2021年11月は、世界経済の転換期の始まりとなりそうだ。この2年間、主要な中央銀行は、新型コロナウイルスが引き起こした危機に対して、経済活動と金融市場を支えるために並々ならぬ支援を行ってきた。今、多くの国の中央銀行は、金融政策正常化へのステップを開始する準備ができているように見受けられる。
 
米連邦準備制度理事会(FRB)は、11月3日の政策決定会合で、量的緩和のペースを縮小するテーパリングの開始を発表し、金融政策の主なターゲットを資産購入から政策金利に戻すことを示唆するものと思われる。また、翌日に開催されるイングランド銀行(BOE)の会合では、利上げが実施されるか、少なくとも利上げが近いことを示唆する可能性がある。他の多くの小規模な中央銀行も同様の移行に着手している。
 

なぜ今、金融政策の正常化を始めるのか??

なぜ中央銀行は突如として金融政策の正常化に着手し始めたのか?それには良い理由と悪い理由がある。良い理由としては、世界経済がパンデミックの試練からほぼ回復したことが挙げられる。米国と世界の国内総生産(GDP)は、危機以前の水準、またはそれ以上に順調に戻ってきている。成長が回復し、2022年も堅調に推移する可能性があるため、足元は政策支援に経済が大きく依存する必要性はそれほど高くない。
 
他方、悪い理由としては、成長の回復に伴うインフレの高まりがある。政策担当者は依然として物価上昇のペースが鈍化すると予想しており、アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)も同様に予想をしているが、当初の予想よりもインフレは上昇し、長く続いている。コモディティ価格は上昇しており、サプライチェーンは依然として目詰まりしているため、インフレ率が大幅に低下するまでには、さらに数カ月を要すると思われる。そして、インフレ率の上昇が長引けば長引くほど、長期的なインフレ期待が高まる可能性が高くなる。インフレ期待が高まることによって本物の物価上昇を引き起こす可能性があるため、これは中央銀行にとっては望ましくないシナリオなのだ。
 

米国、英国、そして他の国も・・・。
金融政策正常化のキックオフは間近に迫っている

強い成長率と物価の上昇に直面する中、世界中の中央銀行は、政策正常化の開始が近いことを示唆している。FRBの高官も、テーパリングがすぐそこまで来ていることを明確にしているほか、BOEのアンドリュー・ベイリー総裁も、物価上昇圧力に対抗するためには、同国の中央銀行は「行動しなければならない」と述べている。他の国の中央銀行も、利上げや資産購入の縮小を行う用意があることを示しているのが現状だ。
 
金融市場はこのメッセージを確実に受け止めており、今後2、3年の間に行われる利上げに対する期待は過去1カ月間で急上昇した(図表)。米国、英国、そしてその他のほとんどの国の2年物国債利回りは、パンデミックの発生以来、最も高い水準になっている。ユーロ圏やオーストラリアなどの政策担当者が慎重な市場においてさえ、金利は上昇している。例外は日本で、日銀に関しては向こう数年程度の時間軸では利上げの可能性はほぼ意識されていない。
 
市場は金融政策正常化のメッセージを受け取る.png
 

新たな政策路線が投資家にとって意味するものは?

これまで大規模な金融緩和が強い金融市場を支えてきたことを踏まえると、その支援が弱まるということは、ここから先の道のりはより険しいものになるということになるかもしれない。しかし冷静に状況を分析すれば、現在の金利水準は歴史的に見ても極めて低く、中央銀行が金融緩和姿勢を弱めた後も低水準の金利は続くと見込まれる。
 
足元の調整にもかかわらず、金融市場では米国の政策金利はほぼ2年間にわたって1%未満で推移すると予想されている。これは歴史的に見ても景気にブレーキをかけるような水準とはいえない。また、経済成長の見通しは、金利上昇に耐えうるだけの力強さを持っているとABは判断している。つまり、金利の上昇は、世界経済がコロナ危機からどれだけ回復したかを反映したものであり、憂慮すべきものではないと結論している。
 

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
オリジナルの英語版はこちら

本文中の見解はリサーチ、投資助言、売買推奨ではなく、必ずしもアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)ポートフォリオ運用チームの見解とは限りません。本文中で言及した資産クラスに関する過去の実績や分析は将来の成果等を示唆・保証するものではありません。

