米連邦準備制度理事会(FRB)は、政策金利を25ベーシス・ポイント引き上げた( FRBのプレス・リリース(英語)ご参照)。また、2022年後半にかけ会合ごとに利上げを継続する可能性を示唆し、バランスシートの縮小を間もなく開始することを明らかにした。

 

FRBの姿勢はかなりタカ派的に聞こえるし、少なくとも2021年12月に発表された前回のマクロ経済予想よりもタカ派姿勢を強めるのは当然だ。足元は当時よりもインフレは激化し、かつより深く定着しており、市場の期待もすでにこの状況を織り込んでいた。そのため、2022年3月のFRBの発表は予想より少しタカ派的であったが、パラダイムを変えたというわけではない。

 

米国経済は利上げに耐えられる状況にある

ウクライナ戦争は今日の不確実性の最たるものであり、FRBや他の誰にとっても、長期的な影響を明確に把握するには時期尚早といっていい。FRBの声明と戦争に関するパウエルFRB議長の発言は、主に事実に基づいたものであり、予測的なものではなかった。

 

パウエル議長は、戦争がインフレを押し上げ、経済成長を低下させる可能性が高いと指摘しただけで、これは一般論の域を出ない議論だ。FRBはこの2つの結果のバランスを見極めた上で、戦争によって経済見通し、ひいては政策見通しを変更する必要があるかどうかをこれから判断することになる。

 

当初考えられていたよりも深刻で根強いインフレ

戦争の影響を抜きにしても、インフレと成長に関するFRBの予想は前回のマクロ経済予測時から変化している( FRBのプレス・リリース(英語)ご参照)。インフレは中央銀行が考えていた以上に激しく、米国経済に深く入り込んでおり、FRBはインフレ見通しを引き上げざるを得なかった。一方、持続的なインフレは購買力を低下させ、その結果、経済成長率の見通しも引き下げられた。

 

FRBはインフレ指標であるコア個人消費支出の2022年予想を2.7%から4.1%に引き上げ、2023年と2024年についてもやはり引き上げた。この結果、いまは少なくとも2025年までインフレ率が2.0%に戻ることはないとみていることになる。他方、2022年の経済成長率見通しは4.0%から2.8%に引き下げられたが、これは実質的な購買力の悪化と商品価格の高騰を反映したものである。エネルギー価格が今後大きく変動すれば、インフレ率と経済成長率の見通しをさらに修正する必要が出てくる。

 

この物価上昇と成長率低下に対してFRBが取る対抗策は金融引き締め策である。中央銀行の新しい「ドットプロット」に基づき、連邦公開市場委員会(FOMC)のほとんどの参加者は、2022年の残り6回の全ての会合で利上げを行うことを予想している。また、1回で通常よりも大幅な0.5%以上の利上げ実施を予想する参加者も複数いる。 

 

FRBの利上げの経路における急速な変化

FRBは短期間に利上げの軌道を大きく変えた。最新のドットチャート(FOMC参加者による政策金利水準の予想)のうち最も弱気なものは、中央銀行による今年の利上げ回数をあと4回とするものである。4回という数字は、わずか3カ月前には最もタカ派的なものであった。

 

新しいドットプロットに基づくと、2022年のFF金利の目標金利は、あと100ベーシス・ポイントの利上げを意味する1.375%から3.125%までの範囲となる(3.125%ということは、今後6回の会合で2.75%もの追加利上げが適切であると考えているメンバーがいる)。2022年中の利上げ幅を2%以上とする参加者は少数派ではあるが少なくない(16人中7人)。今年の会合数と併せて考えると、この7人の参加者は今年中に少なくとも1回は50ベーシス・ポイントの利上げを行うと予想している。

 

今後の金利上昇を反映した見通し

戦争の影響もあり、経済の不確実性は極めて高く、FRBが当面の見通しを立てることは通常より困難な状況にある。アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)の予想も、他の予想者と同様に、ウクライナの動向とそれに伴う商品価格の変動に大きく依存する。

 

ABは、現在入手可能な情報に基づき、5月に追加の0.25%の利上げ実施、その際にバランスシートの縮小を開始することを発表すると予想している。その後、2022年内にさらに1.25%、少なくとも1回(おそらく6月)は0.50%の利上げを実施する可能性があると考える。引き締めは経済成長を減速させるが、経済活動を停止するまでには至らず、2022年10-12月期から2023-2024年にかけて利上げペースを緩め、インフレ率を徐々に目標値に戻すという計画を想定する。

 

また、FRBがバランスシートの縮小を政策引き締めツールの一部として明確に検討していることは興味深い。もしFRBがバランスシートの縮小を利上げの代わりと考えるなら、保有債券の再投資額の決定をより機動的に使ってくるかもしれない。これは、バランスシートの削減は機械的に行われ政策意図が小さかった前回の利上げサイクル時とは大きく異なるアプローチといえるだろう。

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