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インフレ率の上昇を債券投資はどうしのぐか

                                                                                                                                                                     

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エリック・ウィノグラド(写真)
アライアンス・バーンスタイン・エル・ピー
先進国マクロ分析-ディレクター
  

 

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ジャナキ・ラオ(写真)
アライアンス・バーンスタイン・エル・ピー
米国マルチセクター債券 ディレクター
 

 

マイケル・ロスボロー
アライアンス・バーンスタイン・エル・ピー
グローバル・マルチセクター債券 ポートフォリオ・マネジャー
 
 
 
 
 

2022年6月10日

 
 
【知っておきたいこと】
今日の投資家の最大の関心事は、高止まりするインフレ率と、いかに政策立案者がそれを抑制しようと行動するかだ。アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)は、政策立案者が金利を引き上げることで、サプライチェーンが混乱した環境下であっても、最終的には需要を十分に減速させる物価上昇圧力を抑えることができると考えている。しかし、このプロセスには時間がかかる。本稿では、個人消費の変化や住宅市場の冷え込みなど、インフレがたどるであろう今後の道筋とその影響を説明し、投資家がこの厳しい環境を生き抜き、成功するための5つの主要な投資指標を明らかにしたい。
 
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投資家と政策立案者の両者にとって、インフレは依然として頭の片隅にある。物価は過去数十年もなかったペースで上昇を続けており、グローバルな経済活動がより広範に再開されれば物価上昇圧力が緩和されるだろうとの期待を裏切っている。むしろ、世界経済の供給サイドでは中国やウクライナの問題が最悪のタイミングでの障害をもたらすなどして、物価を上昇はいっそう強まる有様だ。
 
こうした混乱は予想困難であり、目先のインフレ率を予想することは非常に難しい。中国のロックダウンがいつ終了し、世界のサプライチェーンが回復するかはわからない。また、ウクライナ戦争がいつ終結し、世界の商品市場のひっ迫が緩和されるかもわからない。
 
しかし、不確実性があるにもかかわらず、ABは価格がやがて落ち着くという確信を深めている。それは、世界経済の供給サイドが不透明な一方で、需要サイドの動向がより鮮明になりつつあるからだ。
 

金融政策が需要に影響を与える

価格は、需要と供給の相互作用を反映している。需要が供給を上回れば、物価は上昇するため、経済活動の水準を調整しなければならない。しかし、中国のロックダウンや戦争による商品不足のような供給側の制約は金融政策の範囲外であり、中央銀行が金利を変更してもこれらの問題を解決することはできない。
 
中央銀行ができることは、供給が制限された環境下でも物価上昇圧力が弱まるように需要を減速させることである。つまり、金融引き締めで、経済の供給サイドの生産余力と同程度まで成長を減速させることである。
 
足元は多くの中央銀行がこの調節に注力している。米国連邦準備制度理事会(FRB)は2022年3月以降0.75%の利上げを行い、2022年後半にはさらに1.5~2.0%の利上げを追加する可能性がある。カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの中央銀行も利上げを実施し、欧州中央銀行も今後数カ月のうちに利上げを実施する構えであるようだ。日本銀行と中国人民銀行だけが、自国の特異な状況により利上げの可能性は低い。それでも、グローバルに見れば金利は引き上げに向けた軌道にあることは明らかである。
 
しかし、金融政策にはタイムラグがある。一旦、金利が上昇しても、その効果が経済に十分に浸透するまで時間がかかる。つまり政策金利の引き上げが直ちに需要の減少、成長の鈍化、インフレ圧力の緩和につながるとまでは期待できない。しかし、時間がたつにつれて、成長率は鈍化してインフレ率は徐々に低下すると予想される。
 

消費者はモノからサービスへと消費を回転させる

この成長鈍化の一環として、消費者はモノよりもサービスへ の支出を増やすと予想される。この消費動向の変化は、失われた時間を取り戻すためのものだ。パンデミックの最中においては、多くのサービスが利用できなかったため、家計は買い物をモノに振り向けざるを得なかった。ABでは、米国人が長期的なトレンドを超えて1兆米ドル以上の「過剰」な財を購入したと推定している。
 
このように消費動向が変化すると予想するにはもう1つ理由がある。それは、インフレ環境下での消費者の自己防衛だ。パンデミック後はモノに対する需要が非常に旺盛である一方、モノは特にサプライチェーンの混乱の影響を受けてきたため、モノの価格インフレ率は米国のピーク時には前年比で20%近くも急上昇した(図表1)。その結果、サービスが相対的に安価になり、魅力が増したため、消費者の行動もそれに合わせて変化していくと思われる。
 
