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人民元の短期見通し: 当面は安定的に推移

                                                                                                                                                                     

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ジェンナン・リ
アライアンス・バーンスタイン・香港・リミテッド
中国担当シニア・エコノミスト
 
 
 
  
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アライアンス・バーンスタイン・香港・リミテッド
アジア太平洋債券 共同ヘッド
 

2022年5月2日

 
 
中国の通貨である人民元は、過去2年間にわたり人民元相場をけん引してきた要因の多くが後退したにもかかわらず、堅調さを維持している。投資家が人民元の短期見通しを理解するためには、足元の人民元相場を動かしている要因を詳細に分析する必要がある。
 
中国が他国に先駆けて新型コロナウイルス感染症の第1波から抜けだしたことや、相対的な成長率の高さと相対的な高金利及び輸出主導の景気回復を背景に、人民元需要は拡大してきた。しかし、人民元高を支えていたこれらの柱が崩れた今、足元の人民元の強さは投資家を困惑させている。
 
米国国債利回りが上昇し(買い手にとっての魅力が高まり)、中国の債券利回りが低下したことで、米国10年国債と同年限の中国国債の利回り格差が縮小したにもかかわらず、人民元は堅調さを保っている。
 
例えば米国と中国の10年債の「利回り格差」は、2020年11月につけた2.5%という高水準から、足元ではゼロ近辺まで縮小している。
 
これによって「キャリー」、つまり中国債券を保有することによって得られる、他の市場の債券を上回る利回りが消滅したことから、人民元が対米ドルで下落するとの見方が強まった。中国債券に対する海外投資家からの需要が減少すれば、人民元を下支えする力は弱まるはずである。しかし実際には、人民元は米ドルに対して上昇し、1米ドル=6.6元から同6.35元まで強含んだ(図表1)。
 
 
米国債券利回りの上昇局面でも人民元は高く評価されている.png
 
 
同じく不可解なのが、人民元は歴史的に米ドルの貿易加重指数と比較的強い相関関係にあったにもかかわらず、このところ同指数とのかい離が急激に拡大しているという事実だ。また過去には人民元の上昇または下落を緩和するために介入を行っていた中国人民銀行(PBOC)は、今回、強力な措置を一切講じていない。
 
人民元の短期見通しを理解するには、これらの謎を解くことがカギになるとアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)では考える。
 

金利差の影響は限定的

米中の債券市場の利回り格差で測定した金利差が、米ドル/人民元レートにある程度の影響を及ぼすと考えるのは理に適っている。
 
しかし米中の利回り格差と米ドル/人民元相場との関係は、歴史的に他の市場ほど強くないことが統計から分かっている。国民1人当たり所得が同程度の他の国々と比べ、中国市場が未だに海外投資家に開放されていないことが一因である。
 
同様に、中国債券市場に対する海外からの資金流入と利回り格差の間にも明確な関連性はない。2021年の4月から同年末までは、利回り格差の縮小が示すように米国の債券利回りが中国と比較して相対的に上昇した局面でさえ、中国債券への資金流入が拡大基調をたどった(図表2)。
 
 
債券への資金流入を左右する要因は利回りだけではない.png
 
 
この期間、利回り格差とは無関係な要因により資金流入があったことは明白である。具体的には、人民元建て資産へのアロケーションを求める外国人投資家からの構造的需要や、中国国債が2021年11月にFTSE世界国債インデックスに採用されたことに伴う中国国債への需要が挙げられるだろう。
 
2022年2月以降は海外からの資金流入が大幅に減少している。利回り格差はその原因の1つかもしれないが、中国国債の純供給額の少なさや、ロシア・ウクライナ危機を背景としたグローバル市場の混乱も影響した可能性が高い。
 

実勢相場が米ドル/人民元の相関を崩す

現在、中国が米ドル/人民元相場の日々の「中心レート」を決定しているメカニズムには2つの要素がある。(スポット終値と前日のフィクシング・レートを比較することで測定可能な)実勢相場と、総合米ドル指数または貿易加重米ドル指数である。米ドル/人民元のスポット・レートは、フィクシング・レートの上下2%の範囲内で変動することが可能である。
 
