米連邦準備制度理事会(FRB)は2022年6月15日に基準金利を75ベーシス・ポイント引き上げ、1.50%から 1.75%のレンジとし、今後さらに強力なインフレ抑制策を打ち出すことを示唆した。このタカ派の政策方針は最終的にインフレを抑制するだろうが、FRBが予想する以上に経済成長面での犠牲を強いると思われる。金融市場はしばらくの間、不安定な状態が続きくだろう。
 
パウエルFRB議長は、6月の利上げ幅を50ベーシス・ポイントとする可能性を示唆していたが、事前のメディア報道で75ベーシス・ポイントの利上げが指摘されており、市場は積極的な利上げを織り込んでいた。パウエル議長は、最近のインフレ数値とインフレ期待の高まりを、以前の示唆を上回る利上げ幅としたことの主因として挙げた。今後の利上げ幅は今後の経済状況次第としつつ、7月には50または75ベーシス・ポイントの利上げが適切となる可能性が高いとも指摘した。
 

FRBはインフレとの戦いに本気だ

FRBの行動と発言は、政策目標がインフレ抑制に的を絞っていることを示している。連邦公開市場委員会(FOMC)は、「ドットプロット」の中央値に基づいて、2022年中に合計で1.75%の利上げを行い、目標金利を3.25%から3.50%に引き上げる予想を示している。
 
これは、3月時点のドットプロットに基づく予想より150ベーシス・ポイント高い。委員会はまた、利上げの到達点の中央値を3.75-4.0%に引き上げ、これも3月の予想を100ベーシス・ポイント上回った。FRBは明らかにインフレの幅、大きさ、持続性に動揺しており、それに応じて金融政策を明白に引き締め姿勢とした。当然の帰結として需要を減速させていく。 
 
パウエル議長は、FRBの最優先事項はインフレの沈静であることを強調した。彼は会合後の記者会見では「インフレがあまりにも高すぎる」という議論からスタートし、FOMCでは本来はこの時期にはインフレが横ばいか低下方向に推移していることを想定していたと明らかにした。依然として衰えないインフレに鑑み、政策対応はより積極的にせざるを得ない。FRBが「説得力のある証拠」(インフレ率の低下を示す一連のデータ発表)を集めるまで、インフレとの戦いが最優先となりそうだ。インフレ沈静の兆しが確認された時点で、FRBは経済成長とインフレの両分野によりバランスの取れた焦点を当てる方向に軸足を移すと思われる。
 

インフレ期待が高い限りは、さらなる利上げを想定すべき

7月に50または75ベーシス・ポイントの引き上げを行えば、政策金利は金融政策の観点でほぼ中立的とされる水準まで上昇し、その後は経済環境に応じた対応が採りやすくなる。
 
パウエル議長は、インフレがまだ高い場合でも、中立金利に到達すれば、政策対応を強いられる緊急性は低くなることを示唆した。早ければ7月にも中立金利に到達する可能性があるため、この姿勢はややハト派的とも受け取られかねない。しかし、「ドットプロット」に見るFRB理事の空気や、インフレ沈静の確認には経済統計の裏付けを必要とすると明言していることから、この発言は一般論にすぎないと取るべきだろう。政策対応余地があろうとなかろうと、FRBは当分の間、利上げを継続する。
 
パウエル議長は、インフレ期待がFRBにとって重要な圧力となることを強調した。特にミシガン大学のインフレ期待指数と米連邦準備理事会自身の基調的なインフレ期待指数に言及し、6月の引き上げ幅が想定より大きくなった理由として述べた。パウエル議長は、インフレ期待が上昇に転じれば、さらなる引き締めの引き金になる可能性が高いことを明らかにした。
 

インフレとの戦いの反動は経済成長減速として跳ね返ってくる

より急で前倒しされた引き締めサイクルにより、経済成長はこれまで考えられていたよりも速く、より深く冷え込む可能性が高い。FRBの2022年と2023年の国内総生産(10-12月期の前期比ベース)の成長率予想の中央値は1.7%である。この数値は、中央銀行が推定する長期的な潜在成長率を0.1%下回っている。また、失業率は現在の3.6%から年末には3.7%、2023年には3.9%、2024年には4.1%に上昇する。
 
パウエル議長は、FRBがマクロ経済に描く予想の姿を「ソフトランディング」、すなわち成長率が潜在成長率をわずかに下回り、インフレが抑制され、労働市場が堅調に推移することであると説明した。同時に、この結果を達成することが難しくなっていることを認めている。FRBの政策手段ではサプライ・チェーンを含む経済の供給サイドの問題を解決することはできないため、ソフトランディングはますます外部環境に依存する状態だ。供給サイドの正常化がなく、インフレ率がすぐに低下しないのであれば、FRBは米国経済が弱体化しても引き締めを続けなければならなくなる。
 
経済成長はFRBが予想する以上に鈍化するリスクが高い。FRBが打ち出した引き締め路線と、FRBが安心できるほどのインフレ率までは当面は低下しないとの見方を合わせると、今後さらに引き締め政策が続くと思われる。最終的にインフレ率を抑えることは可能だろうが、その代償として、経済成長率が低下しやすく、その間の金融市場のボラティリティは高止まりしやすいだろう。
 

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
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