資機会を見極めることができよう。
 
 
 
 
 
 
 

 

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。オリジナルの英語版はこちら。

 

 

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