当資料は、2021年10月22日現在の情報を基にアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーが作成したものをアライアンス・バーンスタイン株式会社が翻訳した資料であり、いかなる場合も当資料に記載されている情報は、投資助言としてみなされません。当資料は信用できると判断した情報をもとに作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。当資料に掲載されている予測、見通し、見解のいずれも実現される保証はありません。また当資料の記載内容、データ等は作成時点のものであり、今後予告なしに変更することがあります。当資料で使用している指数等に係る著作権等の知的財産権、その他一切の権利は、当該指数等の開発元または公表元に帰属します。当資料中の個別の銘柄・企業については、あくまで説明のための例示であり、いかなる個別銘柄の売買等を推奨するものではありません。アライアンス・バーンスタイン及びABはアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーとその傘下の関連会社を含みます。アライアンス・バーンスタイン株式会社は、ABの日本拠点です。

当資料についてのご意見、コメント、お問い合せ等はjpmarcom@editalliancebernsteinまでお寄せください。

「マクロ経済」カテゴリーの最新記事

「マクロ経済」カテゴリーでよく読まれている記事

「マクロ経済」カテゴリー 一覧へ

アライアンス・バーンスタインの運用サービス

アライアンス・バーンスタイン株式会社

金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第303号
https://www.alliancebernstein.co.jp/

加入協会
一般社団法人投資信託協会
一般社団法人日本投資顧問業協会
日本証券業協会
一般社団法人第二種金融商品取引業協会

当資料についての重要情報

当資料は、投資判断のご参考となる情報提供を目的としており勧誘を目的としたものではありません。特定の投資信託の取得をご希望の場合には、販売会社において投資信託説明書(交付目論見書)をお渡ししますので、必ず詳細をご確認のうえ、投資に関する最終決定はご自身で判断なさるようお願いします。以下の内容は、投資信託をお申込みされる際に、投資家の皆様に、ご確認いただきたい事項としてお知らせするものです。

投資信託のリスクについて

アライアンス・バーンスタイン株式会社の設定・運用する投資信託は、株式・債券等の値動きのある金融商品等に投資します(外貨建資産には為替変動リスクもあります。)ので、基準価額は変動し、投資元本を割り込むことがあります。したがって、元金が保証されているものではありません。投資信託の運用による損益は、全て投資者の皆様に帰属します。投資信託は預貯金と異なります。リスクの要因については、各投資信託が投資する金融商品等により異なりますので、お申込みにあたっては、各投資信託の投資信託説明書(交付目論見書)、契約締結前交付書面等をご覧ください。

お客様にご負担いただく費用

投資信託のご購入時や運用期間中には以下の費用がかかります

  • 申込時に直接ご負担いただく費用…申込手数料 上限3.3%(税抜3.0%)です。
  • 換金時に直接ご負担いただく費用…信託財産留保金 上限0.5%です。
  • 保有期間に間接的にご負担いただく費用…信託報酬 上限2.068%(税抜1.880%)です。

その他費用:上記以外に保有期間に応じてご負担いただく費用があります。投資信託説明書(交付目論見書)、契約締結前交付書面等でご確認ください。

上記に記載しているリスクや費用項目につきましては、一般的な投資信託を想定しております。費用の料率につきましては、アライアンス・バーンスタイン株式会社が運用する全ての投資信託のうち、徴収するそれぞれの費用における最高の料率を記載しております。

ご注意

アライアンス・バーンスタイン株式会社の運用戦略や商品は、値動きのある金融商品等を投資対象として運用を行いますので、運用ポートフォリオの運用実績は、組入れられた金融商品等の値動きの変化による影響を受けます。また、金融商品取引業者等と取引を行うため、その業務または財産の状況の変化による影響も受けます。デリバティブ取引を行う場合は、これらの影響により保証金を超過する損失が発生する可能性があります。資産の価値の減少を含むリスクはお客様に帰属します。したがって、元金および利回りのいずれも保証されているものではありません。運用戦略や商品によって投資対象資産の種類や投資制限、取引市場、投資対象国等が異なることから、リスクの内容や性質が異なります。また、ご投資に伴う運用報酬や保有期間中に間接的にご負担いただく費用、その他費用等及びその合計額も異なりますので、その金額をあらかじめ表示することができません。上記の個別の銘柄・企業については、あくまで説明のための例示であり、いかなる個別銘柄の売買等を推奨するものではありません。