数カ月の準備期間を経て、米連邦準備制度理事会(FRB)は先日、長い間予想されていたテーパリングを発表した。2021年11月末から、米国の中央銀行は、国債とMBS(住宅ローン担保証券)の購入ペースを毎月合計150億米ドルずつ減らしていくことになる。
 
アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB)」が事前に想定したとおり、テーパリングの発表は市場の動揺を引き起こすことなく行われた(以前の記事『FRBはテーパリング着手へ向かう・・・だが「タントラム(市場の動揺)」の懸念は小さい』ご参照)。2013年の経験から学んだFRBは、事前に意図を明確にすることで市場の激しい反応を回避したのである。規則的な購入額削減を実施することができれば、FRBは8カ月後の2022年半ばに今回の量的緩和(QE)を終了することになる。
 
そして、そこからの展開がさらに興味深いこととなる。
 
一般的には、QEで資産購入を続けている間は、FRBは金利を上げることができず、また、上げるつもりもないと考えられているし、ABもそのように予想している。この場合、FRBが利上げできるのは早くても2022年の夏ということになる。実際、市場はその可能性を織り込んでおり、米国のイールドカーブは現在、2022年末までに25ベーシス・ポイントの利上げを2回実施することを織り込んでいる。これはほんの数週間前とは大きな違いで、市場はインフレへの懸念を強め、中央銀行が物価上昇圧力に積極的に対応するとの確信を深めている。
 

なぜFRBの政策方針がハト派だと受け取られたか?

FRBはその意図についてより慎重な姿勢を示してきた。テーパリングの開始により利上げが視野に入ってくるが、他の多くの中央銀行とは異なり、FRBは行動についてあまり確信が持てないようだ。パウエルFRB議長は、QEプログラムを終了することで、政策担当者はインフレの上昇に対応できる状態になると認めている(無論、必要に応じてということだが)。
 
この「必要に応じて(if necessary)」という文言は、FRBの考え方にとって重要である。FRBは、米国のインフレ率が高止まりするとは確信しておらず、経済がまだ完全雇用に戻っていないとも考えている。完全雇用は、通常は利上げを開始する前に達成しなければならない基準でもある。この不確実性により、今週の連邦公開市場委員会(FOMC)における政策方針は市場の予想よりもハト派的なものととらえられた。
 
要するに、インフレに関するFRBの考え方は、この6週間の間に市場ほどは変化しなかったということになる。FRBは、インフレがこの後どうなるかについてさまざまな可能性があると考えており、中にはより積極的な金融政策の対応を必要とするシナリオも含まれるわけだが、少なくとも今週の会合では、経済がそのようなシナリオに向かっているとは結論づけていないのだ。
 

FRBは依然としてインフレの上昇を一過性のものと考えている

FRBはインフレの上昇を認めているが、それは 「一過性と期待される要因を大きく反映している」と表現している。前回のFOMC声明では、インフレ率の上昇を 「主に一過性の要因を反映したもの」と表現していた。以前よりも注意深い表現を使っているが、両者の違いはパラダイムシフトとは言えない。
 
パウエル議長は会合後の記者会見でも同様のメッセージを発しており、足元の物価上昇を認めながらも、サプライチェーンが回復してインフレが弱まるとの見通しを繰り返した。同氏は、状況に対する評価が変わればFRBは対応すると示唆したが、このコメントは、インフレが一過性との評価がまだ覆えされていないことを明確にしている。より持続的なインフレへの政策対応についての議論は、仮定の話とされた。
 
 

様子見姿勢を続けるFRBの考えについて、
12月にはさらなる手掛かりが示されよう

これらのことは、FRBがインフレ圧力に対応できないということを意味するものではないが、FRBが市場参加者ほどには緊急性を感じていないことを示唆する。
 
この両者の見解の相違は今後も続くのだろうか? それは時間が経ってみないとわからない。FRBの12月の会合は非常に興味深いものになるだろう。FOMCは新しい経済予測と金利予測を発表し、その中には金利予測のドットプロットの更新も含まれるからだ。しかし今のところ、FOMCは米国の金利の将来的な進路について明確なメッセージを送る前に、より多くの情報を収集することで満足しているようだ。
 
 
 
 
 
 

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