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債券市場の見通し ~債券投資の禅とアート~

                                                                                                                                                                     

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ガーション・ディステンフェルド
アライアンス・バーンスタイン・エル・ピー
債券部門共同ヘッド/クレジット運用 ディレクター
 
 
 
  
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アライアンス・バーンスタイン・エル・ピー
債券部門共同ヘッド/グローバル債券 ディレクター
 

2021年10月22日

 
 
債券市場は平穏な日々が続いているようだ。退屈ですらある。資産配分を定め、クーポンを獲得すれば、確実に一定の収益を確保できるという安心感が得られる。しかし、今日の債券市場には多くの不透明要因があり、投資家を不安にさせている。本稿では、今日の複雑な投資環境を理解し、多少なりともリスクを和らげる戦略を紹介したい。
 

インフレ: 今はあるが明日にはなくなる?

米国では2021年8月までの1年間にコア消費者物価指数が4.0%上昇し、インフレ懸念の中心地となっている。だが、アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)ではインフレ率の急上昇は一過性のものだと考えている。新型コロナウイルスのパンデミックに伴う供給面の制約が徐々に和らぎ、需要に供給が追いつけば、物価上昇圧力が弱まっていくと思われる(以前の記事『ミクロ分析が物語る「インフレは一時的な現象」』ご参照)。
 
ユーロ圏ではインフレが懸念要因となるのだろうか?すぐにそうなることはなさそうだ。欧州中央銀行(ECB)は最近、2023年のインフレ率予想をわずか1.5%とし、インフレ目標達成までの道のりがかなり遠いことが浮き彫りになった(さらに、パンデミック緊急購入プログラムが終了した後も、かなり先まで継続的な資産購入が必要になるとの考えを示唆した)(過去の記事『ECB Strategy—Has the PEPP Had Its Day?』(英語)ご参照)。
 
しかし、今後数年間は、各国政府がパンデミックで経済が被った打撃の修復、巨額に上る負債の管理、気候変動という喫緊の課題への対応に追われる中、一世代に一度とも言うべき大きな政策変更の結果、高インフレへの扉が開かれる可能性がある(過去の記事『Will Policy Changes Open the Door to Higher Inflation?』(英語)ご参照)。
 
インフレが1970年代のような懸念材料になるとは考えにくいが、投資家はポートフォリオをある程度調整するのが賢明である。インフレは上昇ペースが穏やかでも投資リターンの実質的な価値を損なう要因となり、金利上昇につながるケースも多い。現在の環境を踏まえれば、投資家は以下のような戦略を検討すべきかもしれない。
 
●  ポートフォリオのデュレーション、つまり金利に対する感応度をわずかに引き下げる。市場の利回りが上昇しても、期間が短い債券は長期の債券ほど価格が下落しない。期間が短い債券は、より高い利回りの債券に迅速に再投資することもできる。
 
●  利回りとインカム収入を獲得するため、アロケーションをクレジットに傾ける。それには、ハイイールド社債へのエクスポージャーを拡大することも含まれる(過去の記事『ハイイールド債の「ライジング・スター」が物語る変化』ご参照)。社債など、政府債に対する利回りスプレッドのある債券は金利変動の影響を受けにくい。スプレッドが大きいほど、クレジットへの感応度が低くなる。
 
●  政府債や同種債券との相関性が低い米国の信用リスク移転証券(CRT)のような高利回りセクターを中心に、世界的に資産を分散する。CRTは住宅など実物資産を裏付けとした変動利付債で、インフレの恩恵を受けるケースが多い。米国の住宅市場が力強い動きを見せているため、CRTのファンダメンタルズは魅力的に見える。一部の新興市場も魅力的で、さまざまなリターン創出源を得られる可能性がある。
 

テーパータントラムなきテーパリング

インフレは利回りを押し上げる可能性があるが、金融緩和策の解除も同じ効果がある。金利上昇懸念は今回も米経済の急速な回復が主な原因となっており、連邦準備制度理事会(FRB)の量的緩和(QE)プログラムに基づく債券買い入れは早ければ11月にも縮小する必要が生じる見通しだ。
 
しかし、ABは「テーパータントラム」が起こるとは考えていない(以前の記事『米国のテーパリングについて想定すべき4つのポイント』ご参照)。その理由は2つある。第一に、FRBは金融政策を変更して市場を驚かせ、急激な利回り上昇を引き起こした2013年の失敗から学んでいる。今回は、FRBはサプライズを避けるため事前に周到な準備を整えている。第二に、FRBが債券購入を縮小しても、インカム収入を得る必要性が高まっている米国の銀行が債券購入を拡大すると予想される(以前の記事『Don't Fear a Taper Tango—Banks Know the Fed’s Steps』(英語)ご参照)。
 
