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中国が直面する3つの課題

                                                                                                                                                                     

イアン・チェン
アライアンス・バーンスタイン・香港・リミテッド
社債リサーチ・アナリスト
 
 
フワ・チェン
アライアンス・バーンスタイン・香港・リミテッド
社債リサーチ・アナリスト
 
 
ブラッド・ギブソン
アライアンス・バーンスタイン・香港・リミテッド
アジア太平洋債券 共同ヘッド
 
 
ジェンナン・リ
アライアンス・バーンスタイン・香港・リミテッド
中国担当シニア・エコノミスト
 
 
ジェニー・ゼン
アライアンス・バーンスタイン・香港・リミテッド
アジア太平洋債券 共同ヘッド
 
 
 
 

2022年4月19日

 
 
2022年3月のアジア市場はボラティリティが高く、信用スプレッドが拡大し、リターンはマイナスとなった。米証券取引委員会(SEC)が中国企業の米国預託証券(ADR)の一部について上場を取り消す可能性があることも(ウォール・ストリート・ジャーナルの記事「Chinese Stocks Plunge After SEC Stokes Delisting Concerns」(英語)ご参照)、株式市場の動揺を招いた。しかし、最近の市場のボラティリティは、中国を取り巻く3つの大きな懸念を反映している。それらは、ウクライナ侵攻で新たな注目を集めている中国とロシアの関係、中国の不動産セクターに影響を及ぼす特異な動き、中国経済をリスクにさらしている新型コロナウイルス感染者の急増である。本稿では、これら3つの懸念材料について取り上げてみたい。
 

中国とロシアの関係

ロシアのウクライナ侵攻により、中国とロシアの密接な関係に注目が集まっている。欧州連合(EU)と米国は、中国が紛争緩和に大きな役割を果たすことを期待している。その一方で、西側諸国による対ロシア制裁の強化やコモディティ輸出の禁止を受け、中国がロシアからの原油輸入を増やし、ロシアの経済的痛みを和らげようとするのではないかとの憶測も生まれている。
 
アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)の分析では基本シナリオとして、中国は危機の期間を通じて現状の姿勢を変えず、ロシアと西側双方との貿易及び外交関係を維持すると予想している。中国は、どちらかに明確に傾くような行動を取ろうとはしない見通しで、そうする強い動機もなさそうだ。つまり、中国はロシアが欧米の制裁から逃れるのを手助けすることはないだろうが、ロシアを非難したり、ロシアとの貿易を縮小したりすることもないだろう。
 
原油に関しては、中国はすでにロシアが輸出する原油の約30%を購入している(以前の記事『ロシア侵攻によるエネルギー・ショックが迫る金融政策の見直し』ご参照)。その結果、中国にとって、ロシアはサウジアラビアに次ぐ第2位の原油供給国となっており、原油輸入の約16%を占めている。中国は他国からの原油輸入を削減し、西側による制裁で行き場を失ったロシア産原油の輸入をさらに拡大するのだろうか?中国がそうした行動を取るとは思えない。そうすれば、西側から中国が意図的に対ロ制裁の効果を弱めているとみなされかねないため、短期的に輸入を著しく拡大することは考えにくい。しかも、サウジアラビアは中国と良好な関係にあり、最近も中国への原油供給に関する協力関係を強化した。
 
こうした理由から、中国がロシア産原油の輸入を著しく拡大し、西側諸国に輸出されるはずだったロシア産原油を完全に引き受けようとする可能性はごくわずかしかないと思われる。しかし、短期的にテクニカルな摩擦が生じる可能性はあるものの、中国はロシアとの緊密な協力関係を維持し、ここ数年と同様に、着実なペースでロシア産原油の輸入比率を高めていくことになるだろう。
 

中国の不動産市場の動揺

ここ数カ月、中国の不動産セクターに対する圧力が高まっており、不動産デベロッパーの株式と債券は今、市場で激しく売り込まれている。債券市場は現在、不動産デベロッパーのデフォルト確率が50%以上あることを織り込んでおり、各社のファンダメンタルズがそれぞれ異なっているにもかかわらず、多くの債券が無差別的に売りを浴びている。
 
しかし、投資家が留意すべき点は、住宅セクターは中国にとって構造的に重要であり(以前の記事『中国株式会社 ~中国クレジット市場のリスクを理解する~』ご参照)、中国経済に幅広く深刻な悪影響を及ぼすリスクを考えれば、このセクターが崩壊するのを当局が黙って見ていることはないとみられることである。
 
