2022年の株式市場では、3つの大きな悪材料が重なり、ボラティリティの嵐を巻き起こしている。では、株式投資はあきらめるべきなのだろうか。アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)では、いくつかの戦略を効果的に活用し、リスクを引き下げて投資を継続することができれば、市場の混乱を乗り切り、いずれ来る回復局面に備えることができると考える。
 
2年間にわたる新型コロナウイルスのパンデミックを乗り越え、2022年はいよいよ景気回復が加速するという期待は、年初早々に打ち砕かれた。急激なインフレが世界の経済成長を脅かし、ロシアによるウクライナ侵攻がそれに拍車をかけた。各国の中央銀行が金利を引き上げる中、一歩間違えれば世界経済がスタグフレーションに陥り、株価がさらに落ち込んでしまうとの懸念が高まっている。
 
先行きの不透明感が高まり、企業業績への懸念が広がる中、MSCI ワールド指数は2022年5月6日現在、年初来で12.0%下落しており(現地通貨ベース)、S&P 500指数も同期間に13.1%下落した。また、わずか4カ月間でS&P 500指数が1日で上下1%以上変動した日は44営業日に上り、激しい値動きが常態化している。
 
当面ボラティリティが高止まりすると予想される中、株式へのエクスポージャーを縮小したいという誘惑に駆られるのは当然かもしれない。しかし、そうしてしまうと、投資家は株式で大きなリターンを得る可能性を放棄することになりかねない。リスクが後退すれば、株式市場はどこかの時点で回復するであろうからだ。
 
足元の市場環境で株式のリスクを引き下げることは容易ではないが、規律あるアプローチを取り入れれば、実現することは可能だ。ABでは、ビジネスの質が高く、値動きのパターンが安定し、株価バリュエーションも魅力的な銘柄を厳選すれば、ボラティリティの影響を相対的に受けにくく、長期的な回復力を持つ株式ポートフォリオを構築できると考えている。
 

インフレには企業のクオリティで対抗

目下、インフレ懸念は投資家にとって最大の関心事である。下の図表は、クオリティ(Q)・安定性(S)・株価の割安度(P)という3つのファクター(QSP)で米国株式ユニバースを分析したものである。これによると、QSP上位20%銘柄は、過去の高インフレ期において、市場が上昇したか下落したかを問わず、市場全体に比べ優れたパフォーマンスを示している。例えば、1972年から1974年にかけてのオイルショックの際には、S&P 500指数が16%下落したのに対し、QSP上位銘柄の下げ幅は11%にとどまった。1977年から1980年にかけてのイラン革命後にインフレが高進した場面では、市場全体が横ばいで推移する中、QSP上位銘柄は11.3%上昇した。
 
 
高インフレ局面では、クオリティ・安定性・株価バリュエーションがリスク軽減に寄与.png
 
 
物価が急激に上昇すれば、企業はコストと売上の両面でさまざまな圧力に直面する。しかし、安定的に高水準のキャッシュフローを生み出している質の高い企業は、コストが膨らんでも利益率を守る方法を多く持っている。価格決定力は、いかなる市場においてもビジネスのクオリティを左右する重要な要素で、企業が需要に与える打撃を心配せずに価格を引き上げるために不可欠なものだ。
 
企業のクオリティを測る手段としては、総資産利益率(ROA)や投下資本利益率(ROIC)といった収益力に関する指標があり、将来の収益性を予想するための強力な手掛かりとなる。同様に、資本規律がしっかりしている企業は、金利上昇局面で高く評価される。ABが「クオリティ・コンパウンダー」と呼んでいる企業は、資本の使い方が上手く、環境・社会・ガバナンス(ESG)に関しても積極的に取り組んでいることにより、強力なビジネスモデルと持続性の高い収益力を兼ね備えている。ブランド、企業文化、研究開発力、特許といった無形資産も(以前記事『Intangible Assets Provide Tangible Defenses for Equities』(英語)ご参照)、特にストレスの多い時期には貴重な役割を持つ。こうした要素は、市場サイクルを通じて安定した成長ドライバーとなり、利益が複利ベースで拡大する支えとなる。
 

収益を予想しやすい銘柄が安定性をもたらす

地政学的な緊張からポートフォリオを守るのは容易なことではない。ウクライナでの戦争や選挙結果などのリスクは本質的に予想不可能で、市場に想定外の影響を与える可能性がある。地政学的な問題の結果予想に賭けを張ることは、賢明な投資戦略ではないだろう。しかし、不透明感の高い時期であっても、他の銘柄と比べ予想しやすい収益パターンを持つ銘柄がある。ABのリサーチでは、こうした企業は長期的に市場をアウトパフォームする傾向があることが示されており、リスク特性も優れているため、ポートフォリオに安定性をもたらし得る。
 
安定した企業にはさまざまな形態があり、典型的なディフェンシブ業種ではないことも多い。例えば、従来テクノロジー・セクターは必ずしもディフェンシブな分野とはみなされていなかった。しかし今日では、一部のテクノロジー企業はグローバルな情報インフラに不可欠なサービスを提供しており、その収益やパフォーマンスのパターンは、従来型のディフェンシブ銘柄である公益事業セクターと同じくらい安定している。テクノロジー分野の「イネーブラー」企業(他社のビジネスが成功する上で不可欠なインフラ的機能を提供する企業)は、現在のマクロ経済的、地政学的なストレスに対処する上で不可欠なハードウェア、ソフトウェア、サービス等を提供しており、パズルの重要な構成要素となっている。対照的に、「ハイパーグロース」テクノロジー銘柄はそうしたディフェンシブな特性を持っておらず、その多くは2022年に入って大幅に下落している。
 

バリュエーションを重視すればリスク軽減につながる

株価が割高すぎる銘柄は、安定銘柄としての役割を果たせない。そのため、ディフェンシブな株式ポートフォリオを構築する際には、株価バリュエーションが相対的に魅力的であることを確かめる必要がある。金利が上昇すれば「将来の収益」の「現在価値」が圧縮されるため、株価バリュエーションの高い銘柄、すなわち遠い将来の利益をより多く織り込んでいる銘柄にとっては逆風となる。したがって、株価バリュエーションに関する規律を堅持することが、低ボラティリティ株式ポートフォリオの成功確率を高めることにつながる。
 
このようにQSPの特性を重視することが、市場下落局面において市場全体よりも下げ幅の小さな株式ポートフォリオを構築するための鍵となる。下落が穏やかであれば、市場が回復した場面で早期に損失を回復しやすくなる。市場の転換点がいつ訪れるのか予想することは、現在のように先行きの不透明が高い時期には特に難しい。慎重に厳選したクオリティの高い安定した銘柄で構成するポートフォリオを堅持すれば、投資家は厳しい局面で持ちこたえ、将来的に環境が好転した場面でその恩恵を受けることができるようになるだろう。
 

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
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