テーパリングは、金融政策の正常化に向けた長い道のりの第一歩となりそうだ。FRBはおそらく資産購入ペースを徐々に落とし、2022年になってもかなり先まで債券購入を継続すると思われる。新規の資産購入を完全に終えた後も、FRBはクーポンや満期を迎えた債券の再投資を続ける見通しで、今後何年にもわたって債券市場の主なプレーヤーとなるだろう。市場が安定すれば、FRBは政策金利を数カ月にわたりゼロ%に維持した後、いずれ利上げに着手すると予想される。
 
その結果、米国の債券利回りは今後1~2年の間に緩やかに上昇し、10年債利回りは22年末までに若干上昇することになろう。一方、ユーロ圏や日本の利回りはゼロ%近辺にとどまる一方で、極端なトレンドに抵抗している中国の利回りは比較的高い水準を維持する見通しだ。
 
残念ながら、こうした環境は投資家を困難な立場に追い込むことになる。底に張り付く利回りがポートフォリオの潜在的リターンを脅かす一方で、利回りの上昇は長期的にはプラスに作用するものの(以前の記事『How Rising Rates Benefit Bond Investors』(英語)ご参照)、目先は債券価格の下落が痛みをもたらすことになる。投資家は何をすべきなのだろうか? 
 
ABの見方では、前述した戦略(デュレーションの短期化、クレジットへの傾斜、分散投資)は着実な出発点となる。しかし、今日の環境下では、投資家はさらに多くのことができる。最も効果的なアクティブ戦略の一つは、政府債や他の金利に敏感な資産と成長志向のクレジット資産を組み合わせ、単一のダイナミックなポートフォリオとして運用することである。
 
このアプローチでは、マネジャーは金利リスクとクレジット・リスクの負の相関関係の把握や、それぞれの時点でどちらを重視すべきかの判断に集中しやすくなる。また、負の相関関係にある資産をリバランスする能力は、リスク資産が売り込まれた場合のドローダウンを限定しながら、インカムと潜在的なリターンを創出することに寄与する。 
 

なすがままに任せよ: 中国と恒大集団

最近、中国のクレジット市場では、世界最大で最も多額の負債を抱えた不動産開発会社である中国恒大(エバーグランデ)が債務不履行に陥ったことで(以前の記事『中国恒大集団のたどる道は「中国版リーマン・ショック」とは異なる』ご参照)、売りに見舞われた。市場関係者の間では、中国当局が同社を救済するのではないかとの見方が公然とささやかれた。
 
混乱期には個別企業がデフォルトや債務再編に追い込まれる可能性があるため、徹底的なクレジット調査が不可欠である。中国の場合は、政府がその企業を破綻させる意思があるのかないのかについても分析しなければならない。つまり、投資家は、中国政府がシステム上重要だと考える企業を正しく予測するため、体系的なフレームワークを活用する必要がある(以前の記事『中国株式会社 ~中国クレジット市場のリスクを理解する~』ご参照)。
 
中国政府の目には、エバーグランデは救済に値しないと映っている。なぜなら、巨大な中国経済にとってシステム上重要な不動産開発会社は、エバーグランデに限らず1つもないからである。不健全な企業を破綻させることは、企業市場の全般的な健全性を引き上げるという政府の目標を後押しすることになる。それはクレジット投資家にとっても好ましい。
 
それでも、エバーグランデも同業他社も個別企業としてはシステム上重要ではないとはいえ、中国の不動産セクター全体として見れば事情は異なる。不動産開発業者と、重機や建材サプライヤーなどそれらの企業に依存しているセクターの負債総額は101兆元に上る。それは中国の金融システムの35%、GDPの100%に相当する規模である。
 
そのため、中国政府は個々の不動産開発業者の破綻は容認するかもしれないが、業界への打撃を抑えるための措置を講じる可能性はかなり高い。危機が波及する兆しが高まれば、当局は大手国有銀行との調整や潜在的な政策調整を通じ、資金調達圧力の緩和や投資家の信頼感回復に努めるだろう。
 
ABは、中国の不動産開発業者の大半は今回の短期的な動揺を乗り切ることができると考えている。しかし、オフショア債券市場にアクセスしにくくなり、不動産開発業者が長期にわたってオフショア市場での借り換えができなくなれば、金融市場の混乱は自己崩壊につながる可能性がある。
 