歴史的に、米ドル/人民元相場の仲値と米ドル指数は密接な相関関係にある。しかし足元では、両者の動きはかい離している(図表3)。
 
 
人民元と米ドルの「デカップリング」.png
 
 
このかい離は、おおむね実勢相場によって引き起こされている。ここ数カ月間、米ドル/人民元の終値が一貫して前日のフィクシング・レートを上回っていたことがそれを反映している。
 
その背景にある大きな要因としては、大幅な貿易黒字が挙げられる。2021年第4四半期の貿易黒字は月平均840億米ドルとなり、12月には月940億米ドルという記録的な水準に達した。季節調整後ベースで見た貿易収支は、2022年に入ってからも大幅な黒字を保っている。
 
その影響は、経常収支、純直接投資及び純証券投資を含む広義の基礎的収支(BBOP)全体に及んでいる。中国の債券・株式市場が海外投資家に開放されたことで、証券投資による資金流入が拡大したものの、経常収支と直接投資は依然としてそれ以上に重要である。財の輸出が大幅に拡大し、サービス貿易収支の赤字額が縮小したことを受け、中国の経常黒字は過去2年間で大幅に増加した(図表4)。
 
 
国際収支の大幅な拡大が人民元を押し上げた.png
 
つまり、人民元を押し上げた大きな要因はBBOPの大幅な拡大ということだ。
 

PBOCは柔軟性を選好

PBOCが介入を行わない方針であることは、足元はかなり明確にされている。PBOCが(例えば輸出市場における人民元の競争力を守るために)市場介入的な措置を講じたのは数年前のことであり、再び介入を行う計画はないと明確に否定している。
 
PBOCは近年、資本の流れがより不安定化したことへの対策として、また金融政策の独立性を高める目的で、人民元の柔軟性を大幅に拡大させてきた。そうした背景もあって、人民元はますます実勢相場に左右されやすくなってきている。
 
PBOCは米ドル/人民元相場を注視してはいる。だがPBOCは、相場の方向性を変えさせたり、一定の為替レート水準を死守したりするよりも、むしろ景気循環要因と投機的要因が市場で積み重なる(これは、相場の上昇または下落スピードが速すぎる場合に起こりうる)ことを懸念している。
 
外貨準備高を通じた直接介入は大幅に減少しており、人民元の行きすぎた動きを抑制するための政策手段として、PBOCがマクロプルデンシャル政策のような間接的な手段を選好していることは重要な点である。
 

すべてを考慮すると、人民元は安定的に推移する可能性が高い

こうした中、人民元の短期見通しはどうだろうか。
 
上述の要因はいずれもある程度の影響を及ぼしているが、ABの調査によれば、最も重要な要因はBBOPである。2022年は経常黒字が縮小する可能性が高いとは言え、引き続き大幅な黒字となることが予想される。外国直接投資(FDI)による資金流入は、2018年-2019年の米中貿易摩擦の際に減速したにもかかわらず、2015年以降、増加基調をたどっており、2022年に入ってからのFDIデータと産業界に対する調査は、FDIが今後も安定的に推移することを示唆している。
 
債券への資金流入は、地政学的な危機や金利差の縮小によって減少圧力にさらされる可能性があるものの、インデックスへの採用による影響や、諸外国の外貨準備高における中国国債へのアロケーションの拡大が資金流入を下支えする可能性がある。株式への資金流入に関しては、マクロ政策の不透明感を理由に株式市場が売られたことや、3月前半に見られたノースバウンドの株式投資からの大規模な資金流出を踏まえ、中国政府は今や市場との対話や政策調整及び透明性の改善を目標としており、そのことが株式市場の追い風となる可能性がある。
 
これらの要因と、今後数四半期に予想される景気のファンダメンタルズの改善は、人民元にとってプラスとなるだろう。
 
利回り格差に関しては、米国10年国債利回りは今後数カ月間でさらに上昇する可能性があるものの、ABは中国の10年国債利回りも上昇すると予想しており、利回り格差が一段と縮小する余地は限定的と見ている。金利差が縮小すれば、人民元にある程度の下押し圧力がかかる可能性があるものの、そのことが相場の方向性を左右する可能性は低いと見ている。
 
これらすべての要因を踏まえ、ABは、人民元は短期的にはおおむねレンジ内の動きに留まり、米ドルに対して安定的に推移すると予想している。
 
 
 
 
 
 
 

 

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。オリジナルの英語版はこちら。

 

 

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