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ESG分析で新興国のポピュリズムを読み解く

                                                                                                                                                                     

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アドリアーン・デュトワ
アライアンス・バーンスタイン・リミテッド
アフリカ担当シニア・エコノミスト
 
 
 
  
 

2021年11月5日

 
 
新型コロナウイルスは新興国全体で不平等の拡大や社会問題の深刻化をもたらし、ポピュリスト的な動きの加速につながっている。いくつかの新興国にはとりわけぜい弱になりうる共通点があり、環境、社会、ガバナンス(ESG)分析の多面的な活用は、こうした潜在的にリスクの高い国を見つけ出す一助となりうる。
 
危機はしばしばポピュリズムの拡大を生み出す。当初は行動制限の影響で不穏な動きが抑え込まれていたかもしれないが、パンデミックによる不平等と貧困の拡大は市民の不満を高め、政治や政策に影響を与えている。さらに、若年層の比率が高い多くの新興国への影響は注目に値する。人口構成の若さは通常、経済成長にとってプラス要因となるが、パンデミックによって企業活動が縮小し、失業者の増加が長期化すれば、逆に大きな問題をもたらしかねないからだ。
 
社会や経済の状況がよりぜい弱で、新型コロナウイルスの打撃が深刻な国では、政治や政策に関する変化が生じる可能性が極めて高い。変化を求める圧力が政治に波及する結果、これらの国の政治家がポピュリスト的な政策に走り、財政再建を遅らせたり、民主主義のレベルを引き下げたりする可能性がある。
 

政治や政策のリスクを理解するにはESGの考慮が重要

新型コロナウイルスのパンデミックは、新興国全体の所得、健康、教育に悪影響を及ぼした。最も大きな影響を受けたのはスキルの低い労働者で、社会的セーフティネットがぜい弱な低所得国では貧困層が急増している。アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)ではソブリン債を評価する際に、こうした悪影響を含む幅広い要因を考慮したESGフレームワークを活用している。
 
新興地域の中でも、人材開発や平等の面で最も大きな打撃を受けたと見られるのはアフリカだ。アフリカでは人口構成の若さで新型コロナウイルスによる死者が抑えられている模様だが、パンデミックでいつまでも人材開発が妨げられれば、潜在的な経済成長力が損なわれかねない。そうした観点から見れば、アフリカは新型コロナウイルスによって政治や政策が変化するリスクが最も高い。そして、アジアや中南米でも、人口動態や所得格差が似ているため、アフリカと同じようなリスクに直面している新興国は少なくない(図表1)。
 
新興国はG7の平均に比べ人口構成が若く、格差も大きい.png
 

経済的ポピュリズムが政策に直接影響

経済的ポピュリズムでは一般的に、成長と所得再分配を優先し、財政やインフレ・リスクへの対応は後回しになる。コロナ危機は不平等と貧困を悪化させたため、経済的なポピュリズムが高まり、民主主義の原則が損なわれる可能性がある。新興国の経済成長が停滞し、所得や雇用の低迷が続けば、ポピュリスト的な政策が勢いを増しかねない。そうした政策としては、社会保障の拡大、債務上限の引き上げ、緩和的な金融政策とセットになった財政出動などが挙げられる。
 

アフリカは新型コロナウイルスの余波が最も大きい

貧困や格差がとりわけ顕著なアフリカでは、指導者の交代や社会不安など、政治的な基盤の変化がすでに起こり始めている。
 
アフリカ北部では、チュニジアのサイード大統領が首相の解任と議会の一時停止に踏み切り、全ての権限を自分に移管した。南アフリカでは、ラマポーザ大統領が極めて深刻な社会不安に対処するため内閣を改造し、その一環として情報収集や諜報活動を自ら直接監督及び管理する体制を構築した。サイード氏とラマポーザ氏は汚職防止を推進しており、有権者の高い人気を得ている。しかし、パンデミックを経て国民の不満が高まっており、経済の回復が遅れれば、2人の立場が揺らぐ可能性もある。
 
ザンビアでは2021年8月に行われた大統領選挙で野党党首のハカインデ・ヒチレマ氏がルング大統領に地滑り的な勝利を収め、予想外の地殻変動が起きた。ザンビア経済はパンデミックのかなり前から低迷していたが、新型コロナウイルスがそれに追い打ちをかけ、2020年にはユーロ債が債務不履行に陥った。また、政府の非協力的かつ不透明な政策によって重要な多国間支援が受けられず、危機がさらに悪化した。選挙では現職のルング氏が依然として有利だと予想されていたが、実際には変化を求める若年層の動きにより、投票率は70%(2016年は58%)に急上昇した。
 

選挙による変化にも注目が必要

これまで述べてきたような自発的な政治変化が新しいノーマルの一部となる一方、より正式な形である選挙は引き続き重要であり、良くも悪くも転換点となる可能性がある(図表2)。
 
選挙は正式な圧力ポイント.png
 
2022年は、アフリカではアンゴラ、ケニア、南アフリカなど、いくつかの国で選挙が行われ、その結果次第で政治や政策の方向性が変わる可能性がある。中南米では、ブラジル、チリ、コロンビア、コスタリカなどで今後の方向性を左右し得る選挙が迫っている。アジアでは、マレーシアやフィリピンなど一部の国における選挙は投資家にとって大きな関心事ではないかもしれないが、危機後の国民感情や政策のシグナルについては引き続き注視していくことが重要だ。
 

主要なESG指標は潜在的な圧力ポイントを浮き彫りにする可能性

政治や政策における変化をすべて予想することは不可能だが、ESG指標の注意深い分析は、より急速に変化が起きている場所を把握する一助となりうる。上述したように、貧困と所得格差はポピュリズムを生み出す温床となっており、人口動態も失業率や変革への意欲を左右する重要な要素であるからだ。また、貧弱なガバナンスは社会問題を悪化させ、タイムリーで効果的な改革を妨げる恐れがある。新興国は依然として大きな可能性を秘めているが、それぞれの国のESGに関する状況を多様な角度から分析し、あらゆるリスクを評価することが重要である。
 
 
 
 
 

 

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。オリジナルの英語版はこちら。

 

 

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