そのため、アクティブな投資家は長期にわたる市場の混乱を乗り切る能力を持つ発行体を見つけ出さなくてはならない。一般的に、それは他の流動性供給源へのアクセス能力や、必要に応じてマネタイズできる優良資産を保有していることを意味する。また、投資家は、債券価格が著しく落ち込んだ場合に生じる潜在的な投資機会にも目を光らせておく必要がある。
 

気候変動や他のESGリスクを注視する

気候変動や他の環境・社会・ガバナンス(ESG)に関するリスクも、投資家にとって最大の関心事となり始めている。より好ましく持続可能な世界の実現につながる債券を購入したいと考えている投資家は、さまざまなESGリンク債の長所や短所を理解することからスタートできる(以前の記事『進化するESG債市場』ご参照)。しかし、ESGリスクを軽減する方法はグリーンボンドを購入することだけではない。
 
ESGがもたらすリスクと機会を完全に把握および管理するには、マネジャーは債券の分析や投資プロセスにESG要因を全面的に組み入れる必要がある。ESGを重視していない投資家でも、ESG要因を投資プロセスに組み込むことで恩恵を受けることができる(リサーチペーパー『ゴルディアスの結び目を断ち切る』ご参照)。環境に大きな打撃を与えるイベントリスクの低減から(以前の記事『CMBSに隠された気候変動リスクを読み解く』ご参照)より有利な資金調達条件に至るまで、ESGはすべての債券発行体の利益に影響を与える。
 
最後に、測定できないものを管理することは難しい。ABが債券ポートフォリオのカーボンフットプリントを測定する強力で先見性のある手法を開発したのは、それが理由である(以前の記事『債券ポートフォリオにおけるカーボンフットプリントの把握』ご参照)。
 

テクノロジーを友人に

マネジャーのテクノロジー活用能力は投資家にとって最大の関心事ではないが、本来はそうあるべき問題である。先端テクノロジーを用いれば債券マネジャーはリアルタイムで債券市場全体を把握することが可能になり、潜在的な取引を提案し、わずか数秒で取引を組み立て、新たなポートフォリオを迅速に投資する助けとなり得る。
 
3年前には、クレジットやエマージング市場の新たな債券ポートフォリオを立ち上げて90%を投資するまでに平均35日かかっていた。しかし現在では、債券マネジャーが革新的なテクノロジーを習得していれば、その半分の期間で投資を完了できる。投資期間が1日長くなれば、利息収入もそれだけ増えることになる。
 
最先端のテクノロジーを使えば、市場が細分化され、不安定になっても、トレーダーは常に取引されている何千ものノイズを切り抜け、投資機会や流動性の供給源を見つけ出すことができる(以前の記事『債券トレーディングの未来-変革が求められる分野』ご参照)。それに対し、適切なテクノロジーを持たない債券マネジャーは、パンデミック後の世界で急速に遅れをとることになりかねない(以前の記事『Five Questions to Ask Your Muni Bond Manager』ご参照)。
 

平静心を保ち前進する

パンデミック後の世界ではさまざまな変化が起きるだろうが、恐れるあまり傍観者になってはならない。投資家や債券マネジャーはいくつかの賢明な調整を行うことで、不確実性を冷静に乗り切り、インフレや金利上昇、気候変動に備え、パンデミック後の世界で高パフォーマンスを上げるポートフォリオを構築することができる。
 
 
 
 

 

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。オリジナルの英語版はこちら。

 

 

本文中の見解はリサーチ、投資助言、売買推奨ではなく、必ずしもアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)ポートフォリオ運用チームの見解とは限りません。本文中で言及した資産クラスに関する過去の実績や分析は将来の成果等を示唆・保証するものではありません。 
 
当資料は、2021年10月4日現在の情報を基にアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーが作成したものをアライアンス・バーンスタイン株式会社が翻訳した資料であり、いかなる場合も当資料に記載されている情報は、投資助言としてみなされません。当資料は信用できると判断した情報をもとに作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。当資料に掲載されている予測、見通し、見解のいずれも実現される保証はありません。また当資料の記載内容、データ等は作成時点のものであり、今後予告なしに変更することがあります。当資料で使用している指数等に係る著作権等の知的財産権、その他一切の権利は、当該指数等の開発元または公表元に帰属します。当資料中の格付けは特に記載のない限りABの定義に基づきます。当資料中の個別の銘柄・企業については、あくまで説明のための例示であり、いかなる個別銘柄の売買等を推奨するものではありません。アライアンス・バーンスタイン及びABはアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーとその傘下の関連会社を含みます。アライアンス・バーンスタイン株式会社は、ABの日本拠点です。
 

 

 

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