物価上昇率はピーク時で20パーセント近く上昇.png
 
インフレ率は物価水準ではなく、物価の変化率を測定するため、物価が下落しなくてもインフレ率は低下する。つまり、物価の上昇ペースが鈍化するだけでも、インフレ率は低下することになる。すでに広義の財価格はピークを脱し、中古車価格など新型コロナウイルスの影響を特に受けたいくつかのカテゴリーでは価格下落が観測され始めた。
 
このことは、インフレにとってどのような意味を持つのだろうか。それは、時間の経過とともに財の価格とサービスの価格が収束し、パンデミック以前のように財のインフレ率がサービスのインフレ率を下回ることを意味すると考えている。
 
ただし、財のインフレ率が低下したとしても、それは全体のインフレ率に大きな変化をもたらすが、問題が完全に解決するわけではない。サービスのインフレ率も5%程度で推移している。インフレ率を中央銀行の政策目標水準に戻すには、サービス価格も下げなければならないのだ。しかし、そのプロセスは遅々として進まず、2022年末から2023年初めにかけてもインフレ率は5%程度にとどまり、FRBの目標である2%に戻るのは2024年になる可能性があるとABでは予想している。
 

住宅市場の冷え込みがもたらすもの

サービスのインフレ率の中で最も大きなカテゴリーは「帰属家賃」(注:持ち家での居住に家賃は発生しないが、居住者は住宅というサービスを享受しているので、そのサービスは家賃に相当する住宅コストであると仮定して一般の市場価格で評価したもの)であり、消費者物価指数が住宅コストをどのように捉えているかということである。そして、住宅は金融政策の影響を最も受けやすい経済分野である。
 
米国の住宅ローン金利は急騰し、10年以上ぶりに5%を超えた。過去数年間の住宅価格の上昇と相まって、購入可能な住宅価格は極めて低くなっている。当然のことながら、住宅ローンの申し込みは激減し、新築・中古住宅ともに販売額は減少に転じている(図表2)。
 
住宅ローン金利の上昇に伴い、住宅ローン申請件数と住宅販売件数が減少.png
 
このことは、住宅価格の上昇率が鈍化することを示唆しており、帰属家賃の低下を通じて、最終的にはサービスインフレも低下させるはずである。
 

インフレの進展を監視する

これまで述べたようなプロセスには時間がかかるため、当面はインフレ率がFRBの目標値に戻るとは考えていない。FRBが利上げを継続し、利上げが成長鈍化に有効であると仮定すれば、米国のコアインフレ率は2022年末に5%をやや上回り、2023年末には2%を小幅に上回る水準まで落ち着くとABは考えている。
 
この結果に対する進捗をモニターする最良の方法は、金融環境をより幅広く評価することである。株式価格の下落、信用スプレッドの拡大、国債利回りの上昇などは、金融政策姿勢が中央銀行から実体経済へ伝播することで需要を減速させていく。
 
金融環境を測る完璧な尺度は存在しないが、中央銀行が持続的なインフレに対して引き締め政策で対応することを明確にして以来、信頼できるすべての指標は金融環境の大幅な引き締めを示している(図表3)。このことは、景気が減速へ向かい、ひいてはインフレ率が低下するという確信につながる。
 
金融情勢はすでにタイト.png
 

景気後退は避けられないのか?

インフレ抑制のための需要鈍化は、その後に景気後退へと悪化していくだろうか? ABはそうはならないと考えている。中央銀行が過去の景気サイクルをしっかり分析していれば、景気減速と信用収縮の間を縫ってソフトランディングを実現することができるかもしれない。
 
まず、足元の信用状況が良好だ。家計と企業のバランスシートは非常に良好であり、労働市場も堅調である。金融環境が引き締め状態にあっても、その間に債務返済資金を調達しなければいけない企業は多くない。
 
中期的には、成長鈍化の証拠が出揃い始めた段階で、中央銀行がどの程度まで積極的に政策を引き締めているかが重要な問題である。インフレ率は景気サイクルに遅れる傾向があり、成長率が鈍化した後も高水準で推移する。この間、中央銀行が積極的な引き締めを続けていれば、景気後退のリスクは大きくなる。しかし、中央銀行が歴史に鑑みて景気サイクルの後半に利上げペースを落とし、既に行った利上げが需要抑制効果を発揮する時間を確保すれば、来るべき景気後退が深刻なものになることを避けられるだろう。
 
ABの予想では、2022年から2023年にかけて、すべての主要経済圏と世界の経済成長が減速しするが、その後は中央銀行の利上げペースが鈍化するにつれて景気もソフトランディングすると考えている。
 

投資家へのインプリケーション

現在のような高インフレへの対処は多くの不確実性をはらんでおり、このため、市場のボラティリティが高まって資産価格は調整した。そして投資家の分析対象も、コントロール不能なインフレへ懸念から景気後退への懸念へと焦点が変化している。こうした大きな流れは、投資家にとってどのような意味を持つのだろうか。ABは、大きく5つの解釈をしている。
 
