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債券投資家から見たガバナンス: 株主視点との相違

                                                                                                                                                                     

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パトリック・オコネル(写真)
アライアンス・バーンスタイン・エル・ピー
債券運用 責任投資 リサーチ-ディレクター
 
 
ダイアナ・リー
アライアンス・バーンスタイン・エル・ピー
コーポレート・ガバナンス ディレクター
責任投資 ESGアナリスト
 
 
ジェーンゲイル・オリンジャー
アライアンス・バーンスタイン・エル・ピー
社債リサーチ・アナリスト
 
 
ロバート・シュウォルツ
アライアンス・バーンスタイン・エル・ピー
ハイイールド債券運用 ポートフォリオ・マネジャー
 

2022年3月30日

 
 
環境、社会、ガバナンス(ESG)要因は、投資のサステナビリティにとっていずれも重要である。ガバナンスは最後に記載されているが、債券投資家にとって決して後回しにすべき問題ではない。投資家は組織のガバナンス(指揮及び管理するために用いられる手法やプロセス)を精査することによって、国家や企業の倫理観、リスク管理、全体的なサステナビリティに関する重要な情報を得ることができるからだ。
 

債券投資家と株式投資家はガバナンスの基本について
見解が一致しているが・・・

株式投資家と債券投資家は、優れたガバナンスにはステークホルダーの公正な扱い、適切な情報開示を伴う正確かつ透明な報告、経営陣と会社の利益相反が最小であることなどが含まれるという点で見解が一致している。だが残念ながら、すべての企業がこれらの基準を満たしているわけではない。
 
オンライン中古車販売を手掛けるカーバナ社の例を考えてみよう。カーバナの社債は、同じCCCの格付けを持つ他社をアンダーパフォームしてきた。カーバナの株主構成は、最高経営責任者(CEO)とその父親が筆頭株主として圧倒的な議決権を保有し、会社の支配権を握っている。同社は資金調達を継続的な株式発行に依存してきたため、将来的に資本へのアクセスが制限される可能性がある。また、取引可能な流通株が限られているため、株価や時価総額の変動が激しい。さらに投資家が最も懸念すべき問題は、CEOの父親が1990年に銀行詐欺で有罪となったことである。CEOと父親は今でも非常に親密な関係にあり、会社の支配構造は父親の前科と相まって、会社の財務諸表の信頼性に影を落としている。 
 

・・・ニーズが常に一致するわけではない

株式投資家にとってガバナンスが好ましくとも、債券の投資家にとってそれが必ずしも十分だとは限らない。投資において、一般的に債券投資家はリスク軽減を重視するが、株式投資家はリターンの拡大に焦点を当てる。例えば、経営陣が貴重なブランドをスピンオフして株主に還元すれば株式投資家は喜ぶかもしれないが、それによって既存の負債が同様に減少しない限り、存続企業の債券保有者にとっては負債、ひいてはデフォルト・リスクが増加することになる。また、株主は負債調達による配当の増額を経営陣に求めることがあるが、これは会社から株主への資本移転により、債券投資家の利益が損なわれることを意味する。
 
債券投資家は、投資先が資本構造における自分たちの利益を損なわないことを確認する必要がある。レバレッジドバイアウト(LBO)は典型例だ。米国のデパート小売チェーンのコールズがLBOの可能性について発表した際、株価は36%上昇したが、2037年償還の同社の債券価格は10%下落した。債券投資家にとっては、買収資金を負債で調達することにより同社の信用力が悪化するだけでなく、LBOの買い手が同社の不動産を売却して再リースすることにより、債券投資家に帰属する資産の減少につながるとの懸念が広がった。
 

信頼せよ、だが検証も必要

債券投資家にとって、強力な財務制限条項(コベナンツ)は不可欠である。発行されるすべての債券は発行体と投資家の契約に基づいている。債券の目論見書には、クーポン、満期、額面価格などに加え、大半の場合は財務制限条項が含まれている。財務制限条項は、発行体の借り入れコストを引き下げる一方で、発行体が債券保有者よりも他の当事者に有利な行動を取る能力を制限することで、債券保有者の保護策を強化する役割を果たす。財務制限条項はいわばガードレールであり、発行体のコミットメントとして真剣に受け止められている。発行体が重要な条項に違反した場合、当該債券はテクニカル・デフォルトとなる可能性があり、格下げや借入コストの上昇につながる。
 
しかしながら、投資家は財務制限条項に抜け穴がないか、慎重に点検する必要がある。例えば、ハイイールド債の財務制限条項でよく見られる抜け穴として、有担保債の発行は制限しているが、無担保債には言及していないケースがある。企業はこの弱点を利用して、バランスシートを無担保債で固め、有担保債のリスク・プロファイルを無担保債に対して大きく差をつけることがある。
 
