快適な退職後にむけて何十年にもわたり準備してきた年金加入者は、最終的には積み立てた資産をどのようにして定期的な収入に変換すればよいのか、という問題に直面する。収入を確保することこそが積み立ててきた最大の理由だからだ。だが、どうすればそれが達成できるのかは、大部分の人がわかっていない。アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)の最新「年金加入者が考えていること(Inside the Minds of Plan Participants)」調査が明らかにした内容だ(図表1)。

 
退職後に向けた積み立て.png
 

自信、そして時間のなさが収入の見通しをあいまいに

収入確保は優先順位が高いにもかかわらず、収入を実現することはできていない。このギャップはなぜ生じるのだろうか。1つは自信が持てていないことだ。年金加入者の半数近く(46%)が投資対象を自分で管理したいとは考えておらず、ほぼ同数が、老後の収入を確保するというゴールのために確定拠出年金(以下、DC)プランのラインナップの中から金融商品への配分に自信が持てていないとの回答をしている。資産を積み立てていかなければというモチベーションが下がっていることも、投資に対する自信の低さの背景にあるのかもしれない。というのも、44%の回答者が、自らの投資が残りの人生を支えるのに十分な収入をえられることに自信を持てていないことを認めているのである。

 

こうした不安感は、収入の持続可能性に対する加入者の認識をゆがめるものである。退職後に備えた資金が50万米ドルだったとして、毎年この資産の何パーセントまで使っても資金が底をつくことがないと思うかを加入者に聞いたところ、回答は小さい数字から大きい数字までばらけた結果となった(図表2)。

 
加入者の退職後の収入に対する確信度はまちまち.png
 

最も多かった回答は「4%~6%」だったが、これは、一世代前の金利が今よりずっと高かった時代であればあり得る数字だ。しかし現在ではこの数字の現実味は大きく低下している。しかも多くの年金加入者は、これよりさらに大きな期待をしており、「1%~3%」という現実的な支出ペースを回答したのはわずか12%にとどまった。

 

加入者はますます自らの資産を管理下に置くことを望んでいる

年金加入者が先行きの収入に不安感を抱いていることは、DCプランを運営する企業側が抱える大きな懸念の1つだ。デフォルト商品、自動加入や自動掛金増額といった機能はいずれも、加入者が積極的に関与する必要なく退職後の収入を積み上げることを支援するためのものだ。

 

しかし、ABの調査によると、こうした措置は退職する多くの加入者が望んでいること、すなわち自らの資産を管理下に置くことや柔軟性をもたらすものではない。そんな中、加入者が求める自主的な管理と確実性をもたらす方法の1つとして注目されているのが、収入保証を活用したソリューションだ。

 

年金のように保険機能を利用して、終身年金のように、退職後に一定額の収入を保証する、もしくは一定の率での引き出しに対する保証があれば、これらメリットが提供できるし、大部分の加入者が希望する内容に沿っているように思える。これに加えて、たとえ年間収入の保証額が1万米ドル減少したとしても、可能ならば自分の退職後の資産にいつでもアクセスでき、それを成長させたい、という加入者は67%にも上った(図表3)。

 
加入者は自主的に管理できることと柔軟性を希望.png
 

すべての収入保証は平等ならず

加入者が退職後資産をよりしっかり管理したいと望むようになったのは、退職後の人生をより充実したものにするための大きな前進であるとABは考える。しかし、管理には柔軟性、機会、アクセスが必要であるにもかかわらず、すべてのインカム・ソリューションがこれらを備えているわけではない。例えば、予想可能で保証のある収入を得るために一括払いで定額年金を購入したら、残りの生涯にわたり一定の収入を得ることができる。ただし、この収入は増加することがなく、物価が上昇すれば購買力が低下してしまうリスクがある。

 

したがって、このような収入保証を提供するソリューションのすべてが余裕ある退職後生活につながるわけではない。退職前の人の、わずか10人に1人しか企業年金制度以外の年金の購入を検討しておらず、43%が具体的なソリューションを検討していないのは、こうした状況が背景にあるのかもしれない。つまり、インカム・ソリューションには改善が必要ということになる。この点に関しては、柔軟性が高く、自分の資産にいつでもアクセスでき、かつ資産の成長も見込める収入保証のソリューションがあるならば、DCプラン内に資産を残すことを、加入者の20%近くが希望していることは朗報であった。

 

変容するインカム・ニーズは現実的、対応可能

加入者が退職後に求めるものははっきりしている。当てにできる確実な収入だ。彼らはまた、抽象画のようにも思える難解な話題を具体的でわかりやすい形に解読するための支援も求めている。そして、長期的な成長を狙い市場に投資したり、わずらわしさを感じることなく資産にアクセスできる手段を求めている。

 

こうした希望は合理的であり、実現可能なものであり、インカム・ソリューションはこれらに対応できるのみならず、利用しやすくてきちんとした説明が用意されているものでなければならない、というのがABの考えだ。大量の団塊世代が退職を迎える今、加入者の老後の収入の確保は、多くのDCプランの運営者にとって受託者としての役割を果たすべき領域だ。インカム・ソリューションの選択肢は幅広く存在するが、残念ながらこれら目標のすべてに対応し、積み立てた資産を加入者の余生にわたり快適な年金生活を送るためのインカムへと替えてくれるものはほとんどないのが現状だ。しかしながら、これらは技術的には実現可能なものであり、受託者としてそれを追求することが必要だと思われる。

 

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。オリジナルの英語版はこちら。
 

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