新型コロナウイルスによって世界中の銀行が大きな打撃を受けるのではと悲観する見方もあったが、こうした予想とは裏腹に銀行のバランスシートは世界金融危機(GFC)以来、最も健全な状態にある。この驚くべき結果は、銀行の劣後債に投資する者にとって、特に朗報である。

GFC以後、規制当局が資本規制を厳格化したことにより、世界中の銀行はバランスシートの再建を余儀なくされた。そして15年近く経った現在、銀行のファンダメンタルズはピークの水準に達している(図表1)。

銀行のバランスシートは3つの主要指標を見ても非常に健全であることが分かる.png

自己資本Tier1(BISの記事『Definition of capital in Basel III – Executive Summary』(英語)ご参照)の自己資本バッファーは、過去最高の水準に近づいており、資産のクオリティ(不良債権比率により測定)は極めて健全である。また、かつてない規模の資金が中央銀行(特に欧州)によって市場へ供給されているほか、大量の顧客預金の流入、借入需要の停滞等の要因があいまって、バランスシートの流動性も大きく高まっている。

銀行の信用格付はコロナ危機以前の水準に戻っており、格付機関が格付手法を微調整し、さらに引き上げられる可能性もある。アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)は、今後、銀行が資本の一部を株主に還元し、バランスシートの健全性が低下すると予想するが、それでも銀行の自己資本は十分な健全さが維持され、社債投資家を強く後押しする状況が続くと考えている。

政府介入が多大な助けとなった

大多数の銀行が、財務的に良好な状態でコロナ危機を迎えたが(以前の記事『Can AT1s Survive Coronavirus?』(英語)ご参照)、政府及び中央銀行の介入も決定的な役割を果たした。大規模な支援プログラム及び景気刺激策のパッケージにより、多くの企業や個人は、コロナ禍によって最悪の状況に陥ることを回避できた。その結果、先進国の銀行に対する圧力は緩和された。

これに基づけば、銀行が2020年に計上したコロナ関連での多額の貸倒引当金は、今となっては過度に保守的なものと思われ、一部の引当金はすでに戻し入れが始まっている。銀行は、2022年及び2023年に貸倒れが増加する可能性もあるが、こうした事態に対し、銀行は引当金をすでに計上しており、十分な備えをしているように見える。そして、これまでの経済予想が継続的に上方修正されていることを考えれば、何かが起こったとしても、2022年後半にはさらに引当金を戻し入れる余地があるだろう。

社債投資家は恩恵を受けるだけではなく、
同時にいくばくかの脅威にも直面する

低金利、競争加速、情報技術(IT)投資コストの負担増、(短期的な)貸倒引当の制約を受け、株式の収益性は依然弱含みであるが、金利上昇局面への移行が銀行の収益の押し上げ要因となるであろう。しかし、銀行の社債投資家にとって、収益性が銀行の資本増強能力に影響するものでない限り、さほど重要ではない。社債投資家にとって主要な関心事は、キャピタルロスから守る資本バッファーの強さなのである。そして、現在の銀行の極めて健全なバランスシートを踏まえると、偶発転換社債等の劣後社債のバリュエーションは魅力度が高く、特にAT1債(その他Tier1債)に着目している。

銀行の社債投資家は、コロナ後の世界においても追加的な恩恵を受け続ける。例えば、GFC時代の負の遺産であった問題のほとんどは解決済である。規制当局のストレステストはより信頼性の高いものとなり(現在は気候変動リスクも加味される)、GFC以前に比べ安心感が増している。また、銀行間の合併・買収に対する当局の支援拡大(特に欧州)も期待でき、銀行の強化及び社債投資家の保護強化につながるであろう。

さらに、銀行のビジネスモデルはより多角化しており、手数料ビジネスの比重が高まっている。また、よりグリーンなビジネスモデルへ向かう世界的なトレンドは、収益性の高い融資機会を増加させるであろう。

一方で、銀行の社債投資家は、新しい脅威にも直面している。銀行は、余剰資本と見なされるものを、配当や自己株式取得という形で株主に還元しようとするだろう。この動きは、米国の銀行でより顕著になると思われる。ABは、これによりCET1(普通株式等Tier1)バッファーがやや縮小すると予想するが、最低必要水準に近づき過ぎる程に自己資本を損なうことは、規制当局が容認しないであろうと考える。

次に到来するかも知れない危機では、銀行にとってより対応が困難なものになる可能性がある。各国政府はパンデミック中、桁外れの政策サポートを提供してきたが、将来の緊急事態においてもこれ程気前良く対処できるかは疑問である。また、テクノロジーの発展は利益を生み出す一方、新たな競争を引き起こす。今のところ、銀行は新規参入しようとする新たな事業者を上手くかわしてきているが、こうした流れは依然としてリスクの1つと認識している。最後に、大規模なサイバー事件の可能性は、引き続き重大かつ数値化できない脅威となる(図表2)。

グローバルな金融機関にとっての強み、弱み、機会及び脅威(SWOT).png

しかし、今のところ、主要なリスクの大部分は中期~長期的なものであり、社債投資家をわずらわせる可能性は低い。ただし、これは、2022年が順風満帆となることを意味するわけではない。ABは、この1年がより変動の大きい年となり、社債投資家にとっては2021年よりトータル・リターンが低くなる可能性もあると予想している。それでも、特に銀行劣後債からの高い収益機会は、依然として非常に魅力的である。

銀行の劣後債は説得力のあるレラティブバリューを提供

銀行のシニア優先証券及び非シニア優先証券の現在のバリュエーションは、すでに明るいニュースの多くを反映している。ABはさらに、欧州中央銀行(ECB)の融資助成金スキーム(TLTRO)(ECBによるTLTROの説明(英語)ご参照)の条件変更が予定されていることから、2022年内に欧州の金融機関からシニア債の発行が増加すると予想しており、シニア債の需給環境は良好さが後退する可能性がある。一方、劣後債の純供給額(新規発行から償還を差し引き)はゼロかそれに近い水準になると思われるため、良好な需給環境が維持され、その価格は引き続き魅力的なものになると見ている。特にAT1債は、同等のハイイールド債と比較しても目を引くものとなっている(図表3)。ABは、より好調な欧州の銀行が発行するAT1債が、リターン最大化とリスク軽減の間の最適なトレードオフを提供する投資機会であると考える。

AT1債のスプレッドは、他の債券クラスより魅力的である.png

AT1債は一連の信用格付の各ポイントにおいてより高いバリューを示すのみならず、その具現化されたリスクも、銀行株式と比べて低い(図表4)。そして、過去5年間のハイイールド債のデフォルト率が年間3~4%だった一方で、AT1債が株式転換された例はなく、返済が繰り延べられたケースも数えるほどであった。

AT1債は株式投資のより安全な代替手段となりうるか?.png

もちろん、これらの統計データは時と共に変化する。しかし、ABは、銀行のバランスシートがこれほど健全であることを考えれば、リスクバランスは劣後債に有利であると見ている。

 

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