もう1つの抜け穴は、債券保有者の利益よりも株式投資家の利益を優先させることである。例えば、パーティ・シティ社は、ある外部データサービスで中程度のガバナンス・スコアを得ているが、クレジットに焦点を当てたアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)の独自分析でははるかに低いスコアとなった。それはなぜだろうか?新型コロナウイルスのパンデミックにより、同社は2020年に3カ月にわたり店舗閉鎖を余儀なくされ、すでにぜい弱だった財務状況が一段と悪化した。同社は2012年のプライベートエクイティによる買収で、バランスシートに多額の負債を抱えている。資金繰りに窮した同社は2020年5月、2023年に償還する社債を保有する投資家に対し、2026年満期の新発債とのディスカウント価格での交換をオファーした。これを拒否した投資家が保有し続けた2023年償還社債は、2026年満期の新発債に著しく劣後することとなり、さらに、劣後していない同じような債券に対し低い価格で取引されることとなった。
 

外部データサービスについて

債券投資家は、債券の格付けやESGのデータサービスがありながら、なぜガバナンスに関する独自のファンダメンタルズ評価が必要なのか、疑問に思うかもしれない。こうした外部データは有益ではあるものの欠点もあり、投資家自らがガバナンスを精査しなければならないとABは考えている。格付会社やESGのデータサービス会社は独自の手法を活用しているため透明性を欠いており、会社ごとの比較もしにくい。それに加え、ESGのデータ・サービスは株式投資家の視点からガバナンスを評価していることがほとんどだ。その結果どうなるだろうか?彼らのスコアは債券投資家の視点を欠いているほか、非上場会社をはじめ、債券ユニバースの多くを見落としている。
 
格付サービス会社が見解を示した場合でも、もともとの評価に不備があり、状況が急速に悪化するケースがある。例えば、南米のスリナムは2016年に10年物、2019年に4年物のソブリン債を発行した。あるESGデータサービス会社は、同国のガバナンス・スコアを中程度の下限とした。しかし、これらの起債後にスリナムの経済や財政に関するデータが急速に手に入りにくくなり、四半期のデータが好ましい内容になるまで政府が情報開示を避けている様子が見受けられた。また、スリナム政府は投資家に対する政策プランの開示に消極的で、圧力を受けた現地の銀行は、リスク管理の限界を超える水準まで政府短期証券の購入を強いられた。
 
スリナムの政治リーダーを調査すれば、スチュワードシップが疑わしかったことが明白だ。デシ・ボーターセ前大統領(在任期間は2010~2020年)はかつてのクーデター首謀者で、コカイン密輸や殺人の前科があるほか、組織犯罪とのつながりもあった。彼の在任中、外貨準備は減少し、闇市場の為替レートは急騰し、国内総生産(GDP)に対する公的債務比率は15%から150%近くまで急上昇した。債券市場では新型コロナウイルスのパンデミックが始まった時点ですでにスプレッドが拡大していたが、ただでさえ苦しい経済状況はさらに悪化し、債券価格は額面1米ドル当たり30セントまで下落した。スリナム政府は債務再編を巡って2年にわたり交渉したが、合意には至らなかった。
 
投資プロセスにガバナンスを組み込むのは、見かけをよくするためではない。格付機関やサービス会社から提供されるデータに頼るだけでなく、それ以上に踏み込んだガバナンスに関する調査を行うことが、隠れた倫理的または構造的リスクの発見につながるからだ。また、ガバナンスを通じて、発行体と債券保有者の利益が一致しているかどうかを確認することもできる。投資先のガバナンスが悪かったことを後になって発見したいと思う投資家は誰もいない。発行体のガバナンス慣行を精査することは、ときに優れた投資と予想外の損失の分かれ目となり得るだろう。
 
 
 
 
 
 

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。オリジナルの英語版はこちら。

 

 

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当資料は、2022年2月23日現在の情報を基にアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーが作成したものをアライアンス・バーンスタイン株式会社が翻訳した資料であり、いかなる場合も当資料に記載されている情報は、投資助言としてみなされません。当資料は信用できると判断した情報をもとに作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。当資料に掲載されている予測、見通し、見解のいずれも実現される保証はありません。また当資料の記載内容、データ等は作成時点のものであり、今後予告なしに変更することがあります。当資料で使用している指数等に係る著作権等の知的財産権、その他一切の権利は、当該指数等の開発元または公表元に帰属します。当資料中の個別の銘柄・企業については、あくまで説明のための例示であり、いかなる個別銘柄の売買等を推奨するものではありません。当資料中の格付けは特に記載のない限りABの定義に基づきます。アライアンス・バーンスタイン及びABはアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーとその傘下の関連会社を含みます。アライアンス・バーンスタイン株式会社は、ABの日本拠点です。
 

 

 

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