投資家が割高なグロース株の評価を見直したことにともない、2022年2月中旬までバリュー株がアウトパフォームしてきた。インフレ率が高まり、金利が上昇しつつある今、幅広いバリュー銘柄、とりわけ堅実なファンダメンタルズを持つ企業にとって、回復に向かう環境が整いつつある。

 

2021年はスタイル別のリターンのパターンが揺れ動いた。2021年にはそれ以前とは異なり、世界のバリュー株とグロース株のリターンが逆転する場面もあり、年間のリターンはどちらも同水準となった。その後、2022年1月に株価が急落した場面では、バリュー株が大幅にアウトパフォームした。MSCI ワールド・バリュー指数が年初から2月15日までに米ドルベースで0.6%の下落であったのに対し、MSCIワールド・グロース指数は10.1%と大きく下落した。

 

インフレは市場を一変させる。投資家や中央銀行は今や、インフレが当初の予想より長期化すると認識しており、金利は引き続き上昇している。これは、株式投資家に問題をもたらすが、バリュー株にとっては追い風となる(以前の記事『Value Equities: Pinpointing Sources of Pent-Up Potential』(英語)ご参照)。金利上昇はあらゆる銘柄の株価収益率を圧迫する傾向があるが、グロース株がとりわけその影響を受けやすいのに対し、バリュー株は全般的に抵抗力がある。

 

バリュー株の大幅なディスカウントは継続

バリュー株は足元のアウトパフォーマンスにもかかわらず、グロース株に対するディスカウント幅は依然として過去最高に近い水準にある。2022年1月末時点で、MSCIワールド・バリュー指数の予想株価収益率は、MSCIワールド・グロース指数を50%下回っていた。投資家はこのディスカウント幅について、バリュー株が正常に機能していないことを示していると考えるかもしれない。実際のところ、収益性、利益見通し、バランスシートの強さという3つの重要な指標は、グロース株と比較したバリュー株のファンダメンタルズの強さが過去最高に近い水準にあることを示している(図表1)。

 
バリュー株はバリュエーションのディスカウント幅が歴史的な高水準に.png
 

ここ数年、グロース株の株価収益率は、金利低下と株価が急上昇するグロース株に対する投資家の旺盛な需要で押し上げられてきた。これらの企業の多くは長期的な潜在力を秘めているが、足元ではほとんどキャッシュフローを創出していない。結果として長期的な景気低迷懸念と相まって、グロース株とバリュー株の大幅なバリュエーションギャップをさらに拡大させる役割を果たした(以前の記事『What’s Behind the Value-Growth Performance Gap?』(英語)ご参照)。

 

金利上昇で潮流が変化

こうしたトレンドは反転の機が熟している。2019年以降、グロース株のバリュエーションは米国10年国債の実質利回りと密接に連動してきた。実質利回りが低下し、新型コロナウイルスのパンデミック期間にはマイナスに転じたことから、グロース株のバリュエーションはそれと足並みをそろえて上昇した。次ページの図表2では、金利が低下するのに伴い、グロース株の予想株価収益率が上昇した(黄色線。図表では下にいくほど数値が大きくなる)ことが示されている。同じ期間に、世界のバリュー株のバリュエーションは比較的安定した動きを示した(図表2)。

 
グロース株の株価収益率はここ数年、米国10年国債実質利回りと密接に連動.png
 

その結果、金利上昇は割高なグロース株のバリュエーションに極端に大きな影響を与えるとアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)では考える。こうした逆転現象は2022年初頭で既に始まっている。それとは対照的に、ABのリサーチによると、バリュー株の株価収益率は圧縮される度合いが小幅にとどまりそうだ。例えば、実質利回りが0.5%(2021年末の-1.0%から)に上昇した場合、グロース株の株価収益率が34%押し下げられるとみられるのに対し、バリューの株価収益率は10%低下する程度で済むと予想される(図表3)。

 
実質利回りが上昇しても、バリュー株の株価収益率は安定性が高い見込み.png
 

もちろん、グロース株の中には30%以上の利益成長を実現し、株価収益率が30%低下してもそれを補うことができる銘柄もあるだろう。だが、大半はそうではない。一方、バリュー株にとっては、このハードルはかなり低くなる。多くのバリュー銘柄は10%の株価収益率低下を相殺できるほど利益を拡大し、アウトパフォームするとABでは予想している。

 

銘柄の厳選や分散投資が重要に

投資先を厳選することも重要である。バリュー株が大幅な回復を遂げた場合、金融やエネルギーなどバリュー株のユニバースを構成する大規模なセクターに投資するだけでは十分とは言えない。また活況に沸く一部のセクターに投資を集中させることは、不必要にリスクの高い戦略である。今では、幅広いセクターでバリュー株への投資機会を見つけ出すことができる。マクロ経済の不透明感が強く、市場のボラティリティが高い環境においては、エクスポージャーを分散させることが理にかなっている。

 

どのセクターにおいても、投資家は堅実で持続可能なキャッシュフローを持つバリュー株を探し出さなくてはならない。インフレの波が長らく人気の圏外に置かれてきた企業の株価を押し上げる中で、強力でありながら誤解されているビジネスと堅固なバランスシートを持つ魅力的なバリュー銘柄は、高いパフォーマンスを示す可能性が最も高い。高インフレと金利上昇を懸念する投資家にとって、バリュー株へのエクスポージャーを新たに構築または積み増すことは、現在の環境下で恩恵を受けそうな銘柄にアクセスする手段となり得る。また、バリュー株は過去の水準から見ると依然としてかなり割安であるため、回復の可能性を捉えるのに遅すぎるということはないだろう。

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