中国は長年にわたり、不動産セクターを経済成長のけん引役として利用し、この資産クラスをひたすら後押しして、それを軸に経済を成長させてきた。しかし最近になって、中国政府は成長を唯一の目標とする政策から、成長の安定、金融の安定、環境など複数の目的に幅広い政策パラダイムをシフトさせた(以前の記事『中国の成長見通しの全容』ご参照)。この新たなパラダイムにより、政府は経済成長けん引の手段として住宅セクターを扱う姿勢を後退させている。
 
むしろ、政策当局者は極めて地元に根ざした政策アプローチを取り入れ、モラルハザードや過剰なリスクテイクを効果的に抑制するとともに、安定を優先して不動産セクターの減速を容認している。別の言い方をすれば、中央政府は一部の不動産デベロッパーの破綻は容認しても、セクター全体の崩壊は食い止めようとする姿勢を示している。
 
中国政府は経済全体にストレスが広がる恐れがあることを認識し、住宅販売を支援するため優遇策を講じている。これまでのところ、住宅ローン金利の引き下げ、頭金比率の引き下げ、購入資格に関する制限緩和といった支援策が地域レベルで導入されている。これらの措置により、不動産セクターが中国全体の成長に及ぼす悪影響が緩和されるとみられる。
 
中国のオフショア不動産債券市場は、個別のニュースや不安定な世界のリスク志向に応じて落ち着かない動きが続くとみられるが、中国全体で政策支援が加速していることから(フィナンシャル・タイムズ  の記事「China makes rare intervention to bolster confidence after market rout」(英語)ご参照)、年内には徐々に改善に向かうとABでは考える。そのため、投資家は不動産販売に安定の兆しが現れるのを待ちながら、選別的な投資スタンスを維持する必要がある。
 

新型コロナウイルス感染者が増加

中国では2022年3月に新型コロナウイルス感染者が急増し、今後も増加傾向が続く可能性がある。深圳、東莞、長春など一部の主要都市は事実上、少なくとも1週間にわたるロックダウンとなり、上海では行動規制が大幅に強化された。それは経済活動にどんな影響を及ぼすのだろうか?
 
その問いに答えるには、まず、今回の流行がこれまでとどう違うのか調べる必要がある。第一に、今回の流行では無症状の感染者がかなり増えているが、これはオミクロン株による症状が軽いことと、ワクチン接種によって重症化が抑えられていることが原因だと思われる。第二に、ウイルスが外部から持ち込まれた割合が比較的高く、特に深圳と上海ではその傾向が顕著に見られる。第三に、感染者が出ている省が増えているため、流行の抑制が一段と困難になっている。
 
中国がゼロ・コロナ政策を緩和するのではないかという憶測があるが、ABはすぐにそうなるとは考えていない。実際、中国の保健当局は最近、流行が深刻な地域に対し、厳格な措置を講じて流行を迅速に抑制するよう促した。国民の大半に効果的なワクチン接種(主に3回の接種を通じて)を行うことが難しいことも、ゼロ・コロナ政策を緩和する上でさらなる制約となっている。
 
ABは感染の広がりが中国経済に与える影響を探るため、交通渋滞、地下鉄の利用者数、1日の石炭消費量についても注目している。交通渋滞と地下鉄利用者数は、新型コロナウイルスに伴う行動規制だけでなく、個人のリスク回避姿勢による影響を受けるもので、サービスや消費の動きを探る材料となる。一方、石炭消費量は、工業活動の状況を知るデータとなる。この3つの指標はいずれも過去の新型コロナウイルス流行時に著しく低下し、現在もマイナスの影響を受けている。中国の購買担当者景気指数(PMI)も1月と2月は経済活動が比較的堅調に推移たことを示したが、3月は悪化する可能性があることを示唆している。
 
結論としては、新型コロナウイルスは2022年の成長見通しにとってリスク要因となっている。ABは、現在の流行が3月及び1-3期の経済活動を圧迫すると予想している。その後にどんな展開をたどるかは、中国政府がどの程度迅速にコロナ感染を封じ込め、成長への打撃に対処するためどれほど大規模な追加支援策を講じるかにかかっている。今のところ、ABは2022年の中国国内総生産(GDP)成長率について、5.3%になるとの見通しを維持している(以前の記事『2022年中国見通し:寅年の中国経済』ご参照)。ABの分析では、成長率が5%以下に落ち込むのを中国政府が容認する可能性は低い。彼らは依然として5.5%前後の成長目標を掲げており、それを実現するための政策ツールも数多く持っている。しかし、新型コロナウイルス感染に関する不透明感を踏まえ、引き続き状況を注視していきたい。
 
 
 
 
 
 
 

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。オリジナルの英語版はこちら。

 

 

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