電気の出現からインターネットの普及に至るまで、テクノロジーはコスト削減をもたらしてきた。今日の投資家は、一部のテクノロジー企業はインフレ圧力が高まる中でも製品やサービスの価格を引き上げることができ、厳しい経済環境においてもファンダメンタルズの魅力度を高めていることに気づくかもしれない。

 

何十年もの間、新たなイノベーションが現代の生活に浸透するのに伴い、テクノロジー企業は変化を加速させ、効率性を高め、コストを引き下げ、自らの利益をも削減してきた。しかし今日では、サプライチェーンの混乱やインフレを背景にパワーバランスが顧客から一部のテクノロジー企業にシフトしたことで、多くの企業が価格を引き上げ、利益を拡大する機会を手にしている。

 

2022年は株価が割高な水準にある高成長株に見直しの動きが出る中、テクノロジー銘柄は激しい売りを浴びている。だが、ボラティリティが収まれば、インフレの恩恵を受け、価格決定力を持つテクノロジー企業は、長期的に有利な立場に立つことができるとアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)は考える。

 

本稿では、テクノロジー企業が現在の環境下で価格決定力を発揮する5つの方法を紹介したい。

 

1. 更新時の価格調整

同じサービスを受ける権利を継続するために、消費者が喜んで毎年の値上げを受け入れるような企業を想像してみてほしい。こうした企業は、他の企業がビジネスを展開する上で必要な資産や情報を有しているケースが多い。

 

携帯電話の電波塔会社もこのカテゴリーに入る。彼らは携帯電話会社に電波塔のスペースを貸している。電波塔の設置には規制があるため、携帯電話会社はカバーエリアを維持するために、自社の機器を特定の電波塔に設置し、そこにとどめておく必要がある。そのビジネスには、すでに構築されているネットワークに対する価格を年間3%程度引き上げる価値がある。さらに、世界の電波塔ネットワークが構築されていくのに伴い、さらなる成長が見込まれる。この業界には多くの企業が参入しているが、投資家は収益性の低い他の通信インフラへのエクスポージャーを持つ企業を避け、純粋な携帯電話向け電波塔会社に焦点を当てるべきであるとABでは考える。 

 

2. 販売価格の引き上げ: 代替品がない製品やサービス

価格を引き上げたいと思えば可能である企業や、市場がそれを受け入れてくれることが分かっている企業は、究極の力を持っていることになる。こうした企業は、どこでも使われていて代わりのきかない不可欠な製品やサービスを提供している。そして、彼らの利益率はインフレで押し上げられているわけではない。

 

マイクロソフトや、そのウェブベースのソフトウェア「Office 365」はこのカテゴリーに属する。同社は過去10年間に200以上の機能を追加してきたが、利用が急拡大しているにもかかわらず価格を据え置いてきた。2022年3月に行われる同社初の値上げは、現在の価格よりも月1〜2米ドル高くなるだけだが、サブスクリプションの種類によっては8.5〜25%の引き上げとなる。 

 

3. コスト増を転嫁

このグループに属する企業は、サプライヤーを通じた価格上昇による恩恵を受けている。これらの製品の再販業者は、価格上昇分(場合によってはそれ以上)を価格に転嫁することで、利益率を守りながら売り上げを伸ばしている。例えば、ITソリューションのプロバイダーであるCDWは、価格を引き上げているほか、顧客が従業員のデジタル作業環境をアップグレードしているという好ましい変化を追い風としている。これは業績拡大の秘訣となる。

 

金融テクノロジー企業も、こうした現象から利益を得ることができる。インフレ局面ではマスターカードで購入する商品やサービスの価格が上昇し、同社にとっては利用額に応じて得られる手数料収入が拡大することになる。

 

4. 隠れた強みを持つアウトソーシング・ビジネス

インフレ率の上昇を受けて企業は効率化を図っており、給与計算の自動化や人事のアウトソーシングなどもそうした対策の1つとなり得る。これらのサービス価格は賃金をベースとしている。労働市場がひっ迫すれば人件費が上昇するため、ADPなどの給与計算サービス会社にとっては、コストが膨らむことなく収入が増えることになる。それに加え、顧客企業は給与支払日の前に資金をサービス会社に送金するため、給与支払日までの期間に利息を得ることもできる。金利が上昇している上、この収入源は利益率が100%であるため、収益をさらに押し上げる要因となる。 

 

5. 企業の事業継続に必要な製品

インフレでコストが上昇する中、不可欠な商品やサービスはかつてないほど価格決定力が高まっている。多くの業界にハイテク電子機器を提供しているグローバルなサプライヤーであるアンフェノールにとっては、原材料の投入コストだけでなく、輸送費や運賃も高騰している。しかし、経営陣は、顧客がある程度のレベル、多くの場合は平均より低いレベルでも生産を継続するために極めて大幅な価格上昇を受け入れるようになっていると説明している。

 

足元のサプライチェーンの混乱は、自動運転の電気自動車からトースターまで、事実上あらゆる工業製品が半導体を必要としていることを思い起こさせた。半導体不足は連鎖的な影響を引き起こしている。

 

半導体製造装置メーカーのASMLは、半導体メーカー大手3社に製品を販売している。通常であれば、価格決定力を持つのは限られた顧客である。しかし、半導体メーカーは圧力にさらされており、なんとしても生産能力を増強したいと考えている。ASMLは、既存の技術をプレミアム価格で販売しているほか、より高価な最新ソリューションの受注残高が増えている。

 

一方、生産を継続できる半導体メーカーは、製品価格を引き上げている。例えば自動車メーカーは、従来の方法では十分な量の半導体を手に入れることができず、今では半導体ベンダーと直接取引し、プレミアム価格を支払っている。

 

米連邦準備制度理事会(FRB)の最新の声明に基づけば、インフレとの戦いはしばらく続きそうだ(以前の記事『FRBの金融政策スタンス、一段とタカ派的に』ご参照)。テクノロジー株の急落は、このセクターに対するエクスポージャーの見直しを投資家に促すことになった。賢明な投資家は、インフレが収束するまで、そしておそらくそれ以降も、テクノロジー企業が備えているインフレに対する防衛能力を活用することができる。

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。オリジナルの英語版はこちら。
 
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