1)インフレ抑制策を講じる。インフレは目標水準に戻るまでしばらく高止まりする可能性が高いため、インフレ対策はポートフォリオに有用な役割を果たす。さらに、グローバリゼーションなどのディスインフレ要因が後退すれば、将来の景気サイクルにおいてインフレ率が再び上昇する可能性が高くなる(以前のリサーチペーパー『Inflation—Joining the dots』(英語)ご参照)。このため、中央銀行は今後、市場の安定を図るために介入する可能性は低くなる。したがって、インフレ率の上昇は金融市場にとって無視できないリスクであり、明示的なインフレ対策は効果的なヘッジとなる。
 
2)パッシブではなくアクティブであること。アクティブ運用は、パッシブ運用よりもトレンドの変化に対応するのが得意であり、パッシブ運用は打撃を受ける可能性がある。例えば、第一次及び第二次世界大戦や1970年代のような過去の高インフレ期には、従来の60/40戦略(株式60%、債券40%のアロケーション)が失敗し、10年間の実質リターンがマイナスに落ち込んだ(図表4)。
 
インフレ率の急上昇。伝統的な株式/債券ポートフォリオへの挑戦.png
 
最近では、国債は投資家が期待する株式のボラティリティに対する安全資産効果を果たしておらず、米国債と株式のリターンの相関は通常逆相関であるが、これが正の相関に近い領域に入りつつある。今後、逆相関が優勢になると思われるが、インフレがある程度明確になり、中央銀行の足並みが揃うまでは、株式と国債の正の相関が続くかもしれない。このようなリスク環境の変化に機敏に対応できるのは、アクティブな投資家だけである。
 
3)相互作用を利用する。長期ブレークイーブンレートを観察すると、中央銀行がインフレ目標水準への回帰を目指す戦いで最終的に勝利することを市場は織り込んでいることがわかる。しかし、その道筋は不安定なものである可能性が高い。また、インフレ抑制のために、中央銀行は政策金利だけでなく、バランスシートの正常化も政策ツールと考えている。つまり、利回り、ボラティリティ、イールドカーブの形状の相互作用により、金利市場や証券化資産に投資機会が生まれる可能性がある。
 
4)高利回りの債券を検討する。米国国債の実質利回り(名目利回りから予想インフレ率を引いたもの)はほとんどがプラスに転じ、クレジット・スプレッドも過去の平均水準かそれ以上になっている。利回りの高さとスプレッドの有利さが投資家を引きつけ始めている。その理由は、インフレ率の上昇と不確実性を補うことができるまで債券市場の利回りが上昇したことにある(以前の記事『The One Metric All High-Yield Investors Should Know』(英語)ご参照)。このような環境では、「キャリー」、つまり、債券のクーポンを確保することが重要である。
 
5)視野を広げる。インフレ率は世界的に高まっているが、その度合いは地域や国によって異なる。例えば、北米、欧州、オーストラリアのインフレ率は、中国や日本よりもはるかに高い。また、ブラジル、メキシコ、中東欧諸国などの新興国は特にインフレの影響を受けており、G10諸国に先駆けてインフレ率を目標値に戻すために積極的な金融引き締めに着手している。
世界の債券投資家は、国や通貨を選択することで、過去20年間で最も幅広い機会を活用し、リターンの可能性を高めることができる。
 

インフレ率上昇局面では柔軟な対応力が必要

インフレ抑制には時間がかかり、その道のりは険しいかもしれない。その分、柔軟な考え方を持つ者が優位に立つことができる。債券投資家は、古い発想に固執しないことでこの新しい世界で生き残り、成功することができるだろう。
 
 
 

 

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。オリジナルの英語版はこちら。

 

 

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当資料は、2022年5月26日現在の情報を基にアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーが作成したものをアライアンス・バーンスタイン株式会社が翻訳した資料であり、いかなる場合も当資料に記載されている情報は、投資助言としてみなされません。当資料は信用できると判断した情報をもとに作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。当資料に掲載されている予測、見通し、見解のいずれも実現される保証はありません。また当資料の記載内容、データ等は作成時点のものであり、今後予告なしに変更することがあります。当資料で使用している指数等に係る著作権等の知的財産権、その他一切の権利は、当該指数等の開発元または公表元に帰属します。当資料中の個別の銘柄・企業については、あくまで説明のための例示であり、いかなる個別銘柄の売買等を推奨するものではありません。アライアンス・バーンスタイン及びABはアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーとその傘下の関連会社を含みます。アライアンス・バーンスタイン株式会社は、ABの日本拠点です。
 
 

 

 

 

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